しとりとひとえの力は同質である。
『霊視』という幽霊や妖怪の存在を『観る事』に特化した『観察眼』の延長線に在るものです。ただ、二人の目は『見稽古』に近しく、大抵の技術は観てしまえば容易く自己流に最適化してしまう。
問題は目に負荷を与える事です。
私の目は『前世の記憶の保持』によって変質し、限定的な未来予測と未来予知を使える。
他にも人の体調など数値を視覚情報の様に取り込み、限度知らずに把握できるため、ドクトル・バタフライにお願いして、私の『前世の記憶の保持』は抑圧・制御を受けています。
「しとり、ひとえ、先ずは『観る』という事を一緒に学びましょう。二人とも私の手には何がありますか?」
そう言って書斎の床に座り、私と向かい合うように座っているしとりとひとえの姉妹に右手を軽く上げ、手に持っているものを見せる。
「ん!お筆!」
「ふで!」
「はい。正解です♪︎」
私の普段使っている筆を机に置き、しとりとひとえの机に一度も使っていない筆を其々置いて、墨も硯も渡すのはもう少し後になりますけど。
今は筆を持って貰います。
「二人とも筆先を見て下さい」
「ん!」
「あい!」
じーっと筆先を見つめる二人の筆は僅かに『火』『火』『火』と小さなモヂカラを灯す。折神達に渡すときに使っていた物はあくまで初心者向けの道具を更に簡易化し、モヂカラを餌に変えるだけの物でしたからね。
「見えますか?」
「みえる!」
「みた!」
「フフ、宜しいです。二人は天才です♪︎」
お母さんは子供の頃は無自覚に使ってスケッチブックを燃やし掛けた事もありますし。モヂカラを学ぶという事は相乗的に霊能力を高めることに繋がります。
「次は文字を書いていきましょう。お母さんの書く文字の順番、モヂカラの量を覚えて下さいね」
そう二人に見えるように話しながら、ゆっくりと和紙に『火』の文字を描き、三つの燭台の一つの蝋燭に火を灯す。しとりとひとえも『火』を描き、私の真似をするようにモヂカラを蝋燭に加える。
「ん?ん?」
「むう、なんで?」
不思議そうに筆を動かす二人のモヂカラは周囲に散り、火を起こす力は出ない。やっぱり「見稽古」を使えるにしてもモヂカラのように練習しなければ上達しない技術は見ただけでは覚えられないようですね。
しかし、本当に二人は賢いですね。
私は覚えるのに時間を少し費やしましたし、この歳になるまで隠し通していましたから、二人のように学び、覚えることが出来るのは、とてもいいことです。