しとりとひとえの修行は続いています。
二人とも蝋燭に『火』を与える事に悪戦苦闘しているけれど。モヂカラを制御するために意識を集中させ、霊気の流れは安定して身体を巡っている。
「オレにはモヂカラってのはねえからな」
「左之助さんはいるだけで心強いですよ?」
「そう言って貰えるのはうれしいが、こう疎外感を感じる気もする」
「疎外感ですか?」
お庭に並んで燭台に向かい、筆を振るう姉妹。端から見ると謎の光景ですが、二人の身の安全と突発的な暴走を防ぐために必要な技術を教えているのです。
ただ、三途の川に通じる「門」を一度とはいえ開いてしまったせいか。此方を覗こうとする視線を度々感じ、家中の隙間にもモヂカラの結界を張る羽目になり、本当に死にかけました。
二度と開きません。
それに、私達を覗き見しているのは骨のシタリでしょうし。私の顔や娘達、左之助さんの顔を覚えられてしまうと危険な日々を送ることになります。
「でけたー!!」
「ん!しとりもできた!」
燭台の上に立っていた蝋燭に橙色に揺らめく火を見つけ、クスリと笑ってしまう。やはり私の娘達は天才ですね!と高らかに宣言したくなりつつ、しとりとひとえの頭を優しく撫でて褒めてあげます。
「よく出来ましたね。すごいです♪︎」
「んへへぇ」
「ん!しとりはすごい!」
自信満々に笑うしとり。
恥ずかしそうに笑うひとえ。
二人ともすごく可愛くて大好きです♪︎
「父様も褒めて!」
「ほめてー!」
「お、おお、火を使えるなんてすげえな」
「フフ、かわいいですね」
三人のやり取りに笑ってしまいながらも燭台に近づいて、ふうっと息を吹き掛けて消します。火事の元になる可能性もありますから、ずっと蝋燭に火を点けている訳にもいきませんからね。
「しとり、ひとえ、一つ目の課題を完了したお祝いをしましょう。左之助さん、今夜は一緒に赤べこでご飯を食べたいんですけど。いいですか?」
「お妙も来ない来ないって文句を言ってたから頃合いもちょうど良いな」
そう言いながらしとりとひとえをお膝の上に乗せて、笑う左之助さんに私も頷き、のんびりとお祝いの時間まで仲良くお喋りをします。
「ん!けんちゃんとね」
「あのクソガキは本当にダメだぞ。しとり」
「むう、なんで?」
「男は狼だ」
「そうですね。特に左之助さんは」
「景、どういう意味だ?」
「フフ、どういう意味でしょうね」
「かーしゃま、ないしょ?」
えぇ、今はまだ内緒です。
でも、左之助さんはすぐに気付きますよ。