某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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侍と姫 序

ドクトル・バタフライの唐突な登場に困惑する私の傍に近づいてきたしとりとひとえを抱き締めつつ、左之助さんに膝枕をしてあげる。

 

しっかりとお膝の上に彼の頭を乗せた瞬間、しとりとひとえも眠りはじめてしまった。おそらくチャフによる神経操作の効果ですね。 

 

三人の近くにいた私を避ける当たり、やはりドクトル・バタフライの技術力はすごいです。ただ、いきなり眠らせるのは良くないです。

 

「グッドMorning。糸色君」

 

「おはようございます、ドクトル」

 

ぐっすりと眠っている三人を寝室に運ぶのを手伝って貰い、改めてドクトル・バタフライと坪内君の事を見る。真面目にドクトル・バタフライの隣に正座し、ペコリとまた頭を下げてお辞儀をする彼に苦笑する。

 

やっぱり、良い子ですね。

 

「私が来たということで分かっているかも知れないが。彼、坪内刈羽(つぼうち かりわ)君は転生者だ。しとり君や剣路君の一つ年上でもある」

 

「八歳です」

 

「……ドクトル、この年になるまで彼を紹介しなかった理由はなんでしょうか。忘れていた、というわけではないんですよね」

 

「それを伝えに来た。彼は少し特殊な生い立ちでね」

 

特殊な生い立ち?と首を傾げる私に坪内君は申し訳なさそうに「自分、坪内八郎の義理の息子なんです」と呟き、そこから坪内八郎を慕う女性が彼と再婚したから、彼の姓を名乗ることが許されているそうです。

 

「母は、わりとメルヘンチックな頭のお方なので極道の黒生家(くろふけ)を自警団と勘違いし、元侍頭のオヤジ殿を慕っているのです」

 

「それは、その、すごいですね」

 

黒生家って、極道でしたっけ?

 

「まあ、分かりやすく言えば妻の連れ子だね。しかし、困ったことが一つあるんだ」

 

「なんですか?」

 

「刈羽君の実父は土方歳三だ」

 

「……ちょ、ちょっと、待って下さい?なんでそうなるんですか?いえ、時期が合わないですよね?」

 

どういうことなの?とこめかみを押さえながら、坪内君を見ると申し訳なさそうに笑い、私に謝ろうとするのでそれを制止する。

 

あなたが謝ることではないです。

 

頭の中でピースを組み合わせ、熟考する。

 

ゆっくりと坪内君を見据えて、呟く。

 

「……人魚の肉を食べたんですね」

 

「正解です。自分の母は偶然貰った『人魚の肉』を食べても死なずに済みました。ただ、少々メルヘンなんで『自分は魔法使いになったんだ』と…」

 

「そして、あなたが生まれたのは八年前ということは二度目の人魚の肉を食べたのもその時期ですね」

 

「はい。八年前なんで明治11年、『るろうに剣心』開幕と『侍』の終幕の同時期に自分は生まれました。その時はもうビビりましたけど」

 

それは、確かに怖いですね。

 

私もそうだったら怖いです。

 

 

 




【概要用語解説】

本作の単語や転生者に関する事を解説します。

坪内刈羽(つぼうち かりわ)

旧姓「土方刈羽(ひじかた かりわ)」。
年齢は八歳(数え年の九歳)。身長134cm。
偶然にも「人魚の肉」を食べてしまった母親と「ゴールデンカムイ」および「るろうに剣心」に登場する土方歳三の息子として生誕した転生者。

自分の生い立ちの複雑さに頭を抱える反面、半死なずの肉体を重宝している。ゆっくりと成長するものの、いずれ成長は止まると理解しており、その時は何をしようかと日常的に考え込んでいる。


転生する際に選んだ「特典」は「幸せな家族」と「長生きしたい」。


一つ目の特典「幸せな家族」は老いることも死ぬことも無い母親と永劫の時を歩み、幸せになれる。しかし、それは一生を得る事の出来ぬ事を意味する。

二つ目の特典「長生きしたい」は死なずの母親と無類の強さを誇った父親の血を受け継ぎ、如何なる苦行にも耐え得る肉体を得ることだった。

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