「おおよそ内容は分かりましたけど。坪内君の事情をもう少し詳しく教えて貰えますか?」
「自分の私用ではあるのですが、何分子供の身体ですので何卒天地開闢を見通す心眼通の持ち主たる糸色景さんに自分の生き方を聞きたいのです」
いったい、どういう風に私が転生者の間で広まっているのか気になりますけど。
坪内君が物凄く畏まっていた理由は、そういうことですね。まだ八歳という小さな身体で、母親の仕事を手伝って、果てには義理の父親の流派を受け継ぎ、坪内君はとても健気で優しい子供なんですね。
でも、他人に人生を委ねるのはダメです。
「坪内君、貴方の歩む人生を決めるのは貴方です。なによりも貴方ぐらいの子供は、世界は自分を中心に回っている。そう思った方が楽しく生きていけます」
「……自分は、母のような不死身になるかも知れない。それでも楽しんだ方が良いのですか?」
「そうです。計画通りの人生なんてありません。善行苦行どちらも訪れるのが人生、他人に委ねてしまえばもう貴方の人生では無くなってしまいます」
「相変わらず奥の深い言葉を言うね」
私の言葉に頷いて手帳に何かを綴っているドクトル・バタフライはあとで聞くとして、坪内君は悩んで苦しそうにウンウンと唸っている。
やはり、まだ子供の彼には難しいでしょうか。
「……自分の道は自分で行きます。糸色景さんにご助言を頂けたのは有りがたく思う所存です」
「はい。頑張って下さいね」
「委細承知。感謝します」
そう言うと覚悟を決めた顔の坪内君はドクトル・バタフライを見ると核鉄を受け取り、静かに核鉄を握り締めた瞬間、出刃包丁めいた刀が飛び出す。
『BLEACH』の斬月や『NARUTO』の断刀・首斬り包丁にも見える武装錬金に驚きつつ、彼の闘争本能の強さに身体を強張らせる。
「自分の夢は強敵と戦うこと。十五を越えたら不破と陸奥に喧嘩を売ろうと思います」
「最高のステージをセッティングしよう」
「そ、それは早計なのでは?」
私は戸惑いながらも恐ろしい事を口走る坪内君を止めようとしたその時、くるりと彼の視線は此方に向き直って、ビクリと肩が跳ねる。
「もし勝ったらしとりさんを自分にください!」
「……母親ではなく本人に言いましょうね。けど、しとりはもう剣路君という許嫁(になるかも知れない幼なじみ)がいるから難しいわね」
そう告げると坪内君はガックリと項垂れてしまった。
しとりは本当に種族問わずモテていますね。お母さんとしては、とても不安になります。