「ん!母様、かっちゃん来てる!」
「今日も相談に来ました!」
「しとりに近づいぞ、お前」
「おめえも近けえよ」
「おー?」
トタトタと胴着姿のしとりの後ろを坪内君と剣路君が着いて歩き、更にその後ろをひとえを抱っこした左之助さんが着いて歩いているのが見えた。
何だかアヒルの移動みたいで可愛いですね。
そんなことを思っていると視線を感じて、縁側の方に視線を向けると薫さんと緋村剣心がひっそりと家の中を覗き込んでいる姿が見え、あまりの怖さにビクリと身体が強張って跳ねる。
「きっ」
思わず、叫びそうになる口を薫さんと緋村剣心に押さえられ、居間の畳に倒れ、目尻に涙を溜めながら耐えるように目を閉じる。
「け、景さん、叫ばないでね?!そんな艶めかしく潤まないでっ、なんだかいけない事をしている気がするからやめてっ!」
「薫殿、左之に聴こえるでござるよ」
「おう。オレの女を押し倒して何する気だったんだ?返答次第じゃ二重の極み百発で許してやる」
「お、おろぉ……」
「嬢ちゃんはデコピン百発な?」
「私も!?」
「(い、いつまで乗ってるの?くるしぃ…!)」
ずり、と足袋で畳を擦るように音を出して、ようやく解放して貰えたけれど。私は「ケホッ、ケホッ…!」と口許をハンカチーフで押さえながら咳き込んでしまう。
「景、ゆっくりで良い。大丈夫だ」
「ゴホッ!だ、だいじょ、ゲホッ…です」
「ご、ごめんなさい!」
「すまない。糸色殿ッ」
トントンと私を抱き締めて背中を擦りながら、乱れた呼吸を整えるために呼吸のリズムを作ってくれる左之助さんの着流しの背中を握り締めて、ゆっくり、ゆくりと、浅い呼吸を整える。
「けほっ、すみません。驚かせて」
「ううん、私達が押さえたからよね。ごめんなさい、景さんは身体が弱いのは分かっていたのに…」
「お前らも景に無体を働くなよ。次やったらマジで殴るからな」
「……ああ、すまないでござる」
私の咳き込む姿に何かを幻視する緋村剣心の瞳はほの暗いものに変わり、僅かに瘴気が漂っていたけれど。また霧散して見えなくなる。
まさか、外道堕ちを?
いえ、今のは僅かに妖怪の気配がしていました。緋村剣心の中に何かが取り憑いている?とイヤな予感が頭の中を過るものの、静かに呼吸を整えながら胸を押さえる。
「(もう、この苦しいのも慣れましたね。バレないように、ずっと隠れて咳き込んで、血を洗って、本当にもう終わってしまいたい……?)」
いま、ほんの一瞬だけ何かに引き寄せられましたね。今のも妖怪なのかしら?