明治十九年、横浜────。
私は新津覚之進こと比古清十郎の作った数々の陶芸品を展覧し、競売に賭けるという行為を物見遊山に行こうと提案してきたドクトル・バタフライを怪しみつつ、左之助さん、しとりとひとえ、緋村剣心、薫さんや剣路君、明神君に燕さん等々の大人数で横浜に来ています。
恵さんは九能君に掴まって一緒に来ることは出来ず、ものすごく残念がっていたけど。いつもの酔い止めを処方してくれました。
「うっ、えぷっ…」
「景さん、まだ乗物酔い治らないのね」
「ご、ごめんなさいね、ゔっ」
「ゆ、ゆっくり、動きますね?」
ゆっくりと私の背中を擦って気持ち悪さと吐き気を和らげようとしてくれる薫さんと燕さんに手を借り、日陰に座って汗ばむ首元をハンカチーフで拭う。
「ん!しとりの水筒あげる!」
「……ふふ、ありがとう、しとり…」
「ん!」
「先に行っててくれ。オレは景の体調が良くなるまで暫く此処に居るからよ。しとり、ちゃんとひとえの手ぇ握ってるんだぞ?ひとえも姉ちゃんの傍を離れるんじゃねえぞぉ?嬢ちゃん、頼むぜ」
「ん!」
「あい!」
「フフン、一児の母だもの。任せといて!」
ドンと胸を叩く薫さんに私と左之助さんはしとりとひとえの事を頼み、酒屋の店先に座らせて貰いながら、まだ夏場の燃えるような人達の熱気に身体が追い付けない現状に申し訳なく思う。
なにより折角の旅行と観光なのに私のせいで左之助さんの時間を潰してしまうのが申し訳ない。そう思いながら彼の肩に身体を預け、ひんやりとした冷たい、濡れた手拭いをおでこに宛がわれる。
「無理するなよ、景」
「……はい、ありがとうございます」
「おう。ところでよ、オッサンの言ってた新津覚之進ってのは何者だ。珍しくオレ達も誘うって事はかなりの厄介事と見たぜ」
「フフ、どうなんでしょうね…」
そう、今回の謎のお誘いは私ではなく左之助さんや緋村剣心、明神君にまでドクトル・バタフライは声をかけ、旅費まで負担しています。
絶対に怪しく「地獄の鍵」も核鉄も異様な熱さを訴えています。ただ、身を焼く熱ではなく、何かを伝えるために熱を発している感じでしょうか。
「逢瀬の最中に失礼する。糸色景殿」
突如、話しかけてきた声にビックリしながらも外していた眼鏡を掛け、左之助さんの睨み付ける先を見る。黒く長い髪を一房に束ね、大小一対の刀を携えた左之助さん並みに背丈の高い人が立っていました。
そう、確かに名前は───。
思い出しました、