土方歳三生存説を立証し、坪内君は実父の生存を喜ぶ反面、坪内八郎という義理の父親の事を考え、物凄く悩ましげに唸っていました。
まだ八歳なのに健気で応援したくなります。
そう思っていると商家の前を走り抜ける明神君を見かけ、どうしたのでしょうか?と首を傾げているとき、ふと視線を感じて前を見ると浪人笠を被り、顔の見えない男の人が「うしおととら」を手に取っていた。
「……お前が描いたのか?」
「はい、そうです」
「そうか。お前が糸色景というわけか」
その呟きに思わず、彼を見上げ、ようやく私は私の目の前に佇んでいる男の人が瑪瑙幸隆だと理解し、慌てて逃げようとしたところ、彼は黙って立ち読みを開始する。
「…………あの、読むなら座りますか?」
「そうか。助かる」
お座敷に腰掛け、一巻から黙々と読み耽る瑪瑙幸隆の眼差しは懐かしいものを見る目です。私よりも前に転生していた人はかなり多く居ますけど。
瑪瑙幸隆、彼もそうですね。
「他にもあるのか」
「幾つか描いていますよ」
「そうか。しかし、風景や服装は時代に合わせたな」
「そこは仕方なくです」
「そうか」
……この人は会話を盛り上げるのと繋げることが苦手なんですね。私もどちらかと言えばそちらですけど、まだ話そうとは頑張っています。
「アレは無いのか?」
「あれ?」
「双亡亭壊すべし」
「在りません。そもそもアレは描きません」
「
その言葉に肯定も否定もせず、視線を逸らしたその時、着物の中に仕込んでいた短刀を抜刀し、私の首を斬ろうとした瑪瑙幸隆の右腕にドンが噛みつき、唸り声を上げて地面に飛ぶ。
それと同時に金色の蝶が瑪瑙幸隆の身体をお店の外に押し出して、緩やかにドクトル・バタフライが私の目の前に舞い降りる。
「イタチ、いや、イヌか?」
「私は蝶だがね」
そう言うとドクトル・バタフライは私に振り返ると「もう少し危機感を持ちたまえ」と呆れ気味に怒り、ゆっくりと蝶の群れを纏う。
確かに、漫画を読んでいるからと親近感を抱いて、油断してしまったのは私のせいです。だけど、瑪瑙幸隆は本当に嬉しそうに漫画を読んでいたんです。
それだけは本当です。
「しかし、無防備なLadyを襲うなど
「何も。俺は俺のために此処にいるだけだ」