「しとり、どうしたんですか?」
「ん!けんちゃんの竹刀!」
竹刀の柄を逆手に握って掲げるしとりの言葉に私は首を傾げる。いつも竹刀を持っている彼が竹刀を忘れて帰るなどあり得るのでしょうか?
そう不思議に思いながら石段に揃えていた草履を履き、庭先に出た次の瞬間、私の真上で火花が散り、地面と縁側に苦内と手裏剣が突き刺さる。
「え?えう、え?」
「ん!にんじゃー!」
しとりのキラキラとした瞳に映る二つの人影。ちょうど正午の時間、お昼時を迎えた時刻、我が家の上を二つの忍び装束が駆け抜ける。
大太刀の片方を抜き、構える四乃森蒼紫。その目の前に立つのは壮年の厳格な威圧感を放つ深い青色の忍び装束を纏った男の人です。
一つは
もう一つは
その家紋には見覚えがある。
いえ、私の記憶にハッキリと残っている大事な思い出の一つであり、これから未来の子供達が知り合うかも知れない方々です。
「四乃森さんっ、そちらは『影の衆』という物的価値の高い物を奪取し、売り捌く忍び衆です!」
「忍びがこそ泥の真似事か」
「我等は依頼を受けているだけだ」
そう言うと頭巾を被っていた男の目は妖しく光り、目映い発光と共に姿を消した。影忍法の一種なのでしょうが、日中にあれほどの光を放つなんて驚きです。
「けんちゃんいた!」
「抜刀斎の息子は事前に守っておいた。が、おそらく影の衆の目的はお前の娘かお前自身だろう。近と増の二人を護衛に寄越しておく」
「あ、ありがとうございます」
「気にするな、お前が傷付けば操も悲しむ」
四乃森蒼紫は塀を乗り越え、消える。
多分、私があの光で目を瞑っているときも四乃森蒼紫は影の衆の忍びの動きを見ていたか。その微弱な足音を追って、そちらを追いかけているはずです。
「けんちゃん、起きないねえ?」
「そうですねえ」
よしよしと気を失っている剣路君の頭を優しく縁側に腰掛けて撫でているしとりの姿に微笑みを向けていると、ふと居間の方に座ってお菓子を食べていたひとえが不満そうにしとりに頭を差し出す。
「ん!ひーちゃんもいーこいーこ」
「んへへぇ」
フフ、二人ともすごく可愛いですね。
しかし、ダークシャドウの目的は一体なんだったんでしょうか。四乃森蒼紫は私か、あるいはしとりとひとえを狙っていると言っていましたけど。