「景、貰いもんだが要るか?」
「……なんですかそれ」
「竜魚って魚……いや、魚なのか?」
ジッとエラに縄を通して吊るした竜魚を見つめる左之助さんに苦笑を浮かべつつ、台所に置いている桶を取りだし、いそいそと玄関で困惑する左之助さんから竜魚を受け取って私も見つめる。
竜魚。諸説ありますけど、チョウザメだったりヘラチョウザメだったり、果てには鰐だったとも言われる謎の魚が竜魚なのですが、コレはチョウザメですね。
しかも魚卵持ち。
「(人生初のキャビアなのですが、当たりそう…)」
不破信二に毒味してもらいましょうか。
この前、ドクトル・バタフライが体内器官を掌握し、毒矢を受けると同時に解毒とかシバリングによる強制発汗を利用し、毒素を体外に放出していたと聴いています。
「左之助さん、食べますか?」
「食えるのか!?」
「貰ってきたのは左之助さんですよ?」
そう言いながら台所に向かい、割烹着に着替えて頭巾を被ってまな板の上に竜魚を置き、頭を切り落としてヒレと背鰭と尾を切り、内臓を冷水を流しながら丁寧に洗い、真っ黒な魚卵群を見る。
キャビアですね。
水を敷いた桶の中に入れ、優しくザルの上でお米を研ぐように優しく滑りを取り、その間に分厚いチョウザメを切り分ける。今更ながら淡水魚のチョウザメが、何故海にいたんでしょうね。
「お刺身、ムニエル、フライ」
細かい骨を摘出し、何を作ろうかと悩む。
お鍋、しゃぶしゃぶにしようかな。
徳利を用意してお酒を注ぎ、いそいそと熱燗の用意をする隣でお鍋をコンロの上に置き、酒瓶に詰め替えていた出汁を敷いて、軽く昆布を潜らせる。
お酒、酢、少し塩を足して味を整える。
「かーしゃま、なにしてるの?」
「ひとえ、これは御夕飯の準備ですよぉ」
「おさかなさん?」
「フフ、味見してみますか?」
「あい!」
キラキラとした目を向けるひとえを台の上に乗せてあげ、味付けを整えた出汁に潜らせたチョウザメのお刺身をひとえに食べさせてあげる。
「?ん!んっ!んーーーっ!!!」
パタパタと小さく手を動かしてビックリしているひとえの事を見つめつつ、とても可愛く美味しさに震える彼女はソーキュートです。
「ひとえだけずるいぞ」
「ん!しとりも!」
「あらあら」
いつの間にか集まっていたみんなに驚きつつ、みんなにも一口ずつ食べさせて あとは夕飯まで我慢するように伝えると凄く不満そうです。
美味しいご飯はみんなで食べましょうね。
それがなによりも幸せなことですから。