某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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雑駮する妖剣 急

妖刀「奪鬼」による薄皮斬り事件は多発化しているものの。一度斬っただけで簡単に捕まえることが出来る異常性を理解している人は少ない。

 

怪力自慢の人間が捕まえたと瓦版に載っていたけれど。その人も脇腹を斬られています。単なるなまくら刀ではなく、あの妖刀「奪鬼」に斬られている。

 

本来なら死んでいる箇所を斬り付けるだけで生命を断つ太刀筋に成り得ていない。むしろ問題は其処です。怪我人を診察した恵さん曰く「ごっそりと体力が抜け落ちた様な倦怠感を訴えている」そうです。

 

体力。

 

妖刀「奪鬼」を触媒に生命力を吸い上げ、何かを蘇らせる実験を行っている可能性を抱きつつ、私は瑪瑙幸隆の事を思い出す。

 

彼は血を利用して刀を呼び出していました。

 

もしも妖刀「奪鬼」はマーキングを行う楔だった場合、既に五十件を越える辻斬り事件の果てには生み出される刀は一体何なのかと、そう考えてしまう。

 

「(叢雲牙だったら、どうしよう)」

 

おそらく現代に移動している叢雲牙を管理しているとしても1900年代以降だと信じたい。でも、もうすぐ到達してしまいますし。

 

「蛮竜、もしものときはみんなを守ってね」

 

居間の端に鎮座する左之助さんの大鉾に話しかけると鳴動し、ひとえとしとりはビックリしたように勝手に鳴った蛮竜をベタベタと触り始める。

 

青白い電撃は出てこないんですね。

 

左之助さんみたいに光るのかと思っていたけど。

 

「ん!ん?ん゛ーーーーっ!!!」

 

しとりの手が柄に触れた瞬間、しとりの身体にピリッと軽めの電撃が纏わりつき、ぱちくりと目を見開いて可愛らしくビックリしています。

 

────けれど。ポフンと電光丸が弾けた。

 

「んっ!?……母様、こわれた!」

 

「ひーもさわる!」

 

ひとえも触ったけれど。

 

特に光ったりすることはなかったのですが、徐に浮遊した蛮竜はひとえを乗せて庭先を飛び始める。獣の槍に匹敵するかも知れない大鉾が子守りをしていますね。

 

意外と蛮竜の意志は子供好きなのでしょうか?

 

そう思いながら満足げな表情で帰ってきたひとえは「ばんちゃん、すごかった!」と笑う。

 

「フフ、良かったですねえ♪︎」

 

よしよしとひとえとしとりの頭を優しく撫でていると蛮竜の刀身を隠していた鞘袋が弾け、目映い光りと共に塀の外へと何かが飛んでいった。

 

……今のは、なんだったんでしょう?

 

「誰だテメェ!!」

 

「ん!父様のこえ!」

 

「とーしゃま!」

 

「待てゴラァ!!」

 

塀の向こうで何が起こっているのかは分かりませんけど。左之助さんが相手をボコボコに殴っている音だけは聴こえてきます。

 

 

 

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