お夕飯の買い物をしている私の周りを仰々しく歩く警官隊の威圧によって、みんなの視線を集めるという嬉しくもない程に目立っています。
家屋や店舗、行き交う人に紛れて私の事を見る視線は多いです。……なんで、こんな達人みたいに相手の位置を把握できるようになっているんでしょうね。
多分、この目の影響ですけど。
本当に悩ましく思います。
悪くは無いんです。悪くはない。
そう思いながら頭巾を被った人達が縄や棒を片手に現れ、警官隊と抗争を開始する。まるで、私を取り合っているような構図を作っている理由はふたつ。
ひとつは、新・維新に重要人物だと誤認させるためです。ちなみに発案者は山県卿で、私の知名度を利用して捕獲作戦を行っています。
ふたつは、警官隊の実地訓練です。
私は言わば囮役と餌役です。
本当はイヤですけど。
「糸色景だな、来て貰おう!」
「阿呆が。相手を見て物を言え」
素手による牙突は豪快に男の人の顔を撃ち抜き、白手袋に血と涎と歯が着いています。こわい、本当にこの人は手加減をしない人です。
あまりにも理不尽な強さです。
「糸色、あまり前に出るな」
「(じゃあ、囮にしないでくださいっ)」
心の中で少しだけ不満を言うと睨まれ、視線を逸らしてしまう。この人にはきっと人の心が読めているのかも知れません。
「相楽に伝えておけ。今夜仕掛ける」
「え?あ、はい」
私ももう相楽なんですけど。
一体、緋村剣心も斎藤一も私の事をそう呼んでくれるんでしょうか。その名字には確かに誇りはありますけど、今は相楽という幸せを抱いています。
そんな風に二つの名字を分けて言われるのは少しだけイヤな気持ちになる。
「先生!お荷物は我々が!」
「いえ、大丈夫ですよ?」
いきなり話しかけてきた人に驚きつつ、斎藤一を見るも私から離れた場所で煙草を吸っています。そんなに吸いたいなら副流煙も呑んで下さい。
「どうぞ」
「……貴方は、警官じゃないですね」
「はい?」
「東京の警官は私が酷い乗り物酔いを起こしやすい事を知っているんです。ですので、あなたは私の事をよく助けてくれる警官ではありません」
そう言うと短刀を抜こうとした男の人の頭が地面に叩き落とされ、緩やかに舞い降りた緋村剣心が斎藤一に私を利用して捕まえるのはやめるようにいってきます。
手が殴られた衝撃でまた跳ねていますね。
「糸色殿、危ないでござるよ」
それは常々思っていることですから、今さらそんなことを言われても悩ましく思ってしまいますよ。