左之助さん達は時雨滝魅と瑪瑙幸隆の率いる「新・維新」を打倒するために向かった。その中には明神君もいて、本当に総力戦を行うつもりなんだと改めて、私は今回の騒動の大きさを理解した。
もしものときを考慮して「新・維新」を倒すために向かっている関係者の家族は山県卿の計らいによって明治政府の所有する屋敷に避難しています。
ただ、その護衛に田母野もいます。
私の伝えた暗号は既に山県卿へと届いている筈ですが、どうして要人警護の役目を彼に与えているのでしょうか。不安そうな燕さんに大丈夫ですと伝えつつ、私もしとりとひとえを抱き締める。
ドンと親分、ボス達は個魔の方の影に潜り込み、しっかりと一緒にいます。ただ、やっぱり邪悪な考えを持つ田母野の近くには居たくない。
「山県陸軍卿、どうして実働部隊の実権を警察官の三島や藤田某に与えたのです!?私ならば即座に先行し、新・維新など打破できます!!」
まるで自分の勝利を疑っていない田母野の言葉の語気は強く、しとりは少しだけ嫌そうに彼の事を見つめ、小さくアクビを噛みしめるひとえの頭を撫でてあげる。
「では、田母野に聴こう。お前は三島兄弟と藤田を軽視しているようだが、彼らは北海道の実地訓練を終えた叩き上げだ。貴様とは格が違うのだ」
その言葉はあまりにも大きく部屋に響き、私の事を呼ぶ川路大警視に従って、薫さんと燕さん達を連れて別室に移動する。あれだけの要人警護の最中、私達を呼ぶ理由は何なのでしょう。
いえ、おそらく瑪瑙幸隆と時雨滝魅に関する情報を持っていると彼らは勘違いしているんですね。歪な関係性ではあるのでしょうが……。
「こんな形ですが、お久し振りです」
「十年ぶりか?久しぶりだな、糸色」
「……今は相楽です」
ソファに腰掛けるみんなとは離れ、私は川路大警視に連れ出した理由と用件を訊ねると八年前、私が武田観柳に差し出してしまった火器の設計図を横流しした相手を断罪している最中だと言われる。
そして、あの火器の設計図を来るべき世界進出に向けて利用したいという言葉を聴いてしまった。有り得ない。人を殺す武器を作るなんて絶対にイヤです。
「お断りします」
「やはり、そう答えるか。か弱い女人に無理を強いて申し訳ない。だが、その『お断りします』の一言こそが君の無実に必要だった」
「へ?」
「八年前と此度の事件は無関係だ。山県卿もその事実を確かめるために、態々貴女と田母野を近い場所に集めていたのだ」
成る程、そういうことだったんですね。