田母野の指示を受けていた強硬派によって「新・維新」の十数名は重傷を負ったものの、死亡者は出ること無かったそうです。
ただ、瑪瑙幸隆は依然として捜索中────。
闇夜に乗じる事の出来ない人斬り、彼の目的は本当に明治政府の打倒する事なのか分からないけれど。時雨滝魅は過去の後悔を緋村剣心と戦い、清算した。
だけど。田母野の私兵の放った銃弾を右肩、鎖骨と二の腕の骨を負傷し、時雨滝魅の剣客としての生き方は終わりを迎えた。
現在は重要参考人という名目上、山県卿の庇護下に入り、そのカリスマ性と求心力を活かす場を与える提案を受け、親友か国の板挟みになっている。
「(不自然な形式だと思うけど。山県卿の思惑は時雨滝魅を取り込み、そのカリスマ性を利用して不安分子の捜索、地盤を固める土台造りでしょうね)」
そう考えて、意識を切り替える。
いえ、切り替えないといけないんです。
「……不破さん、本当にやるんですか?」
「おう」
ドクトル・バタフライの作戦というには、あまりにもお粗末すぎる作戦を不破信二は決行する。「古寺にて瑪瑙幸隆を待つ」という瓦版を私名義で貼って貰い、本当に古寺の廊下に座り、私は瑪瑙幸隆を待っています。
「何でお前らは景を利用したがるんだ。阿呆が」
「あ、あはは…」
本当に私もそう思います。
信じてもらえるのは嬉しいですけど。その信頼に応える自信は未だに持てず、申し訳なく思いつつ、怖い場所に行かなくていいと安堵してしまっている。
しとりとひとえは薫さんにお願いして預かって貰っていますけど。左之助さんは頑なに私の傍を離れる事を拒否し、こうして私の隣に彼は座っています。
「来たか」
そう不破信二が呟くと血溜まりから瑪瑙幸隆は現れ、怒りと憎悪の眼差しを不破信二に向ける。彼を殺めたのは斎藤一だと聴いていますが、二人に因縁が?
グルグルと余計な事を考えてしまう。
「不破信二…!」
「おう。
……今、変な感じに聴こえましたね。
「以蔵を捕まえたクソ野郎が、ブッ殺す!!」
その言葉に思わず、私は目を見開く。
史実では同心によって死んだ岡田以蔵は、此方の世界だと瑪瑙幸隆に捕まり、同じ土佐の人達に拷問を受け、毒殺され掛け、首を斬られたというのですか?
それでは、あまりにもっ。
「景、前見てみろ」
「………血涙?」
不破信二も瑪瑙幸隆も血涙を流している。
いえ、確かにそうですよね。幕末の時代で二人は親友を亡くし、お互いに決定打を与えた訳じゃないけれど。間接的に親友の死に関わっている。