某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

952 / 1070
霞に消える 急

斎鬼鹿沼流は二刀流の流派。

 

無手の不破信二の踏み込みを鉄拵えの鞘で牽制し、抜き身の打刀を振るい、斬り付ける。逆に打刀を牽制に使い、鉄鞘で殴打を加えて打撃と斬撃による多段攻撃を叩き込み、不破信二を僅かに押している。

 

───けれど。あくまで押しているだけ(・・・・・・・・・・・)

 

決定的なダメージを与えているわけではなく、不破信二に斎鬼鹿沼流の所作を細かく教えてしまっている。だんだんと動きに冴えを取り戻しているのもそうです。

 

「景、解説してくれ」

 

「左之助さんまで…!?」

 

最愛の人に解説を求められる事に少しだけ、かなり、ものすごくショックを受けつつ、不破信二と瑪瑙幸隆二人の動きを見つめる。

 

「はあっ!!」

 

「ぬぇあっ!!」

 

横薙ぎに振るう刀の握りを拳打で破壊し、素早く腕と襟首を掴んで肩口に右腕を背負い、投げると同時に不破信二はローキックを繰り出す。

 

───が、頭を狙う蹴りを瑪瑙幸隆は受け止め、蹴り飛ばされ、古びた石塔に背中をぶつける。

 

「今のは圓明流の薙げと蹴りの混合技『雷』です。本来は腕を肩を利用してへし折り、首を蹴り砕く技なのですが、瑪瑙幸隆は先んじて飛びました」

 

「飛んで避けた訳か」

 

「いえ、彼は頭を蹴る足を防ぎ、さらに脇差しを抜いて不破さんの軸足を斬り付けています。夜間の人斬りではなく日中の剣客としては緋村さんに匹敵するかと」

 

そう、ありのまま見たことを伝える。

 

ただ、瑪瑙幸隆は転生者です。

 

時雨蒼燕流の技を武蔵野に教えていた事から察するに姿お兄様と同様に複数の流派を学び、体得している。問題は流派の数です。

 

私がそんなことを考え込んでいた刹那、凄まじい火花が走り、不破信二の胴着に引火したものの。彼は胴着を脱ぎ捨てて、真後ろに飛び退いた。

 

「不破の秘技『脱皮』です」

 

「いや、単なる早脱ぎだろ」

 

「正解だぜ、左之助!」

 

血涙を拭った不破信二は両手を下ろし、構えを変える。鼻呼吸を止めて口呼吸に切り替え、ゆっくりとリラックスしながら動きを変えている。

 

「俺は敗けられねえ…!」

 

瑪瑙幸隆に〝揺らぎ〟が、生まれる。

 

「見えなくなった?」

 

「いえ、円月流に記述を残す『陽炎』という威圧を静め、周囲と一体化したかのように見せる剣術です。ただ、脇差しで振るえる技は円月流にはありません」

 

わざと大きな声で告げると、私の意図を理解して。いえ、不破信二の性格を考えると指摘するより先にしている、彼は刀を蹴って瑪瑙幸隆に打刀を返す。

 

「お前の〝とっておき〟を受けてやる」

 

「……殺す。不破だけじゃない、お前もだ。ベラベラと人の技を言い当てやがって」

 

っ、やっぱり私も呼ばれますよね。

 

分かっていましたけど、怖くて身体が震える。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。