某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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君を斬り思ふ 序

先んじて仕掛けたのは瑪瑙幸隆でした。

 

斎鬼鹿沼流とは違う、一刀流の構えです。

 

「来い!」

 

「参る!」

 

二人の声は同時に響き渡ると刀を構えた瑪瑙幸隆の喉を突く刺突は不発に終わり、不破信二の左腕は大きく外側を通って鉤形に折り曲げ、十字を描くように瑪瑙幸隆の横面を殴り抜き、瑪瑙幸隆は吹き飛ばされた。

 

頬と耳から血を流す不破信二は血を手で受け止め、軽く振り払うと血反吐を吐き、のたうつ瑪瑙幸隆を見据える。まだ終わっていない。

 

「まだ、だぁ゛ッ!!」

 

地面に刀を突き立て立ち上がった瑪瑙幸隆は右手で柄を逆手に握り締め、右足で刀の切っ先を摘まみ、ギリギリと抑え込んでいる。

 

─────〝無明逆流れ〟

 

いえ、転生者の彼が知っているのは当然です。

 

しかし、この戦いは両者共に転生者。左之助さんと周囲に隠れて、二人の戦いを見守っている人達も二人の最後の攻防に意識を集中している。

 

「景、どっちが勝つ」

 

「半々です」

 

───普通の人間なら、と付け加えますけど。

 

一度黄泉還った程度では修羅たる不破信二に勝つことは絶対に不可能です。圓明流を極めた修羅。鬼も魔も人も一切合切無慈悲に無惨に惨たらしく踏破し、踏みつぶし、屍の山に君臨する。

 

それが、不破という名前の修羅です。

 

轟ッ…!と修羅と鬼が吼える。

 

無明逆流れ。パチンコやデコピンの様に力を溜めて一気に太刀を射出し、真上に向かって切り上げる超変則抜刀術とも言える奥義───。

 

その奥義を不破信二は踏み砕いた。

 

文字通り、瑪瑙幸隆が刀を振るう直前、足の裏に食い込む刃も気にせず、瑪瑙幸隆の足を蹴り潰し、顎先に拳を添えた瞬間、顎が陥没した。

 

圓明流のゼロ距離打撃技「虎砲」の炸裂に伴って瑪瑙幸隆の身体は霧散し、塵となって消える。凄惨な死合いの後は無く、在るのは咆哮を上げる修羅の姿だけ。

 

「オレの受けた技か」

 

その呟きに私は静かに頷いた。

 

「糸色、お前の予想は半々だったな」

 

「……はい」

 

「じゃあ、覚えとけ。不破四百年の歴史に敗北の二字は無い。これから先如何なる事があろうとな」

 

そう言って嗤う修羅に身体が震える。左之助さんが手を握って落ち着かせてくれなかったら、きっと私は恐ろしさのあまりに気を失っています。

 

今だって逃げられるなら逃げたいです。だけど、そんなことをしたって修羅から逃げることは不可能ですから、私は諦めました。

 

「左之助さん、すごく怖いです」

 

「景には何もさせねえよ。アイツを倒すのはオレだ。この前のガキにくれてやるつもりはねえ」

 

さ、左之助さん?

 

 

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