大力で足が速く、人を食うといわれる悪鬼。
毘沙門天の守護鬼神となる、速疾鬼やラークシャサ、可畏とも呼ばれ、鉾や斧、刀を構える。恐ろしき悪鬼と人を守る守護神の二面性を持つ。
不破信二と引き分けるという偉業を成し遂げた左之助さんにドクトル・バタフライもそれはもう大層驚き、傷だらけの二人を核鉄の失敗作や試作品の中に漬け込むドクトル・バタフライに私は戦慄する。
普通に考えれば自分を狙う組織に攻撃手段を送りつけ、試作品や失敗作の改善点を求めるのはおかしいです。いえ、だから未来からやって来る子供達は変な事を知っているんですね。
しかし、そうなると不安です。
「景、なんで信二と同じ場所なんだ」
「ドクトルですから」
「糸色、飯くれ」
「それは奥さまに頼んで下さい。私はお友達と不義理な関係を築くつもりはありませんし。なにより我が家は家族一同で左之助さんのお世話です」
ついでに話すと怖いから近寄りません。普通、人間は飛びませんし、岩石を焼き焦がして燃やす様な熱気を拳だけで防ぐなんて無理です。
いえ、実際にしていましたけど。
やっぱり怖くて不安です。
「ひゃんっ!?」
そう思っているとうなじに冷たいものが当たり、変な声を出してしまう。驚きながらも恐る恐る、後ろに振り返ると女学生風の着物と袴を身に付けた、ヴィクトリア・パワードが立っていた。
「ドクトルが呼んでいるよ」
「え、えぇ、すぐに行きます」
いったい、私は何を受けたのでしょうか。
少し不安に思いながらもパワードさんにお礼を伝えて、ドクトル・バタフライの待っているという薬品室のドアを開け、麻酔に用いる薬を調合するドクトル・バタフライがそこに立っていました。
「やあ、待っていたよ」
「……破廉恥な事は許しませんよっ」
「ハレンチ?私がかね」
困惑するドクトル・バタフライを無視し、私は怪しい事をするのはやめてほしいと伝える。ただでさえ左之助さんが大怪我をして不安なんです。
「変な事は許しませんよ!」
「君の言いたいことは分かった。が、ふたりの身体を調べる良きタイミングなのだ」
……確かに、比古清十郎に並んで人類最強かもしれない不破信二と左之助さんを同時に診察できるのは、こういう時だけかもしれません。
でも、危険な行為はダメです。
そう思ったことを伝えると、ドクトル・バタフライは困ったように唸ったかと思えば「君は本当に仕方の無いLadyだ」と笑い、怪しい薬は使われなかった。
年の数茸があったので、少し焦りました。
「(まあ、子供の左之助さんを見るのも悪くないんですけど。不破さんが子供になったら更に苛烈な修行を積み直し、強くなりそうなのでダメですね)」
私には止められませんし。