「ゔっ、ゔ…」
「……吐いたら蹴り出すぞ」
斎藤一の言葉にコクコクと頷きつつ、私は口許を押さえて馬車の中に乗っています。行き先は人目を避けた森の中に立つ茶屋。
不安と恐れを抱きながらも斎藤一と左之助さんを連れ立って、ここ数年の間に勢力を増やす天草翔伍と会って言葉を交わす。
とても不安です。
いえ、そもそも本当に私は必要なのでしょうか。
そう思いながら行者に扮している般若と癋見の二人と離れた位置に潜む御庭番衆、それらに追随するように包囲網を拡げる忍風館と迅雷義塾の忍び達を思う。
完璧に擬態しているんですけど。
私の目は不自然さを見抜いてしまい、余計に目を酷使してしまっている気がします。視力は元々悪いですから構わないんです。
構わないんですが、大人数すぎます。
「着いたぞ」
「ぷぇうっ…えぷっ…」
「ほら、此方だ。景」
私を抱き締める左之助さんに身体を預け、気持ち悪さと吐き気に何とか耐えて、水筒の水で口を濯がせてもらい、背中を擦る彼の手に安堵の吐息をこぼす。
「…す、すみません……」
「大丈夫だ。慣れてるからよ」
うぅ、こんなことに慣れないで下さい。
私のせいだと分かっているんですよ?でも、だからって慣れるのは違います。そんな自分勝手で身勝手は言い分を叫びそうになります。
「相楽、さっさとしろ」
「馬鹿野郎、身体の弱い景に無理させんなッ」
「普段無理させているのはお前だろう」
「あ?」
「体躯差を考えろ、と言う事だ」
その言葉に私は首を傾げながら、左之助さんに身体を支えて貰う。よく分からないですけど、身体の大きさで困ることはすくないですよ。
いえ、何かの隠語でしょうか?
しかし、何故みんなは顔を背けるのかしら。
「見えてきたな。あの茶屋だ」
そう言って斎藤一より向こう側に立つ二階建ての小さな茶屋。山道でもよく見る古典的な見た目のお店に近付くと左之助さんと斎藤一より背の高い男の人が、天草翔伍が佇んでいました。
「………………」
「えと、初めまして、相楽景です」
恐る恐る、名乗ると左之助さんは御満悦の表情を浮かべ、天草翔伍は黙ったまま私の事を見下ろしています。すると、ゆっくりと冊子が差し出された。
「ここに、書名が欲しい」
うしおととら
……貴方も愛読者だったんですね。
「ど、どうぞ」
「感謝する」
これで終わりで良いんですか?と斎藤一を見ると面倒臭いものを見るように天草翔伍を見据え、私にも「またお前の仕業か」と言いたげな視線を向けてきます。
絶対に私のせいじゃないです!