人里離れた茶屋のお座敷で向かい合う。
斎藤一はいつでも刀を抜き、攻撃できるように茶屋の柱に背中を預け、不意討ちも行えない場所を陣取り、左之助さんは私の隣に腰掛けています。
自分で話し合いの場所を設けたというのに、天草翔伍は静かにお茶を飲み、お団子を食べている。……みたらし団子、いつもしとりとひとえと個魔の方と一緒に食べているところと引けを取らない美味しさです。
「いい加減、用件を話せ」
「静かに食せ。いや、お前達を呼んだのは俺だったな。用件はお前にある」
そう言うと天草翔伍は口許に寄せていた湯呑みを机に置き、右手を差し出してきた。何十年と剣術を鍛えてきた侍の手です。
「お前の持つ力を貰いたい」
「え?」
「阿呆が。糸色の神通力は先天的な物だ。おいそれと他者に移し替えるなど出来るものか」
突然の申し出を私ではなく斎藤一が間髪をいれずに一刀両断し、左之助さんも彼の言葉に戸惑い、困惑してしまっています。
ま、まあ、そうなるのは仕方ないでしょうね。
申し出をされた私自身も何を言っているのか分かりませんでした。そもそも「神通力」の譲渡なんて聴いたことがありません。
いえ、確かに『特典』は子供に遺伝する事はしとりとひとえのおかげで理解できます。しかし、あくまで『遺伝』というだけで元来生来の力とは変質している。
例えば「糸色境」君に遺伝した『特典』は『前世の記憶の保持』を無理やり制御しようとした時、不具合を起こして生まれた「未来予測」「未来推測」です。
ついでに言えばひとえの「癒やしの力」もある。
傷を受けると同時に回復する。
あの子は言わば回復職のジョブを選択しているのに、行動は全て特攻じみた攻撃を行う狂戦士です。もっともお友達や家族に恵まれているようで良かったです。
「……お断りします。この力はサンピタラカムイ様という神様の御加護であり、私はその巫女を務める代わりに体調を維持しているんです」
「オイ。初耳だぞ」
「北海道で永倉さんに伝えていますよ?」
「あの昼行灯がッ…!」
そう言って怒る斎藤一から視線を逸らし、天草翔伍の目を見つめる。神を名乗る彼にとって「神通力」を使えるという私は非常に邪魔な存在であり、どんな人間よりも引き込みたい相手のはずです。
ゆっくりと天草翔伍の目を覗く。
怒りや殺意は無く、あるのは悲しみだけ。
吉利支丹である彼にとって信仰する神の御業を授かれず。目の前に居る私はサンピタラカムイ様の巫女として御加護を賜り、神通力も使える。
とても、辛いでしょうね……。