緋村剣心と共に左之助さん、明神君達は天草翔伍の住まう長崎県の島原に向かってしまった。私を巻き込みたくないと思う反面、私という存在を視覚の外に追いやることを警戒する人は、やはり何人もいるようです。
「(だからって、左之助さんのいないときに山県卿がただの商家に来るのはおかしいでしょうっ)」
しとりは剣路君と稽古していますし、ひとえはお庭の池を泳ぐ折神を見つめて、ドンと親分、ボスが落ちないように傍に居てくれていますけど。
とても心配です。
川路大警視も付き添っていない。しれっと柏崎さんがお祖父様のポジションのごとく居座っているけど。御庭番衆の誰かが……多分、般若が数日前に山県卿来訪を知って呼んでいたんですね。
そうでなければ我が家に居る理由はないし。
「……えと、ご用件は?」
ズズッと湯飲みのお茶を飲む山県卿は静かに封筒に包んだ何かを平たく書類か手紙をちゃぶ台の上に置き、緩やかに私の事を見据えています。
恐る恐る、封筒を受け取り、中身を取り出す。
真新しい写真。写っているのは綺麗な女性。それから竹刀を背負った男の子の写真、坪内刈羽の写真が私の手元に集まっています。
じゃあ、この女性は坪内君の母親でしょうか?
そう考えながら、この二人の写真を持ってきた理由を訊ねるべきかを考えてしまう。絶対に厄介事です。しかし、子供の危険を見過ごすのは……。
「糸色君、率直に聴こう。不老不死は実在するか」
「(やっぱり、そういう話ですよね。ですが、坪内君の母親は戦国時代から生きていると考えれば、その噂も大きく拡がっても不思議ではないのでしょうが)……不老不死は実在しますよ」
「やはり、実在するのだな」
「あくまで、聞いた話ですけど。人魚の肉を食べると不老不死になる。ただし、人魚の肉は百人中百人が死ぬ猛毒。とある大陸で万人が食し、一夜にして滅んだという話しも文献にあります」
「では、この親子は?」
「生き残っただけ、ですね。確か人魚の肉を食べた人は死んでしまうか『なり損ない』という化け物に変化してしまうそうです」
「私が食しても死ぬだけか」
「そうなりますね」
「では、君が生きている理由は?」
「日々の健康的な生活ですねえ」
「健康的な生活か。ふむ」
まあ、私は生きている間はサンピタラカムイ様の巫女であるという約束をしていますし。その対価として神酒を授かっています。
それは聴かれても答えることは難しい。私も神様に健康を維持できるお酒を貰いましたと言われたら、ものすごく怪しんでしまいます。