天草翔伍の放った極光─────。
多分、あの極光と剣気の重ねたモノを叩きつける技に「雷龍閃」と名付けた一撃をアイツは剣心やオレ、弥彦に叩きつけようとしていた。
尤も不発に終わったみてえだがな。
「左之、弥彦、下がっているでござる」
剣心の言葉に素直に聞いて岩に背中を預け、オレと弥彦は倭杖を右手に握り、左手を柄頭に当てて水平に構える剣心の姿を眺める。
天草翔伍の野郎は奥の手の手応えの無さに動揺し、剣心だけじゃなくオレと弥彦にも意識を向け始めてやがる。あの雷龍閃とかいう技は、アイツの奥義だ。
あの九頭龍閃を破ったと聞いたとき、オレは天翔龍閃を使えると思っていたんだが、どうにも剣心や姿と違ってアイツには決定的に何かが足りていない。
「アイツ、天翔龍閃が使えないんだ」
「弥彦も気付いたか」
「嗚呼、剣心も気付いているぜ。逆刃刀を返してやるべきなんだろうが、もう必要無いみたいだ」
そう呟く弥彦の言う通り。
剣と心を賭けると誓った剣心の戦いは此処で終わりなのかも知れない。最後にお前との喧嘩の相手を務めるのはオレか弥彦だと思ってたんだけどよ。
「「飛天御剣流!」」
「龍巣閃!」「龍巣閃・
相手の身体を滅多打ちにする剣戟の応酬、本来は天草翔伍みたいに真剣を用いて無差別に相手の身体を切り裂き、滅多斬りにする技だ。
だが、剣心の振るった龍巣閃は天草翔伍の様な身体の急所を滅多打ちにするもんじゃなかった。アイツは天草翔伍の太刀だけを狙った一点集中型の龍巣閃を叩き込み、同じ技で勝りやがった。
切っ先は砕け、刀身がへし折れる。
「武器を破壊すれば終いだ」
「いや、まだだ、まだ終わってねえ」
「ッ、まだ立つのか!?」
「弥彦、木刀を拙者に」
「おう!」
弥彦の木刀を受け取った剣心は自分の倭杖を無造作に投げ渡した。アイツ、いつまでも変わらずに不殺の誓いを胸に戦っている。
「拙者の全身全霊を以てお主を倒そう」
「……良いだろう」
緩やかに地面に突き刺さった倭杖を引き抜き、土を払った天草翔伍は剣心と同じ構えを取る。飛天御剣流同士の鏡合わせの構えに弥彦は固唾を飲む。
オレとしても、絶対に目の離せない戦いだ。
「二人とも木刀だ。天翔龍閃は撃てねえ」
「純粋な剣術の勝負ってわけか」
「経験の差で言えば剣心だ。けど、あの天草の身のこなし……剣心より少しだけ速かった」
悔しそうに呟いた弥彦の言葉に目を閉じ、ゆっくりと目を開ける。親友の勝負だ。邪魔も声援も送らねえぞ。剣心、お前を倒すのはオレだからな。