木刀の軋む音を聞き、超神速の動きを追う。
「龍巻閃」
「嵐と凩だな」
縦回転と横回転の斬戟は拮抗し、僅かに体格で劣る剣心の嵐は横回転の凩に競り負け、二人は空中という足場の無い不安定な場所で斬り結ぶ。
「「飛天御剣流!!」」
「龍翔閃!」「龍搥閃!」
昇りと降りの斬戟。
剣心の十八番とも言える龍搥閃は天草翔伍の左肩を叩き、鈍く重苦しい音を出す。苦悶の声を上げる天草翔伍だったが、アイツは二度目の龍翔閃を繰り出し、剣心の身体を穿った。
確かに、コイツはほぼ互角の戦いだろうぜ。
蒼紫のヤツが剣心以上の速さと称して、斎藤が剣心以上の強さと称した。天草翔伍の実力は確かに剣心に匹敵している。
しかし、今の剣心に匹敵する程度だ。
オレは剣心の全盛期を知っている訳じゃねえが、アイツの強さは剣心には届いていない。もっとも今の剣心は天翔龍閃は使わない。
「左之助、剣心はやっぱりスゲえな」
「何言ってんだ。当たり前だろう」
「そうだよな」
そう言ってオレは前を向く。
強い。確かに、天草翔伍は強いんだろう。
だが、それは自分より弱いヤツを相手に戦っていたから身に付いたものだ。剣心のように常に自分と同等の強さを持つ相手と戦う経験は天草翔伍にはない。
「次で終わりにしよう」
「…分かった。応えるでござるよ」
切っ先を突きつけるように二人は構えた。
─────九頭龍閃の構えだ。
天翔龍閃を使えない以上、剣心と天草翔伍の振るえる最強の技は、九頭龍閃だけだ。いや、まだ何か奥の手を隠している可能性もある。
壱の唐竹もしくは切落から始まる九撃必殺の技だ。
弐の袈裟斬り、参の右薙、もしくは胴、肆の右斬上、伍の逆風、陸の左斬上、漆の左薙、もしくは逆胴、捌の逆袈裟、玖の刺突だ。
九つの必殺の一撃を同時に放つ。
オレも受けたことあるが、捌でオレの意識は飛んだ。弥彦は白刃を受け止めたらしいが、コイツは剣心の事をずっと追いかけている分、技の理解も高い。
「「九頭龍閃!!」」
その掛け声と共に放たれた九撃必殺の技は剣心と天草翔伍の身体を貫き、二人は吐血して倒れた。剣心は柄頭を額に放ち、天草翔伍は刺突だった。
勝負を別けたのは、九撃目────。
天草翔伍の刺突に対して、剣心は更に深く踏み込み、渾身の柄突きを叩き込んだ。その一撃が飛天御剣流としての最後の違いだった。
「……よう。大丈夫か?」
「左之、天草翔伍は……」
「嗚呼、気ぃ失ってるぜ。お前の勝ちだ」
「いや、紙一重でござった」
次があるのかは分からねえが、気長に待つか。