ようやく終わったと安堵していると、また大変な出来事に巻き込まれる事を想像し、深く吐息をこぼしてしまう。そして、もうすぐ『エンバーミング』です。
フランケンシュタイン。継ぎ接ぎの死体人形。生物と機械の混ざり合った相手。いくら左之助さんでも、あれほど恐ろしい相手と戦うのは躊躇する筈です。
しとりとひとえに人間の暗く恐ろしい部分を見せるのはイヤなのですが、私が思っているよりも二人は心が強いのかも知れません。
「?ドン、どうしたんですか?」
珍しく私の傍にやって来たドンはフスフスと鼻を鳴らし、廊下の戸の方を見つめている。隙間。しかし、妖気や邪悪な気配は感じない。
外道衆の襲撃ではないですね。
「……妖怪?」
いえ、モヂカラの結界は何百層と連なっていますし。親分とボスのように娘達の守護霊になってくれた妖怪なら通ることは出来るけど。
早々に善良な妖怪に出会えるのか難しい。
しかし、そうするのも怪しいということは、あの戸の向こう側に居るのは何者なのでしょう?と首を傾げながら考え込んでいたその時、ドンの唸り声が響く。
そこまで危険な生き物が?と少しだけ焦りつつ、戸にモヂカラの結界を更に重ね掛けすると、小さな「ホホホ」と笑う声が聴こえてきた。
聞き覚えのある、イヤな声です。
絶対に開けてはいけない。
今の声は間違いなく筋殻アクマロの笑い声でした。多分、私達の閉じた地獄の門の事を調べているのでしょうね。
「ありがとう、ドン。あなたのおかげで危ないことにはなりませんでした」
そう言って私はドンの背中を優しく撫でてあげ、あまり隙間に近付くことは止めるように、左之助さん達にも伝えないといけないですね。
とても、怖いことです。
「ん!邪魔!!」
そう思っていたのに、しとりは力任せに結界を開けて隙間も無くしてしまった。本当に左之助さんと姿お兄様のポテンシャルを重ね合わせた、すごい子ですねえ。
だけど、あまり危ないことはやめてね?
ドンを抱き上げて、私のお膝の上に腰掛けるしとりは満足げにフンスと胸を張ってイル。だれかに自慢しているようにも見えますね。
ひとえ、ではないでしょうけど。
「母様、斬る?」
「え?」
「斬る?」
「……怖いのでやめましょうか」
多分、しとりは成長したらアヤカシを斬ることが出来るようにはなるだろうけど。あまり、そういう危険な事を率先してやってはダメです。
この子は分かっているようで、まだ無茶をしてしまいますから
個魔の方には本当に助かっています。