「そろそろ決着つけてえな」
しとりとひとえの寝静まった真夜中、ぼんやりと月見酒をしていた左之助さんの呟きに身体が強張る。左之助さんの呟いた言葉の意味は分かっています。
緋村剣心との決着────。
斎藤一、四乃森蒼紫、石動雷十太、志々雄真実、雪代縁、時雨滝魅、天草翔伍、凍座百也、そして、明神弥彦もまた、緋村剣心と真剣勝負を交わしている。
明治時代の名だたる剣客達は緋村剣心という最強に挑み、自分自身の満足できる決着を得ています。───けれど。左之助さんだけは勝負の中断や横槍を受け、しっかりと緋村剣心との決着を付けていません。
「左之助さん、しましょうっ」
「景?」
「決着です。ちゃんと、しましょう!」
怖くても、この人の望みは叶えたい。
ゆっくりと彼の手を握り締める。
大丈夫。絶対に邪魔はさせません。
「本当に良いのか」
「はい。私はあなたの妻ですから、どこまでも着いていきます。だから、あなたの進みたいように駆け抜けて下さい。緋村剣心と、満足できる決着を…!」
「……ハ、ハハハ、本当にお前は良い女だぜ」
ワシャワシャと私の頭を少し強めに撫でた左之助さんは身体を傾け、私のお膝の上に頭を乗せる。膝枕、ずうっとしてきたスキンシップだもんね。
「最初は斬左、次は喧嘩屋」
ゆっくりと、彼は右拳を握り締める。
「今度は、ただの相楽左之助だ」
「フフ、楽しそうですね」
「まあな。親友との最後の喧嘩だ」
嬉しそうに笑った左之助さんは本当に楽しそうで、私のためにやりたくもないことやしなくちゃいけないことを増やしてしまった後悔もある。
本当は何処までも走っていける。
「景、ありがとうな」
「此方の台詞です。私を見つけて愛してくれて、ありがとうございます。最後の喧嘩、あなたの思う存分を、全てを思うままに」
「嗚呼、絶対に負けねえさ」
そう言って目を閉じた左之助さんは気がつけば静かに寝息を立て始める。お酒が回ってしまったんですね。微力ですが、サンピタラカムイ様に授かった神酒の『人を癒やす力』を使って、コンディションを整えますね。
大好きですよ、左之助さん。
あなたは誰よりも強くてカッコいいです。
「こういうとき、応援の言葉は何が良いんでしょうね。頑張って下さい?」
そんなことを呟きながら彼の身体に身に付けていた羽織を被せてあげ、いそいそとちゃぶ台をずらし、眼鏡をちゃぶ台に置いて彼の傍に寝転び、ゆっくりと私も目を閉じて眠り始める。
ずっと、おそばにあなたの居たいです。