翌朝、左之助さんは喧嘩を申し込んだ。
緋村剣心も決着を付けることを承諾し、明神君の逆刃刀を今一度だけ振るうために受け取る。蛮竜を担ぎ、歩く左之助さん、その隣を歩く。
明治十一年、あの日と同じです。
土手を降りて河原脇の砂利を踏み締め、蛮竜の鞘袋を私に差し出す左之助さんに「左之助さんの思うままに楽しんできて下さい」と伝える。
「景さん、あの時と同じね」
「フフ、そうですねえ」
そう語り合いながら変わったのは時代だけじゃない。明神君には燕さんが、私と左之助さんにはしとりとひとえが、緋村剣心と薫さんには剣路君がいます。
左之助さんが蛮竜を片手で振るい、笑う。
緋村剣心が逆刃刀の鯉口を切り、構えて笑う。
「左之、あの時の決着でござる」
「嗚呼、今日勝つのはオレだ」
───瞬きより速く、二人は衝突する。
緋村剣心は逆刃刀の鎬に手の甲を添えて、蛮竜の振り下ろしの一撃を往なし、返す刀で左之助さんの身体に乱撃を、飛天御剣流「龍巣閃」を叩き込む。
けれど。一撃必殺足り得る人体の急所を乱れ打つ剣戟を左之助さんは雄叫びを上げ、筋肉の怒張だけではね除け、蛮竜を面に構え、砂塵を巻き上げるほど力強く蛮竜を横薙ぎに振るい、緋村剣心を力任せに払い飛ばす。
「ぐうっ!」
「うおらぁっ!!」
まさに怪力乱神の御姿です。
川の水面を蹴って対岸に着地した緋村剣心もまた笑みを浮かべ、逆刃刀を引き絞って、突きの姿勢に構える。牙突めいた構えですが、違う。
一歩、踏み出した。
緋村剣心の姿が、掻き消える。
「飛天御剣流、龍翔閃ッッ!!!!」
「下がぶあっ!?」
ガゴンッ…!と鈍く音は響き、左之助さんの顎を打ち上げる逆刃刀が見える。
おそらく一瞬にして間合いを飛び越え、その加速した超神速の勢いのまま、緋村剣心は飛天御剣流「龍翔閃」を放った。
「がぶっ、蛮竜!!」
左之助さんの声に呼応し、蛮竜は熱風を放出する。が、熱風を切り裂いて、緋村剣心は荒々しく錐揉み状に身体を渦巻き、熱風を回避してしまった。
しかし、熱風によって僅かに傷を負っている。
「流石、超神速だぜ」
「いやあ、今のは咄嗟でござったよ」
いつものようにおどける二人に、私と薫さんもクスクスと笑ってしまう。やっぱり、私達の大好きになった人達はカッコいいですね。
「蛮竜、全力だ」
そう告げると左之助さんの身体が青白い電撃に纏わり付き、バチリと静電気を纏ったように穏やかに変わる。その姿は、転生者の私には黒髪のままなのに