「うっ、お酒臭い」
「景、大丈夫か?」
大衆酒場の大扉越しに香る酒気に口許を押さえつつ、左之助さんの言葉に頷き、私はシュタインさんのお願いしてきた
あまり仲良くするのは難しいですね。
そう思いながら窓ガラスを突き破って飛び出てきたオジサンや悪人顔のオジサン達は白目を剥いて、ぐったりとしている。
「この東洋人が!」
「おう。日本人様だぜ!」
売り言葉に買い言葉。
なんだか大変な事をしています。けど、お話しを聴くようにシュタインさんは入っていましたし。英国は、そういう事柄を重要視視していますから。
いわゆる、騎士道精神────。
私には難しい精神論です。
しかし、本当に悩ましく思えるのはドクトル・バタフライとアール・シュタインの二人です。何故、私と左之助さんにフィリップ=ウィルキンソンとアザレア・ミレーの捜索を頼んだのでしょうか。
いえ、おそらく彼らの巻き込まれる事件に居合わせる事を二人は望んでいるんでしょうね。あくまで「物語」へと介入するために必要な事と割り切っている。
人間性の欠落・欠如に近しい感じです。
「景、行き先は分かった。倫敦だ」
「フフ、出戻りも良いところですね(しかも私が『エンバーミング』の物語を細かく覚えている事を前提条件とした行動ばかりですけど)」
「乗り物が使えねえからな。走るぞ」
「すみません」
スカートを少し託し上げて、左之助さんの背中に乗せてもらった瞬間、景色が溶けるほど素早く駆け出していく彼の背中に顔を埋める。
見えないことは怖いですが、安心できる背中に抱きついていられるのは嬉しく思う。しとりとひとえに見られたら、また仲良しとからかわれてしまいますね。
でも、仲良しなのは本当です。
「景、道は覚えてるよな」
「覚えていますよ、右の分かれ道へ」
「此方だな!」
そう言うと左之助さんは更に走る速度を速めたその時、教会の近くを通りすぎる。眼鏡を掛けた鉄足の青年が見えた、ということは、あそこに『エンバーミング』の主要人物達は集まっています。
「(……会おうと思えば会えますね)」
「教会か?此方だと結婚のやり方も違うんだよな」
「えぇ、ウェディングドレスという洋式の白無垢を着ることになりますが、一番重要なのは神様の見守る中、生涯の愛を誓うことですね」
私と左之助さんもしましたよね。