緩やかに走る速度を落とす左之助さんに首を傾げながら、目の前を見るとフクロウが飛んでいるのが見えた。いえ、あれはミミズクですね。
私達の事を監視している。
あるいは、左之助さんの情報を先んじて知り得た人の策略に嵌まっている可能性も有り得るわけですが、その線は限りなく薄い。まず、英国・倫敦に居るとしても左之助さんは表向きはお菓子の工場長です。
交易を担う時はドクトル・バタフライやアール・シュタインの横槍を受けることになります。分かりやすく言ってしまえば新参者の日本人を警戒する理由は無い。
「見付けたぞ、景」
「写真と人相書きの通りですね」
そう話しながら背中から下ろして貰った瞬間、岩石を彷彿とさせる何かを射出し、地面や壁、建物を粉砕していく人影を見てしまった。
「あ?何だこれ、石か?」
「……多分、あの人の角質ですね。皮膚に異常硬質化の投薬を行い、筋繊維の収縮性を強め、手足の動きに合わせて射出できる能力みたいだす」
「簡潔的に教えてくれねえか?」
「……じゃあ、あとで教えてあげます」
「おう。そうしてくれ」
そう言って笑いながら私を背負っていた左之助さんは小さな女の子と戦い始めたフランケンシュタインに向かって歩き出す。
フランケンシュタインも左之助さんに気付き、訝しげに左之助さんを見下ろす。ドクトル・バタフライの作ってくれたひみつ道具「ほんやくコンニャク」のおかげで会話に問題はありませんけど。
何故、お味噌を塗るのかしら?
「テメェ、なんで死んでねえ?オレの角質弾を受けて生身の人間が無傷なんざ有り得ねえ!!」
「おじさん、危ないわよ!」
「おじさん!?……まあ、オレもそんな歳か」
ショックを受ける左之助さんは頭をガリガリと搔き、目の前に立っているフランケンシュタインに見向きもせず、家屋の屋根に立っている女の子を見上げる。
「無視してんじゃねえッ!!」
「雑魚は引っ込んでろ」
「ぐぶあ゛だっ!!?」
裏拳一発。軽く振るった裏拳は無動作のまま溜めを必要としない二重の極み。刹那の瞬間、左之助さんの拳は炸裂し、分厚い角質を粉々に粉砕していく。
「な、何者だてめええぇっ!!?」
「(わあ、三下っぽい台詞って本当に言うんですね)」
少し変な事に感心していたとき、ズシリと地面を踏み締める音が違う人が近づいてきた。やっぱり、到着するのはこのタイミングというわけですね。
「アレは貴女の
「いいえ、夫は生身の人間です。ただし、世界最強という単語を付けて下さい。誰よりも何よりもカッコいい世界最強の人間、それが私の夫です」
にこりとそう言って私は微笑みを向ける。