「錬金術……ねえ?」
「ワイが言うのもあれやけど。自棄になったら、あかんでトリ頭」
「まだ頭は平気だ。殴るぞホウキ頭」
紙巻き煙草の燃え滓を灰皿に落としてオレの渡した鉄の塊を見つめる斎藤の手には、髑髏野郎の持っていた物の他に、
沢下条のヤツはオレの頭を触って貶してくるが、そんな事に一々反応している暇はない。何か少しでも手掛かりになるものを見つけねえと、マジで景が危ない。
「藤田警部補、調べが終わりました!」
「…意外と早く済んだな」
慌ただしく扉を開けて入ってきた警官は手元の資料を斎藤に差し出す。五枚、六枚ほどに纏められた資料を読みつつ、斎藤は灰皿の淵に添えていた煙草を拾い上げ、ゆっくりと煙草を口許に添える。
「おい、この情報提供者とは誰だ?」
「ハッ。それが盗まれた本人だと」
「─────んの野郎ッッ!!!」
「おいコラ!?ありゃあ、アカンわあれは」
オレは扉を蹴破って廊下を走り、髑髏野郎の事を探し回る。頭巾だったら分からねえが、あの爺の皺だらけの顔は覚えてる。
絶対に捕まえて、景の居場所を吐かせる!!
そう意気込んで走り出したオレを呼び止めようと叫ぶ沢下条の声を無視して、行き交う警官を押し退け、髑髏野郎の背丈に近いヤツの顔を片っ端に調べていく。
───だが、あの爺は何処にもいない。
「ちくしょう、ちくしょう…!」
オレは何度も地面を殴り、大事な女すら見つからない自分の不甲斐なさ、弱さを嘆きながら相楽隊長を殺されてから一度も流さなかった涙をこぼす。
「Goodアフタヌーン。まだまだ諦めも後悔も懺悔するのも早いぞ少年よ!」
「…蝶……?…」
何処か荘厳で厳格な声に気圧され、オレは顔を上げると蝶の姿を模した髭を生やした壮年の洋式服を身につけた男が佇んでいた。
「私の名は蝶野爆爵、君の追う男の友。いや、かつては友として生きていた男だ。愛しのレディを助けたいのだろう?ならば嘆き、悔いる暇は無い筈だ」
「アンタが……蝶野…爆爵…」
「既に自己紹介は済ませた。私の友人に貰い受けた物をくすね、盗み取った男に仕置きをする。そのために君達の協力を得に遠路やって来たのだからな」
「ホウ。それほどコイツが大事な代物か」
「斎藤、そういうとこやぞ。全くしゃあないし、鎌足にも連絡しとかなアカンなこれは」
いつの間にかオレの後ろに立っていた斎藤と沢下条の言葉に涙を拭い、オレは足に力を込めて立ち上がる。もう二度と諦めねえ、涙は流さねえ…!
必ず助けるから、待っててくれよ。