アシュヒト・リヒターとエルムさんを連れて倫敦へと帰宅し、シュタインさんにお願いしていたしとりとひとえの二人を受け止める。
「ただいまです、しとり、ひとえ」
「ん!おかえり!」
「あい!」
仕立て屋の二階で賢く待っていてくれたしとりとひとえを優しく抱き締めて、すでにディオゲネス・クラブに向かったレネゲイドさん達と左之助さんのお迎えはもう少し後になりそうです。
なによりレネゲイドさん達の他にもヒューリー・フラットライナーとDr.ピーベリーの到着を待たないといけません。
Dr.ピーベリー、彼女の遠い親戚の彼女とはアメリカに居たときにお話ししたことはありますけど。流石に、こちらのDr.ピーベリーは知りませんよね。
そう思いながら三日ぶりに会えたしとりとひとえの事を抱き締めたままベッドに寝転び、ゆっくりと出来る間に少しだけ目を瞑り、眠る。
最近、身体が上手く動いてくれない。
ドクトル・バタフライと恵さんの用意してくれたお薬はちゃんと飲んでいるのに身体が重く苦しいときが日に何度か不規則にやって来ます。
「Mrs.糸色、疲れて休んでいるところ悪いのだが構わないだろうか?」
「…いえ、大丈夫です、どうかしましたか?」
「ああ、そろそろ到着すると天爵の言伝てを伝えに来たんだ。君の服用している薬も持ってくるそうだから、テラスを開けておこうと思ってね」
「フフ、ありがとうございます」
そう言って私はシュタインさんにお礼を言いつつ、私の両腕を掴んでいる娘姉妹の「ん!まだ取っちゃだめ!」「かーさまはひーちゃんとねーさまのなの!」という言葉に嬉しくなってしまいます。
お母さんも二人が大好きですよ♪︎
「母様、行っちゃダメだよ?」
「かーさまはうごかないの!」
「あらあら、どうしましょう」
二人に大事に思われて嬉しくなっていたとき、イヤな歌声が聞こえてきた。歪さに気付いていない、冷たくて凍えるような歌声に娘姉妹もイヤそうな顔をする。
切り裂きジャックの事件後。
時折、あの歌声を聴いています。正体や行動の理由も分かっているけれど。私は、怖くて恐ろしくて近付くことも出来ず、静かに去るのを待ってしまう。
「……母様、可哀想だね」
「ん、かなしーね」
「……そう、ですね。悲しい歌声です」
怖くて恐ろしい歌声。だけど、私も失ってしまったら、ああなっているかも知れない。怖くても私には家族がいるから、まだ歩いていける。
怖さを捨てることも克服することも私には絶対に無理だと分かっていることです。