ディオゲネス・クラブの談話室。
本来は英国紳士と英国淑女のみ入室許可を得る事の出来る秘密の建物内を歩きつつ、ドクトル・バタフライの後ろを歩いていくと恰幅の良い男性がパイプを口許に添えているのが見え、そうっと口許を袖で隠す。
「一般の家族を呼ぶとは倫敦は人手不足の様だな」
「Dr.ピーベリー、唯の一般人ではありません。男の方は世界最強の人間、十年前から活動する
「ホウ。人のまま身体の制御を外した側か」
珍しそうに左之助さんを見上げるDr.ピーベリー、その後ろに控えていたヒューリー・フラットライナーの視線は、しとりとひとえに向いています。
確か子供好きでしたよね。
「で、そっちの女は?」
「Mrs.糸色です。御存知でしょう?」
「まさか
「クレアボイアンス?」
「過去・現在・未来、果てには平行した世界も視覚して見ることの出来る能力だ。成る程、継ぎ接ぎの怪物退治に持って来いの人材だ。何よりスガタの話していた妹というのもコイツで間違いない」
そう言って煙草に火を点けるDr.ピーベリーの言葉に興味深そうに、みんなの視線が集まり始める。ですが、私にそんなすごい能力は備わっていないです。
ちょっと考えただけです。
いえ、そもそも姿お兄様は私の事をどういう風に説明しているんでしょう。錬金術師や魔法使いを自称する人達が襲ってくるのはお兄様のせい?
そう不安に思いながら私は部屋に充満してきたニコチンのイヤな臭いに耐えきれず、廊下に出て少しだけ呼吸を整える。ものすごく臭かった。
あんなもの、どうして吸うんですかね。
「(左之助さんは煙草を吸わないですけど。しとりとひとえは大丈夫なのでしょうか?)」
ゆっくりとドアを開けて部屋に戻ると窓を開け、煙草を吸うのは止めていました。チラリとドクトル・バタフライを見ると怪しく笑っていた。
一体、何を言ったんですか。
いえ、それは良いんですけど。
「コホン。話を戻すとしよう、アシュヒト氏に頼んだように君達にも切り裂きジャックの捜索、あるいは退治を手伝って貰うつもりだ。ヤツの狙いは、か弱く切り裂きやすそうな女性だ」
「か弱く」
「切り裂きやすそう」
アシュヒト・リヒターとDr.ピーベリーが、そう呟くとみんなの視線が私に集まる。……私を呼んだ理由は囮に使うためだったわけですね。