「ゔっ、ぅっ、えぷっ」
ガラガラと激しき、揺れる馬車の中、私はジライヤのおかげで出発に間に合ったものの。絶対に置いていこうとしていたように感じます。
「Mrs.糸色、吐くなら外で頼みますよ」
「この程度で酔うとは随分とお嬢様な様だな」
「Dr.ピーベリー、その言葉は正解だ。我らが姫は時代が時代なら一国一城のお姫様である」
「じ、いぷっ…」
三人の会話に加わろうとする度、ガタンと馬車は動きを荒くしてしまい、私は何も言えずにいると空気の振動と竜巻が馬車の外に見える。
こんな市街地の中で無差別攻撃を始めたの?と驚きよりも恐怖が勝ってしまい、どうやって止めるのかを必死に考えていたとき、馬車の上に座っていたジライヤが、コンコンコンとドアをノックしてきた。
「此処から先は通行止めだそうだ。糸色様、悪いが俺は人避けを手伝って来るぞ」
「くぷっ、お願いします」
彼の言葉は当然です。
理解できずに泣いているのなら助けなくてはいけません。人の命を容易く奪うなんてあってはいけないこと。なにより切り裂きジャックの在り方はダメです。
「私達も行きましょうか。おそらく、あの場所に切り裂きジャックは居るでしょう。そして、東洋に伝わる武器も見物できる可能性もあります」
そう言って私に視線を向けるアシュヒト・リヒターとDr.ピーベリーの見たいと言っているものは十中八九、確実に「蛮竜」のことです。
また、左之助さんに負担を掛けてしまいます。
「…金色の粉、砂金が舞っているのか?」
「倫敦に砂金の出る運河はありません」
「どこぞの成金貴族の遺品というわけか」
ゆっくりと人混みを掻き分けていたとき、ぎぃんっ、ぎぃんっ、と鉄の……壊れたベッドのスプリングか何かが弾む音が響き始める。
「
思わず、私が呟いた瞬間、人々を掻き分けていたアシュヒト・リヒターとDr.ピーベリー、群衆の人々もまた街灯やレンガ造りの壁を蹴り、家屋の屋根に立つ、2メートルを越える黒衣の異形を見上げる。
「あきゃきゃきゃきゃっ!!久方ぶりに
ぎぃんっ、ぎぃんっ、と手足が弾み、跳ぶ。
その姿に見覚えのある人々は悲鳴と狂騒を起こし、四方に逃げ出していく。───けれど。竜巻の起こるほうから逃げるように走っています。
「(……自分を大々的に晒して逃げることを優先させる。よく、それを実行できますね)」
でも、ありがとうございます、伯爵。