端正な顔立ちをしたレイクという女性は、どこにも属さない非公式ヒーローだ。
通常、街が怪物などの大災害に見舞われた場合、ヒーロー協会に所属する上位S級クラスからなるヒーローが派遣され、対応をする。
が、しかし——。
「レイク!」
レイクがコンビニから出てくると、友人のアイコが通りかかり声をかけてきた。
「アイコ?」
「珍しいね、こんな時間に。仕事じゃないの?」
「面白くないから仕事は辞めたよ」
「え?」
「それに、怪物騒動が多くて出歩くのも面倒だし」
「そうなんだ」
「サイタマからの仕送りもあるしね」
「サイタマって?」
「あ……ハゲマントだよ」
「ハゲマント? ヒーロー協会の?」
「うん。本名はサイタマ。あらゆる敵を
「なのにA級?」
ないない——と、アイコは右手を顔の前に立てて横に振る。
「それができちゃうのよ、サイタマには」
「ていうか、レイクってなんでハゲマントの知り合いなの?」
「いとこなんだ」
「……へえ」
「なに? 今の間」
「いや、別に。それじゃあね」
アイコはそう言って去っていく。
「きゃああああ!」
しかし、たった今別れたばかりのアイコが怪物に襲われて悲鳴を上げた。
「アイコ!」
駆けつけるレイク。そこには、スズムシ型の怪人、ベルクリケタスに捕縛されたアイコの姿があった。
「ちょっと、アイコを放しなさいよ!」
「できない相談だな」
と、ベルクリケタスが返す。
「だが、お前が俺の奴隷となるのなら、乗ってやらんでもない」
「誰が」
「そうか。これでもそんなことが言えるかな?」
ベルクリケタスがアイコを解放する。
「アイコ!」
レイクがアイコを抱きしめようとすると、彼女がこちらに襲いかかってきた。
「!?」
レイクはバックスッテプで攻撃をかわす。
「アイコ!?」
「俺には人を操る能力があるんだ」
「嫌な能力ね!」
レイクはアイコの鳩尾に拳を捩じ込んだ。
しかし、アイコは無表情のまま、倒れることなく反撃に転じる。
「ぐっ!」
レイクはアイコの拳を耐えつつ、ベルクリケタスへの攻撃の隙を窺う。
「アイコを戻しなさい!」
「お前が俺の奴隷にならない限り解放しないと言っただろう?」
防御に徹するレイク。
「ふははははは! 頭部を破壊するか首を切らねば動きは止まらんぞ!」
「卑怯者め」
レイクは攻撃を受け流し続ける。
「おい、丸腰相手に何やってんだお前?」
と、そこにサイタマが現れる。
「サイタマ! アイコの動きを止めて!」
「なんだ、レイクじゃんか。この子を止めりゃいいんだな?」
サイタマがアイコを羽交締めにする。
レイクはベルクリケタスの懐に潜ると、その顔面に拳を炸裂させた。
ベルクリケタスの顔面が潰れて粉砕し、胴体は力を失って地面に倒れた。
「あれ?」
正気に戻るアイコ。
「うん?」
自分の置かれた状況に気付いたアイコは、サイタマの顔を見て悲鳴を上げた。
「きゃあああああ! 何すんのよこの変態スズムシ!」
ペチーンという擬音と共にサイタマの頬を引っ叩いたアイコがサイタマの羽交締めから抜け出した。
「あ……スズムシじゃなくてハゲマント?」
「ハゲマントじゃねえ、サイタマだ!」
と、アイコに対して突っ込むサイタマ。
「助かったよ、サイタマ」
その言葉にサイタマは振り返る。
「あ? ああ、たまたま通りかかったしな。それじゃあな」
サイタマはそう言って去っていく。
「送ってくよ」
「え? いいよ」
「でも、また襲われないとも限らないし」
「そんな何度も襲われないって」
アイコはそう言って今度こそ去っていった。
「……帰るか」
レイクは帰路に就くのだった。