雷鳥 の 瑠璃紫苑 -らいちょう の るりしおん-   作:LeeMinwoo

5 / 9
【注意】
この物語については、パラレルワールド(並行世界)、マルチバース(多元宇宙)などを題材とした、クロスオーバーがメインとなる作品です。

関連するキャラクターは「ローカルヒーロー」がメインですが、ヒーローやヴィランは実在します。
しかし実在するヒーロー様や実在する団体様、公的機関や行政機関や企業様などにはなんの関係もございません。
先方へのお問い合わせはご遠慮頂き、もしご用命ございましたら作者までお問い合わせ下さい。

オリジナルキャラと他作品のキャラクター、流用設定等が登場します。
キャラの性格違い、解釈不一致、ご都合展開などが苦手な方はご遠慮下さい。

「ローカルヒーロー」がメインの作風ではありますが。
作中「ローカルヒーロー」と言う言葉が出ることはございません。
あくまでもこの世界では各地に点在する「ヒーロー」である事を予めご留意ください。

誤字脱字や駄文ご容赦ください。
誤字脱字はコメント欄にてお伝えいただき、ご教示頂けると幸いです。

以上の事をご理解頂いた方へ

お楽しみいただける事を深く祈ります。


第5羽 『異邦、異種、翡翠』

 

 

瑠璃、人間の年齢で換算すれば

約10歳。

彼は今、徒手空拳の稽古を始めるところだった。

 

相手は。

 

竜神に選ばれ、清里と言う土地と笑顔を守護し、実力、経験、何より粘り強さとしぶとさ。

そしてその奥にある、真理に勘づく鋭さを有した戦士。

『セイリュウジン』

 

「さぁ瑠璃くん、どっからでも良いっすよ!」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

対峙する2人。

 

その姿を見守るのは。

ミントリガー、ヴィーク、記録担当に渦巻。

審判をガリヤーが務める。

 

 

◇約2年前◇

 

「セイリュウジン、紹介するよ。瑠璃だ」

 

セイリュウジンの目の前にいるのは、小学生くらいの小さく黒い身体に青い服を着た、紫色の大きな瞳と銀髪の人型の少年。

ミントリガーが紹介して来た人物ではあるが、なぜ彼を自分に紹介したのか。

いや、少年と呼んでも良いのか。

セイリュウジンにはその線引きができなかったが。

 

「初めまして!俺はセイリュウジン!よろしくっす!」

 

細かい事を考える事をやめたセイリュウジン。

 

「よろしくおねがいします、瑠璃です」

 

すかさずミントリガーが口を開く。

 

「セイリュウジンにはお願いがあってさ」

 

「俺に??」

 

わかりやすく首を傾げるセイリュウジン。

 

「瑠璃の稽古相手になって欲しいんだ」

 

そう言われて、ゆっくり瑠璃を見るセイリュウジン。

そしてまたゆっくりとミントリガーを見る。

 

「ご子息か後継者っすか??」

 

「そういうわけじゃないよ」

 

静かに笑いながら応えるミントリガー。

続けてその理由を話し始める。

 

「出来る限り自分の身は自分で守れる力と知識をつけて欲しいと思ってさ、俺も指導してはいるんだけど。色んな経験や危機を乗り越えた、君の手腕もそうだけど、何より1番は」

 

セイリュウジンの肩に手を置くミントリガー。

 

「君の粘り強さを瑠璃には持ち合わせて欲しいと、個人的に思ったんだよ」

 

セイリュウジンは嬉しそうに肩を揺らす。

 

「わかりました!しっかり面倒みます!!」

 

瑠璃に向き直ったセイリュウジンは、真っ直ぐ見据える。

 

「やるよ!!瑠璃くん!!」

 

その大きな体躯とは裏腹にも、とても人懐っこく、仮面の中からも解るほどの優しい笑顔を向けるヒーローに対し、笑顔で返す瑠璃。

 

「はい!」

 

大きな目が細く閉じられたその表情を見て、直感的に笑顔だと勘づくセイリュウジン。

 

「いい笑顔だ!そういうの大事っすよ!!」

 

これが瑠璃とセイリュウジンの初対面だった。

 

 

◇現在◇

 

そして今、定期的にセイリュウジンより稽古を受ける様になった瑠璃。

 

「はじめ!!」

 

ガリヤーの合図とともに始まる組み手。

 

先手は瑠璃。

 

直線で突っ込んで来る。

 

それに対して真っ向から立ちはだかるセイリュウジン。

 

突然瑠璃が視界から消える。

 

今日まで何度も稽古をつけてもらった瑠璃は、教わっていた言葉の一つを思い返す。

 

攻撃がパターン化してるためもっと変えていきましょう。

 

その言葉をしっかり噛み締め、彼なりに考えた答え。

 

いつもなら正面からのラッシュを選んで攻める自分の習慣を止めて。

側面、背後のどちらかで攻める。

そう決めていた瑠璃。

 

コンパクトに弧を描く様に背面につき、蹴りを叩き込む。

 

バシッと言う派手な音が鳴るが、攻撃がヒットしたわけではなく、上半身だけ捻り瑠璃の蹴りに対して裏拳で返したセイリュウジン。

 

(防がれることは予想していた…焦るな)

 

そう自分に言い聞かせる瑠璃はすぐに数メートル離れ、ジグザクに動きながらセイリュウジンを中心に旋回しつつ距離を詰めていく。

 

今までとは違う明らかな動きの変化を感じ取ったセイリュウジンも、1段階警戒を上げる。

 

セイリュウジンから向かって右にいた瑠璃は、脚に力を入れて反対の左側に正面を横切る様に飛ぶ。

 

それを先読みしていたセイリュウジンは、左手で掴みにかかる、しかし空振りに終わってしまう。

 

確実に掴めたはずのタイミングだったが、一瞬で見失ったセイリュウジン。

 

見渡そうとしたその時、後ろから羽ばたきが聞こえ、背後に気配を感じる。

 

後ろを振り返る途中でセイリュウジンの視界に入ったのは。

紫の羽毛と頭頂部が銀色の一際大きなライチョウが飛んできた。

 

「え!?鳥!?」

 

気を取られた一瞬の事だった。

 

ライチョウは瞬時に人の形に変わり、セイリュウジン目掛けて蹴りを叩き込む。

正面横切りの動きは完全に瑠璃によるセイリュウジンへの誘い。

 

とっさに肘で受けるセイリュウジンは驚愕した。

 

「え!?瑠璃くん!?いつのまに!?」

 

そのまま乱打を繰り出す瑠璃。

 

右手からの正拳突き、左手でフックを繰り出し、空振りに終わるも振り切ったのちに裏拳。

すかさず、細かくジャブを3度打ち、今度は右のフック、続いて左手のアッパーを放つ。

しかし全ての攻撃はいなされる。

 

反撃に出たセイリュウジンは再び捕まえようとするが、また視界から縮む様に消える瑠璃を掴み取れなかった。

 

ライチョウのままに翼を羽ばたかせて後方へと大きく下がる瑠璃。

 

人型へと戻り、構え直す。

 

奇襲は成功した。

 

しかし何一つとして決定打となっていない。

 

自分の状況を冷静に分析し、次の手を考える瑠璃。

 

「すげぇな…」

 

感嘆の声を漏らすセイリュウジン。

 

「俺が言った事をこんなにまで実戦で活かすとか、なまらビビったわ…」

 

セイリュウジンより瑠璃が教わった事

 

・攻撃を読まれない様に動く

・今できる精一杯の能力を活かす

・常に相手との距離を注意

・攻める時はしっかり攻める

・引き際はしっかり引く

・頭を使う

・なまらハッチャケろ!

 

これらを意識し、自分なりに“消化”させ“昇華”させたのが、先刻の猛攻。

 

「ただ残念、まだまだみたいっすね瑠璃くん…いや」

 

瑠璃に緊張が走る、間違いなく今までのセイリュウジンと違う。

 

「瑠璃ぃ!!!!!!」

 

肌を刺す様な程の声が周囲に響く。

 

「もう遠慮しないぜ!だからお前も来い!!」

 

拳を前に突き出すセイリュウジン。

 

「今お前の目の前にいるのは…俺自身だ!!全部受けて立ってやる!!」

 

胸部の鎧をバシンッと拳で叩いてみせ、セイリュウジンは気合いを入れる様に両拳を顔の前にクロスさせてから腰骨あたりの高さに構え。

 

「一緒になまら!…ハッチャケようぜ!!」

 

「はい!」

 

今までとは違う、常に様子見をして待ちの体制でいたセイリュウジンは、攻めの構えでチャレンジャーを出迎える。

 

瑠璃とセイリュウジンは約5mはあった距離を一気に詰める。

 

先手はセイリュウジン。

最早解りやすく掴み組み伏せる事は困難と判断し、勢いよく飛び込み拳を繰り出す。

その拳に上から添える様に手を置き、逆立ちをする様な体制で上段を取る瑠璃。

逆さに直立状態だった体制を勢いよく折り畳み、膝蹴りをセイリュウジンの顔面目掛けて襲撃をかける。

しかしセイリュウジンには届かなかった、何故なら

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 

四方百メートルへ響き渡るのではないかと思うほどの雄叫びを上げたセイリュウジン。

 

それにより一瞬平衡感覚が麻痺した瑠璃はバランスを崩して狙いを外した。

 

その隙を見逃さない歴戦の戦士。

 

膝を掴まれそのままぐるぐるとジャイアントスイングの様に振り回し、その勢いで投げ飛ばされる瑠璃。

 

飛ばされながらもライチョウに変化して両翼を広げ飛ばされた勢いを殺し、また人型へと変化して着地する。

そこを狙っていたとばかりに、セイリュウジンの右ストレートが飛び瑠璃へと差し迫るも。

瑠璃はそれを既に予測していた為着地と同時にその身を右に捻る。

 

拳速による風圧を感じた瑠璃。

 

(きっと今の僕じゃまだ勝てない…)

 

突き立てられた腕の関節部目掛けて左の裏拳。

すかさず右ストレートを返し、顔面にクリーンヒット…かに思えたが。

 

「言ったろ?」

 

確実に頬に拳が入っているが、それを受けても怯まないセイリュウジン。

 

「全部受けて立つって!!!!」

 

高揚する2人。

自然と不敵な笑みが溢れる。

 

セイリュウジンは右フックを繰り出すも瑠璃はそれをしゃがんで回避、そのまま更に距離を詰め、セイリュウジンの腹部目掛けて拳を3発連打する。

効果はない。

 

今度はセイリュウジンの猛攻。

ボクシングスタイルに近い構えを取り、ジャブを2回、右ストレート、左フック、右フック、ジャブで細かく変則的に3回、右をおり混ぜ、手数をどんどん増やしスピードも上げていく。

それを全てギリギリでかすめながらも避ける瑠璃。

しかし体力が限界を迎えて来た。

 

(やっぱりこの人は凄い!だったら悔いのない様に…玉砕してやる!!)

 

なんとかその猛攻を掻い潜り、セイリュウジンの右ストレートに合わせてスライドする様に左斜め上に飛び、顔面へと左フックを叩き込む。

命中した…はずだった。

 

殴ったはずの拳が、弾き返されたのだ。

 

(頭突きで…返された!?)

 

「言ったろ?頭使えって!!」

 

セイリュウジンは宙に浮いた状態の瑠璃目掛けて、両拳突きを叩き込む。

 

咄嗟にしっかりと両腕で攻撃を受けた瑠璃は後方へと約10m程飛ばされる。

 

瑠璃の腕はセイリュウジンの一撃によりほとんど麻痺してしまい、痺れて動かない。

一瞬両手に目を落としていたその刹那。

向き直ろうとした瑠璃の目の前にはセイリュウジンの大きな右拳が鼻先一つ分の距離で止まっている。

 

瑠璃は驚愕と脅威で固まってしまう。

 

「忘れんな、“頭使え”ってのは“言葉通りでもあるし言葉通りだけじゃない”俺が先輩から教わった、大切な事だ!」

 

「……参りました」

 

瑠璃はセイリュウジンに向けて深い息を吐いて、降参の意思を伝える。

 

「それまで!勝者!セイリュウジン!」

 

ガリヤーが戦闘終了の合図を送り、事は終わった。

 

自分はまだまだだと実感する瑠璃を、セイリュウジンはその両腕で軽々と抱き上げ、そのまま肩車する。

 

「すっげぇよ瑠璃!俺が言ったこと全部やったべ!?」

 

負けたはずなのに、凄く褒められている事に困惑する瑠璃。

 

「後でまた反省会すっけどさ、ほんとよくやった!かっこよかったぞ!」

 

高く抱き上げられた瑠璃は、セイリュウジンにそう言われ。

言葉には表現し難いほどの喜びに、感極まってしまい。

満面の笑みで、ボロボロと涙を流していた。

 

その雫はセイリュウジンの頭に落ちる。

 

「え!?瑠璃!?なした!?」

 

焦るセイリュウジンと瑠璃の異変に気づいた傍観者一同。

 

「セイリュウジンが瑠璃を泣かせた!!ゆるさない!!」

 

真っ先に動いたのはヴィークだった。

愛刀をどこからともなく取り出し、引き抜こうとする。

 

「違うよ!ヴィーク兄さん!」

 

今にも斬りかかりそうだった彼を静止したのは、瑠璃だった。

ライチョウに変化し、地面に着地すると共に人型へと戻り、ヴィークの前に立って両手を広げる。

 

「悔しかったのもあるけど。嬉しかったんだ、すごく。だからセイリュウジンさんは悪くないんだ」

 

心配性な兄に対し、毅然とした態度で向き合う瑠璃に驚くヴィーク。

 

「瑠璃が…そういうなら…でも、何かあったら言いなよ!オイラが、兄ちゃんが容赦しないから!」

 

瑠璃の頭に手を乗せてわしゃわしゃと撫でるヴィーク。

 

その姿を見て、セイリュウジンが呟く。

 

「なんだろ…もうなんか遠慮なくなったら、不思議とさ、瑠璃のこと家族?あ!弟みたいに思えて来た!」

 

それを耳にしたヴィークは睨むが。

瑠璃は眼を輝かせた。

 

「セイリュウジンさんもお兄さんになって貰えるなら、『セイ兄さん』って呼んでもいいですか?」

 

セイ兄さん

 

その言葉がセイリュウジンの中に目まぐるしく駆け巡る。

 

「ミントリガーさん!!」

 

「ん?」

 

叫ぶセイリュウジンに対しいつも通りの対応を返すミントリガー。

 

「瑠璃は!俺が!一生!面倒見ます!」

 

ズンズンとミントリガーへ近づきながら訴える。

 

「それは不安だから却下な」

 

「なんで!?」

 

ふふふと静かに笑うミントリガー。

 

「瑠璃は瑠璃だ、誰のものでもない。強いて言うなら、オホーツクヒーロー連合にとって、大事な俺たちの家族、そうだろ?」

 

その言葉を聞いたセイリュウジンは、瑠璃に駆け寄る。

 

「瑠璃!何がほしい!?兄貴がなんでも買ってやる!!」

 

「瑠璃はオイラの弟だ!さわんなっ!」

 

「んだよヴィークゥ、俺らオホーツクヒーロー連合って名の家族で瑠璃が弟なら俺らも兄弟じゃんかぁ〜」

 

「誰が!!」

 

「なぁ??瑠璃ぃ〜??」

 

目の前にいる2人の兄のじゃれあいを見て、瑠璃は静かにふふふと笑う。

 

「全く、騒々しい兄さん達だね」

 

審判役をかって出てくれたガリヤーが近づき、瑠璃の前に腰を落とす。

 

「よくやったよ瑠璃くん。いや、いつまでもくん付けはよそよそしいかな。瑠璃、ほんとすくすくと育って行くな、なんだか誇らしいよ」

 

優しく手を握るガリヤー。

 

とてもごつっとして、とても大きいその手は、触れられた途端に優しくあたたかいモノとなる。

 

瑠璃はそのあたたかさを感じて笑顔を向ける。

 

「はい!ありがとうございます!」

 

ミントリガーが前に出て、その場にいる皆を先導する。

 

「さてと、今日の稽古はこれまで。みんなメシにしようか」

 

 

 

◇30分後◇

 

食事も終え、皆各々帰っていく。

 

「瑠璃!次は明後日な!楽しみにしとけよ!」

 

変身を解き、大きく手を振ってその場から離れていくセイリュウジン、『神池 竜人-かみいけ たつひと-』

 

「ミントリガー、少しいいかな?」

 

「ん?わかった」

 

ガリヤーが何か話がある様で、ミントリガーを呼ぶ。

 

「瑠璃、少しここで待っててくれ」

 

そう言われた瑠璃は、何か

 

「僕、ちょっと“くない”の練習してきます」

 

「わかった、話しが終わったら迎えに行くから」

 

「はい!」

 

その姿を追う様に歩み出したヴィークをガリヤーが止める。

 

「ヴィークも聞いてほしい、大事な事なんだ」

 

「え!?でも瑠璃が!」

 

「瑠璃も子供じゃないんだ、信じてやろう」

 

両腕をがっしり掴まれジタバタするも解けず連行されていく。

そのまま渦巻に目配せするミントリガー。

 

「後片付けは僕がやっとくから、心配しないでねぇ〜」

 

と言いつつ渦巻は、ほとんどまとめ終わり、後は運び出すだけの状態で端末を見ながら何かを打ち込んでいる。

 

 

⬜︎射撃場⬜︎

 

 

先刻まで組み手を行っていた場所から徒歩5分ほど離れた場所には、瑠璃とミントリガーが使う射撃場がある。

 

銃、弓矢、くない、手裏剣

 

ミントリガーが瑠璃にこれらの扱い方を学ばせる為に用意した。

 

中でも瑠璃は忍者に対しての憧れが強い為、くないと棒手裏剣の扱いの自主練を度々していた。

 

努力の甲斐もあって、的に当てる事はできる様になったが、コントロールはまだイマイチの様子。

 

(くないはだいぶ慣れてきたけど…やっぱりこっちは難しいなぁ)

 

手にした棒手裏剣を見ている瑠璃。

 

(先生が言ってた…)

 

「練習あるのみ…ですよね!」

 

そう言いながら的に向けて棒手裏剣を投げる瑠璃。

手裏剣は的に刺さらず弾けて茂みの方へとくるくる回って飛んでいく。

 

(あぁ…また失敗)

 

と思っていた直後

 

小さな何かが茂みから出てくる

 

「!?」

 

慌ててライチョウに変化し、一気に飛んで茂みに着き人型へと変化。

飛び出した何かに覆い被さる様な体制で屈み、飛んでくる手裏剣を掴む様にキャッチする。

 

「あっぶなかったぁ、大丈…ん?」

 

咄嗟に動いた瑠璃は、自分が助けた対象物の影だけで小動物と判断したが、彼の懐にいるのは、見たこともない生物だった。

 

 

◇数分前◇

●謎の生命体目線●

 

今僕は、よくわからない場所にいる

 

僕は寝て起きたら、ここにいた

 

僕自信がなんなのかわからないけど、とりあえず僕は僕だと言うことは理解しているし、寝て起きた事は記憶してる

 

僕はこことは違う何処かの場所で産まれて、その場所で僕と同じ姿の仲間やかっこいい姿の守護者と暮らしていた事は覚えてる

普段からみんなに、お手伝いや助けになれる事がないかといつも尋ねてた日課だった事

守護者に憧れて、どうすれば守護者になれるのかいつも聞いてた事

僕の趣味趣向と言っても良い、“かっこいい”が好きと言う事を僕は覚えている

 

僕自身が何者なのか?

 

その一点だけが僕の中で謎になっていて記憶から抜けている

 

どうあっても思い出せないんだけど、特に困ってはいない

 

大事なのは僕が僕である事

 

とりあえずここは見たことのない葉っぱが多い

嗅いだことない匂いがたくさんしてる、遠くには水の匂いもする

しかも結構澄んでる様な香りだ

きっとおいしい水だ

 

僕はなんだかワクワクしてきて、ズンズンと進んでみることにした

 

何か音がする

 

コンッ

 

コンッ

 

コンッ

 

何かを叩く音みたいだ

 

気になったから僕はそこに行くことにした

 

生き物の気配がする

 

ゆっくりそっと覗き込んだ

 

なんだ…アレは!?

 

あんな生き物見た事ない!かっこいい!僕の憧れの守護者と同じくらいの、いや、僕にとっちゃそれ以上に!

 

僕は我慢できず飛び出した

 

ん?何かがくるくる飛んでくる、アレくらいなら避けられるな

と思った時だった

 

僕の見たかっこいい存在が、また見た事ない生き物に変わって僕に近づいてくる

それは僕に覆い被さり、飛んできた何かを取った

 

「あっぶなかったぁ、大丈…ん?」

 

僕を見て驚くその存在は、大きくて綺麗な青紫色の目をしていて、頭が銀色だった

 

「君…どこから来たの?」

 

僕に話しかけて来た?

 

「喋れないのかな……」

 

喋れるよと答える僕、けどなんだろう、困った顔をしている

 

「僕の言うことわかる?もしわかったら……手を上げて」

 

あれ?どうやら彼には僕の声が聞こえないらしい、なんでだろう?

とりあえず言われた通り手を上げてみた

 

「僕の言葉がわかるんだね!すごい!」

 

なんだか凄く喜ばれた

ちょっと嬉しい

 

「僕は瑠璃、僕の先生から貰った名前なんだ。僕の目がこの色だから、それに近い石に因んだ名前でね」

 

石?るりって石があるの?

君の目と同じ綺麗な色の石??

僕はそんなの知らない、見たことない、見てみたい

 

「真実、健康、幸運、あと成功の保証。そんな意味を授かったんだ、あと」

 

石に意味があるの?随分とユニークな習慣があるんだな…凄く面白い!

 

「女性っぽい名前らしいんだけど、昔のゲームで僕と同じ名前のかっこいい剣士がいたんだって、だから不満はないんだ」

 

女性っぽい?ゲーム?聞いたことない単語だ。

けど最後のかっこいい剣士は気になる!

 

「君は、何て言うの?」

 

僕??僕がなに??

よくわからないので首を傾げてしまった

 

「もしかして、名前ないの?」

 

そもそも名前ってなに?

なんとなく察するに、自分を指す事を名前って言うのかな?

 

そうだとしたら困った…今まで考えた事ないや…こまったことないし

 

「僕がつけてもいい!?」

 

つける?名前を??そんなに簡単なの!?

僕は驚きと興奮で思わず飛び跳ねた

 

「そうだなぁ…秀真-ほつま-はどう?僕の憧れの忍者」

 

……なんだかわからないけど…さっきのとだいぶ違う気がする…

飛び跳ねるのをやめた

 

「違うかぁ…んん…じゃあリュウもしくはハヤブサ、どうかな?」

 

さっきよりはわかりやすくなったけど…そう言うんじゃなくって、もっとこう、響きも意味もいい感じなのが…

 

提案してくれている名前が悪いわけじゃないんだけど…どうもしっくり来ない

 

「んんん…これも気に入らないかぁ…僕の趣味に偏り過ぎてるのかな」

 

実際そうだと思う…

 

事実その後も彼は自分の趣味に合わせた名前を提案してくれた

 

守恒-もりつね-

風魔-ふうま-

空蝉丸-うつせみまる-

十六夜-いざよい-

才蔵-さいぞう-

スプリンター

シャドウ

 

きっと彼にとって思い入れの多い名前なんだろう…

色々提案してくれたけど

 

聞いてて思ったんだ

 

僕は、君の様な名前がいいんだ

 

るり

 

すごく響きがいいと思った

 

僕は彼と一緒にいたい

 

彼の未来を一緒に側で見たい

 

彼の様な、並んでも不自然のない様な

そんな名前がいいな…

 

わかってる、これはきっと僕のわがままだ。

けど選んでもイイなら、それを伝えたいと思ったんだ

 

そうぐるぐると考えなら、僕は足元の石ころを拾って、握りしめていた

 

「瑠璃、お待たせ」

 

突然頭の上から声がした

見上げると、大きな何かが降り立った

 

「先生!」

 

るりがそう呼んだその存在

 

白く、綺麗で、鼻に通るとても爽やかな香りがする

 

その存在とるりは何かを話していた

 

ひとしきり会話を終えて、その大きな存在は僕に目を向ける

 

「名前か…」

 

先生と呼ばれたそのカッコいい存在は、僕にゆっくり近づいて、腰を落とし、目線を下げてくれた

 

なんとなくわかる、この存在もるりと同じ

何か知らない異質な存在だ

 

やっぱり大きい

 

それに凄くカッコいい

 

これが見惚れるって事なのかな

 

「ひょっとして君は…」

 

え!?僕ジロジロ見過ぎたかな!?

しまった!失礼だったのかもしれない!どうしよう!

 

「何か慌て出してるけど、間違ってたらごめん、聞きたい事があるんだ」

 

な…なんだろう…ちょっとこわい

 

「君は、瑠璃みたいな名前が欲しいんじゃないか?」

 

びっくりした

 

どうやってこの存在は

僕の気持ちを読み取ったんだ?

いや、読み取れたんだ?

 

先生と呼ばれるモノは、何故か笑っている

 

「その狼狽えっぷり、当たったみたいだな」

 

なんだか先生は嬉しそうだった

 

「瑠璃の名前は俺が決めたんだ、良かったら、君の名前も俺が決めてもいいか?」

 

僕は迷わず頷いた

 

「じゃあ折角だし、君を一目見た時に思いついたモノがあるけど、いいかな?」

 

僕は首を縦に振った

 

何度も何度も

 

そして先生は僕の頭に手を乗せて、言ってくれた

 

「翡翠-ひすい-」

 

ひすい?なんだろう?どんな意味なんだろう

 

そう思った僕に対して、先生はしっかり教えてくれる。

 

「赤みを帯びた黄みと白い頭、触ってみたら滑らかであたたかい。その印象にぴったりだと思ったんだ」

 

「ひすい…それも僕と同じで石から来てるんですか?」

 

瑠璃が先生に聞いてくれた

先生は頷いている

 

るりと同じ、石からのなまえ…

 

「石言葉は「繁栄」「長寿」「幸福」「安定」って意味を持つ」

 

「うわぁ、すごく綺麗!」

 

僕にはまだその言葉の本当の意味はわからないけど、るりの反応を見る限り、とても良い意味なんだと思った

 

それに何より

 

ひすい

 

言葉の響きがいい、僕は頭の中でその授かった名前を何度も何度も噛み締めながら繰り返し思った

 

「気に入ってもらえたか?」

 

そう言われて、僕は目が離せなかった

何故かこの先生と呼ばれた存在が、淡く光が流れ込んで、僕の身体に入って来るからだ

初めての感覚だった、なんだろうか?

と疑問に思ったけど、その光はしばらくして消えたと思ったら

 

僕の身体が熱くなった

 

「え!?なんか光った!」

 

「なんだ?どうしたんだ?」

 

身体が熱い

 

痛い

 

なんだろうこれ

 

初めての感覚

 

僕としては悶え苦しんでいるんだけど、声が届いてない

 

そのまま僕は前のめりに体制を崩し掛けた

両手を地面につけて、何かを必死で堪えた

 

そしてしばらく

 

スッとそれらがなくなった

 

「あ、なんか光がおさまったな」

 

「なんだったんですかね…あの…大丈夫?」

 

僕を両手で抱き、立たせてくれたるり

 

「ん?なんか…君…姿変わってない??」

 

姿が変わった?そんな馬鹿な、そんな簡単………

 

手脚がちょっと伸びてる!?

 

なんで!?

 

焦ってどうすればいいのかわからない僕を見て、先生と呼ばれる存在は

 

「まるで…瑠璃の時みたいだな…不思議だ…」

 

るりの時?同じ事がるりにもあったって事?

 

「紹介が遅れたな、俺はミントリガー」

 

みんとりがー

 

それが先生の名前らしい

 

僕の頭に手を乗せて先生は言った

 

「なぁ翡翠。願わくば、末長く、瑠璃と仲良くしてくれるか?」

 

「え!?僕もそうして欲しい!よろしく!翡翠!」

 

ひすい?

 

そうだった、僕の名前だ!名前を呼ばれたんだ!

るりと仲良く?

もちろんそんな事は願ってもない事だ!

 

るりは僕の目標の存在

先生は僕の憧れの存在

 

夢に描いてたそのものだ

 

そんな存在が

 

僕を受け入れてくれた

 

僕は

 

涙が止まらなくなった

 

先生は僕を

 

あたたかいその手で

 

抱きかかえてくれた

 

なんだか…

 

つかれた…

 

 

⬜︎組み手広場⬜︎

 

今日の戦闘記録映像を端末で確認する渦巻。

 

(成長の速度が速いとか以前に、学習能力が高いおかげだろうな…本当に瑠璃くんはすごいや、また今度何かお祝いにお菓子を買ってあげないと)

 

とても嬉しそうにその映像をみて思う渦巻。

 

それもそのはず。

 

瑠璃の成長が彼ら鳥獣保護研究所のとってとてつもない成果報告となるため。

 

我が子も同然に愛する瑠璃の成長も見られて、それを報告という形で自慢が出来るうえに評価もされている。

 

近々副局長の座も用意するかもしれないとまで言われていた。

 

「渦巻さぁ〜ん」

 

そうこうしているうちに瑠璃が渦巻に駆け寄ってくる。

 

「お、お疲れ様、くないの練習はどう?うまく……おっと?」

 

渦巻は一瞬思考を停止してしまう。

 

「ミントリガー…どうしたんです?その謎生物は…」

 

ミントリガーも困った様子で返す

 

「俺が聞きたいですけど…とりあえず…たぶん…新しい家族かな?って思ってます」

 

スヤスヤと眠るその生き物を見て、完全にフリーズした渦巻は。

 

その後再び動き出すまで

 

約5分かかったとか。




読んで下さりありがとうございます。
イベントにて、セイリュウジンさんご本人より許諾も頂き、今後は瑠璃の面倒をちょくちょく見ていただくことになりました。
ご本人は引退なされましたが、二次創作の世界くらい、彼がこれからも活躍していく姿を描いていけたらと思ってます。

また宜しければ読んで下さい。
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