雷鳥 の 瑠璃紫苑 -らいちょう の るりしおん-   作:LeeMinwoo

9 / 9
【注意】
この物語については、パラレルワールド(並行世界)、マルチバース(多元宇宙)などを題材とした、クロスオーバーがメインとなる作品です。

関連するキャラクターは「ローカルヒーロー」がメインですが、ヒーローやヴィランは実在します。
しかし実在するヒーロー様や実在する団体様、公的機関や行政機関や企業様などにはなんの関係もございません。
先方へのお問い合わせはご遠慮頂き、もしご用命ございましたら作者までお問い合わせ下さい。

オリジナルキャラと他作品のキャラクター、流用設定等が登場します。
キャラの性格違い、解釈不一致、ご都合展開などが苦手な方はご遠慮下さい。

「ローカルヒーロー」がメインの作風ではありますが。
作中「ローカルヒーロー」と言う言葉が出ることはございません。
あくまでもこの世界では各地に点在する「ヒーロー」である事を予めご留意ください。

誤字脱字や駄文ご容赦ください。
誤字脱字はコメント欄にてお伝えいただき、ご教示頂けると幸いです。

以上の事をご理解頂いた方へ

お楽しみいただける事を深く祈ります。



第9羽 『鬼との対面』

 

 

今朝は天気が良い

 

けどところによりにわか雨が降るらしい

 

瑠璃と僕はいつもの様に庁舎の職員専用食堂で朝食を食べていた

 

今日のこんだては

 

トーストされたクロワッサンのたまごサンド

オニオングラタンスープ

オニオンリングとサラダ

オレンジソースのかかったヨーグルト

 

いつもは和食に近いけど、今日は洋食っぽいこんだてだった

これがモーニングセットと言うのだろうか?

 

いつも朝食を用意してくれてる厨房の職員さんが

食べ終えたら感想を聞かせて欲しいとも言ってた

好評だったらこういう路線も開拓するらしい

 

しっかりと味わう必要がある

 

サラダには火を通してほのかに飴色に変わった玉ねぎの炒め物が散りばめてある

このおかげでサラダ用のドレッシングがなくても一緒に食べれば、素朴な味わいの千切りキャベツとレタスも瑞々しさと一緒に甘みとコクが楽しめる

たまごサンドには薄くスライスした玉ねぎが挟んであった

何かで見たけど、スライスして水につけ置きすると臭みと辛みが抜けて、シャキシャキ食感の玉ねぎが出来るらしい

クロワッサンの甘みともイイ塩梅

 

スープは良く煮込まれた玉ねぎの旨味が溶け出てトロトロ

たぶんニンニクと一緒に焼いたベーコンなんだろうか、甘いスープにパンチの効いた味が絶妙

 

今日のこんだては産地直送の玉ねぎがふんだんに使われていた

火を通した玉ねぎの甘さは何よりも食欲をそそるって言うけど

僕にとってはそれは真実であり真理だなと思った

 

僕が感想をまとめながら端末を叩きつつ片手間で食べている時

瑠璃が窓から見える空模様を見ながら口を開いた

 

「食べたら今日は少し早めに特訓かな」

 

僕は今回1番のお気に入りであるスープを飲み、カップを置き端末を叩く

 

〈天気予報だと昼前から降るらしいね〉

 

そう打ち込んで天気予報を表示させて液晶を瑠璃に向けた

 

「夜まで降るのか…今日は自主練の日だし、降り出したら終わりでいいよね?」

 

表記された事を軽く読んで瑠璃はそう言った

 

特段雨に打たれても、僕らにとってはそんなに問題はない

ないのだけど…大きな別問題がある

 

服が濡れる

 

ずぶ濡れになると

 

職員のみんなから十人十色の反応を向けられる

 

びっくりする人もいるし

 

心配する人もいる

 

怒ってくる人もいるし

 

中には何故か眼を輝かせる人や泣き出す人もいる

 

ちなみに怒ってくる人の代表格は

 

市長秘書の『愛宕屋』さんだ

 

普段愛宕屋さんは物腰が柔らかく、僕らに丁寧な言葉で接してくれるけど

 

一度怒ると

 

それはそれは想像できないくらいに言動、行動、印象の全部が荒くなる

 

アレが“般若の形相”というモノだろうか

 

庁舎内では有名な話だったけど

 

初めてあの姿を見た時は

 

驚きすぎて涙が止まらなかった事を覚えてる…

 

感情の行きどころに迷うと生き物は泣くらしいと、学んだ瞬間だった

 

「よし、ごちそうさま。先に行ってて、食器は僕が片付けておくから、すぐ追いかけるよ」

 

ほぼ同時に食事を終えた僕らだったが、瑠璃が先に僕のお盆と自分のお盆の食器を纏めてくれた

 

雨も降るし、時間を短縮したいのは共通認識だったようだ

 

〈ありがとう、先に行ってるよ〉

 

僕は瑠璃の好意に甘えて、先に訓練所に向かうことにした

 

 

⬜︎訓練所⬜︎

 

訓練所を使う時、僕らはいつも掃除から始まる

まずは目立つゴミや小石とかがないかを見る

 

今日は思ったより少ない

 

簡単な掃き掃除で済みそうだ

 

僕は持ってきた掃除道具から箒を掴む

 

ここは元々運動用広場で自由スペース

 

僕らがここに来るよりもうんと昔は、職員が休憩時間にボール遊びをしたりお昼を食べたりと賑わってたらしいけど

 

今ではほとんど使われなくなったから、僕らの専用訓練所にカスタマイズされている

 

僕は掃き掃除をしてから準備運動をして瑠璃を待つ事にした

 

端末からいつものように好きな音楽を流そうとしたその時だった

 

「ほぉ、お前が噂の異業種のガキ言うやつか?」

 

僕は咄嗟に声の方に全身を向けて構えた

 

そこには大柄で

 

まるでお伽話やゲームの中で見た様な“鬼”が立っていた

 

それもいつの間にか

 

すぐ僕の側に

 

気配らしい気配は感じられなかった

 

大きな赤い眼を光らせて

下顎から収まり切らず口元から迫り出している牙

その顔を覆う様に狼の様な顔が被り物の様に覆って

鮮やかで良く目につく立髪の様な長い髪を靡かせている

 

ロングコートに獣の毛皮があしらわれて、その毛並みは自然界の険しさを生きて延びてきた野生動物そのものの様に、着衣には思えない凄みを感じる

肩と腰のバックル部分には大きな狼の様な顔

額には雷-いかづち-の様にギザギザした角を生やして

両腕は左右非対称で、左腕にはくないが装備されている

右半身はまるで“青い炎が結晶化”したかの様に、それらは凝縮されて閉じ込められた様に淡く光りが揺らめいて見える

 

一目でただモノじゃないとわかる相手の接近に

 

僕は一切…気付けなかった

 

「おいどうした坊主、いぶせく……って言うても伝わらんか」

 

いぶせく?なんだその言葉(´・ω・)

 

「怖くて声も出んか?」

 

怖くて……そうか!(´⊙ω⊙`)今のは方言だったのか!

 

いや、問題はそこじゃない!

 

相手は会話を必要としているんだ、ならそれに返さなきゃ

 

そう思い僕は懐にしまっていた携帯端末を出そうとした

 

その瞬間

 

僕は大きく後方に飛んで下がる事になった

 

僕がいた足元には、一本の“くない”が刺さっている

 

攻撃された

 

嫌な予感がして咄嗟に動いたけど

 

投擲する動作も確認できなければ感じられなかった

 

左手にあったくない?

 

違う、くないは依然括り付けられたままだ

 

と言う事は、他にも隠し持ってると見た方がいい

 

けど、どうして攻撃されたんだ?

 

会話をしようと見せかけて油断を誘ったのか?

 

いや、どう考えても相手は僕より遥かに格上だ

最初からそのつもりなら僕は恐らく無事じゃないはず

 

だとしたら、何かの誤解?

 

「お、すまんなぁ坊主、スマホ出すつもりだったんか」

 

端末を握って警戒体制にある僕を見て鬼は僕にそう言って

両手をあげゆっくりと自分が投げたくないに近づき、拾い上げる

 

「懐に手を入れとったもんじゃけぇ、得物でも出す思うて、ついな」

 

鬼は深く僕にお辞儀をしてきた

きっと今のは本心だったんだろう

 

良かった、誤解だった

 

「んで?いつまでも黙られるとやり辛いでぇ。なんか言え」

 

鬼にそういわれたので

すぐさま僕は端末の提携文を出した

 

〈僕は喋れないのでこういう形で失礼します〉

 

鬼は一瞬ギョッとした表情を見せた気がした

けどすぐに豪快に笑ってきた

 

「なるほど!そう言うことか!変わっとるうえに面白い奴じゃ!」

 

ガハハハと豪快に笑う鬼

 

見た目にベストマッチ過ぎて、警戒を解けないでいた僕に対し、鬼は言ってきた

 

「誤解と解っても警戒を解かんなぁ満点じゃ。平和ボケしたこん世界には有望過ぎて、ちいと虐めとうなるな」

 

全身に寒気が走った

 

今の言葉は冗談なんかじゃない

 

煌々と赤く光っている大きな目の奥に、獲物を見つけた時の獣の様な眼孔がチラつく

 

ようやく実感した気がする

 

先生たちが言ってた通り、僕は

 

あらゆる状況や他者の機微を見極める事が

 

得意らしい

 

 

◇1週間前◇

⬜︎訓練所⬜︎

 

僕と瑠璃は各曜日毎にヒーローの皆さんに特訓を受けている

 

月曜日はガリヤーさん

火曜日はセイ兄さん

水曜日は先生

木曜日と金曜日はエンガイザーの3人でローテーション

 

もちろん多忙を極める皆さんがスケジュール通りに指導してくれるわけじゃない

 

困難な時はお休みとなっているけど、僕と瑠璃はだいたい自主練に費やしている

 

この日は、パラディンさんと武器を扱う特訓の延長で、武器に纏わる講習を受けていた日だった

 

「2人に聞くぞ」

 

パラディンさんは僕らを交互に見ながらそう言って来た

 

「盾とはなんだ?」

 

????(´・ω・)

 

なんだ?とは…なんだろう…

 

思わず瑠璃と顔を見合わせてしまったが

 

瑠璃も困惑していた

 

僕らが困惑している表情から悟ったのか、パラディンさんは続けた

 

「聞き方が悪かったな、すまん」

 

そう言ってパラディンさんは専用武器のタイタンシールドを取り出した

 

パラディンさんの戦闘スタイルは盾と片手剣を駆使している

攻撃、防御ともにバランスが良く、ゲームやファンタジーなんかでも良く見る戦法だけど

パラディンさんのそれは

攻防一体そのものと言っても良いくらい

どこまでが防御で何処までが攻撃なのかわからない

 

「もっかい聞き直すぞ。瑠璃」

 

今度は名指しをして来た

 

瑠璃はビクッと背筋を伸ばし直す

 

「盾は“武器”か、それとも“防具”か」

 

「え……防具?…でしょうか」

 

瑠璃の答えを聞いて、パラディンさんは頷く

 

「まぁ…そうだな」

 

ん?何か引っ掛かる言い方だ…違うのだろうか

 

普通に考えれば盾とは装備品の中でも防御に特化した防具

 

それは間違いないはず

 

間違いないはずなのに

 

パラディンさんの態度が気になった

 

それと同時に

 

僕も疑問に思った

 

盾とは何か…か

 

「翡翠、お前はどう思う?」

 

やっぱり、そりゃ聞いてくるよね

 

セオリー的に考えれば、ここは武器と応えるべきなんだろうけど…たぶんこれは

 

答えじゃない

 

と言う事は他に答えがあるはず

 

良く考えよう

 

何か意図があるはずだ

 

防具?

武器?

それとも……

 

パラディンさんは……あ

 

そうか!

 

パラディンさんは“盾“は”何か“を聞いてるんじゃなくて

”盾“の”運用方法“にちいついて聞いてるのかもしれない

 

だとしたら

 

僕は思いついた“パラディンさんに合わせた答え”を端末に叩いた

 

〈両方です〉

 

「え?」

 

瑠璃は僕の答えに「それってあり?」って表情を向けた

 

僕は顔を向けて、少し頷いてみせた

 

たぶんこれが求められている答えだ

 

………

 

沈黙が続く…

 

……………

 

……え(´・ω・`)

 

……………

 

あれ…僕、間違えた?

 

と思った瞬間

 

パラディンさんが噴き出し

 

口とお腹を押さえながら震え出した

 

けど一呼吸おいた後、すぐに整えて応えてくれた

 

「正解だ」

 

やった!(`・ω・´)

 

パラディンさんの持っている“答え”に対し、うまく“応えた”みたいだ

 

「すごいよ翡翠!よくわかったね!」

 

ふぅとため息をついた僕に、瑠璃は目を輝かせて来た

 

僕は端末を叩いた

 

〈ヤマが当たっただけだよ〉

 

「嘘つけ」

 

僕に対しパラディンさんは詰め寄りながら言ってきた

 

「お前は賢い、それも異常なほどだ、なんでそうなってるかは知らないが、それはお前の技能だ」

 

僕の、技能?

 

「翡翠、お前は俺の意地悪な問いに対し、俺と言う人物像を読み取った上で答えを出した。違うか?」

 

パラディンさんはそう言いながら、鋭く睨みつけてくる

 

大概の人たちは僕からすればみんな大きいけど

 

いつもの倍

 

いや、それ以上にパラディンさんが大きく見える

 

僕は端末で返事をしようとしたが、プレッシャーのせいか手が震えてしまい、端末を落としてしまった

 

拾おうかとも思ったけど

 

睨む眼光はますます凄みを増すばかりで

 

僕は両目をグッと瞑って

 

何度もブンブンと首を縦に振って見せた

 

「よし、そうだよな」

 

有無を言わせない状況だったけど、パラディンさんの見解は正しいと思う

 

たしかにさっき僕は、相手を見て、今までの相手の言動と行動を思い出し、それを基に答えを導き出した

 

パラディンさんは圧を解いて、僕に目線を合わせるように前屈みになった

 

「翡翠、お前のそれは、今後お前自身が生きていく上で必要不可欠になる」

 

そう言い終えたパラディンさんは、その場で姿勢を正して、後方に向けて叫んだ

 

「そうだろ!!ミントリガー!!」

 

先生の名前?

 

疑問に思った直後、頭上から白い影が降り立った

 

ミントリガー先生

 

戸籍上は僕らの兄ではあるけど、僕らが日々を過ごすために細やかにたくさんの事を教えてくれる

 

生活に必要な事

基礎的な文字や読み書き

もちろん専門的な分野に差し掛かったら

【鳥獣保護研究所】通称“鳥保研-ちょうほけん-”の渦巻さんに勉強を教えてもらっているけど

普段の生活は大半が先生と一緒なので、人間社会でのルールとか

キャンプなどを通して、自然界のルールやサバイバル術など

僕と瑠璃の面倒を良く見てくれている

 

それも相まって、瑠璃は彼を“兄”ではなく“先生”と呼んでいるんだとか

 

第一印象では僕の世界にもいた“守護者”と同様“そういう役割の存在”だと思ってた節もあって

それ以降、僕も同じく「先生」と呼んでいる

 

まぁ実際は

 

瑠璃と僕自信が”先生呼び“に憧れ的なモノがあるってのがあるんだけど

 

「わざわざ呼ばなくても良かっただろ」

 

深くため息混じりに先生はパラディンさんに言った

ちょっと呆れているらしい

 

「おめぇが言ったんだろうが「こいつらの、特に翡翠の素養と才能を見定めてくれ」って」

 

僕らの、特に僕の素養?

 

「そんな仰々しく言ったつもりないぞ?」

 

「だいたいそんなニュアンスだって事だよ、真面目かっ。あ!てんめっ耳塞ぐんじゃねぇ!!」

 

圧をかけてくるパラディンさんに対して分かりやすく顔ごと眼を背けて耳を塞いでみせてたが

先生はその体制のまますぐにパラディンさんに聞いた

 

「それで?どうだったんだ」

 

「なんだよその白々しい感じは」

 

「パラディン」

 

「わーったよ、ちゃんと言うよ」

 

これだから真面目な奴は 

と小声で悪態をついたパラディンさんに対し、先生は少しムッとした表情だった

 

「お前の言った通りだ。瑠璃は直感力に優れて、驚異的な瞬発力と異常な程順応性が高い。俺達鳥類種特有の目の良さもあって、視野も広い。問題点は状況把握と判断力だが…それはこっからなんとかすりゃいいだけだろ」

 

パラディンさんは瑠璃の現状を先生に伝えた

 

どうやら先生はパラディンさんに僕らの総合評価をしてもらったらしい

 

「次に翡翠だが、俊敏さはピカイチだ」

 

次は僕の番か…緊張する…

 

「小柄なだけあってそれを活かした立ち回りをよく分かってる。その上、空間把握能力がずば抜けて良いもんだから、一定の条件を満たせば敵なしだろう。難点は、搦手に頼りがちなところと決定打に欠ける程ひ弱ってとこだな」

 

驚いた

 

ひ弱だということは自分も気づいていた

それを補うために、相手を観察して状況と環境を把握して立ち回り

隙をついたり、もしくは作ったり

そういう戦い方を確率させていたから、僕自身の短所は僕が良く認識していた

 

けど

 

長所があった事には純粋に驚いたし

 

嬉しい(*´-`)

 

「だからお前の見立ては間違ってねぇ。それを素に今後の教育方針も固まるんじゃないか?」

 

教育方針?

 

話の流れ的に、今後の僕と瑠璃の訓練方法についてかな?

 

「パラディン、お前の率直な意見を聞かせてくれ。もちろん2人にもわかるようにな」

 

先生がそう言った途端、パラディンさんは嬉々とした表情を作り語り出した

 

「まずコイツらに最も足りないのは“実戦と実践経験”と“生存戦略”だ。今後はこれらを重点的に鍛える」

 

そう言ってパラディンさんは次に瑠璃を指差した

 

「まず瑠璃、お前はひたすら実戦だ。今までは怪我しない程度で留めていたが、今後はそうはいかない。目標は“恐怖の中でも臆さず、しかし恐怖に慣れず忘れずに立ち向かえる程度”だ。言ってる意味わかんねぇだろ?」

 

瑠璃は真剣な顔で聞いていたけど、反射的に

 

「はいっ!……あ…」

 

と答えたため、軽くパラディンさんに笑われながら鼻先を小突かれる

 

そこに次いで先生が瑠璃にこう言った

 

「瑠璃は考えるよりも身体で覚えた方がいいから、ひたすらその身に感じるんだ。その経験値はお前の頭に蓄積されて、忘れられない記憶になるだろう。記憶はお前にとって徐々に知識に変わる、それを鍛える訓練だと思え」

 

瑠璃は先生の言葉を聞いて、なんとなく内容に納得できたらしい

 

「簡単な話し、お前は動いて動いて足りない部分を補うところからが勝負だ、いいな?」

 

「はいっ!」

 

パラディンさんの言葉に瑠璃は元気よく返した

 

次いでパラディンさんが僕に向かって言った

 

「翡翠、さっきも言ったが、お前の賢さは異常だ。お前がさっきまでやってた一連の流れや人物像から答えを導き出す方法についてだが。それは“プロファイリング”って言ってだな、様々な分野で活用される手法だ」

 

プロファイリング?

 

僕は端末を叩いた

 

〈様々な分野って 例えばどういう分野で活用されるのでしょうか?〉

 

その質問に対し、パラディンさんではなく、先生が答えてくれた

 

「主に知られてるのは…たぶん。犯罪心理学とかの分野で集めた情報を素に、推論を立てて犯人像を割り出し、事件を解決に導く捜査方法の一つだ。他にもビジネスなどで、市場の優位を取るために情報を集めて精査して、利益を得るための作戦と戦略を建てる。とかかな」

 

 

 

 

………(´・ω・`)

 

 

 

 

 

ん!?(´⊙ω⊙`)

 

 

 

 

 

予想してたのとだいぶ違うくらい、どうやら複雑な分野だった事に僕は驚きを隠せなかった

 

普段からよく

 

「人のこと言えないけど、翡翠は表情が乏しいから、感情が読み取りにくいね」

 

と瑠璃に言われたけど

 

どうやら今回に限っては

 

「翡翠!しっかりするんだ!一旦目を閉じて!!目が飛び出そうだよ!!戻らなくなるよ!!!」

 

凄い勢いで驚きが顔に出ていたらしい

 

けど戻らなくなるは言い過ぎだろ

 

僕は表情を素に戻した

 

それを見た瑠璃は、ホッとした表情をしている

 

そうこうしてたら、パラディンさんが僕の頭に手を置いて言ってきた

 

「お前にとっては特別感のない事だろうがな、お前がしてた事は普通じゃ“あんまり”考えられないんだ」

 

“あんまり”を強調して来たところを察するに

 

それだけ“普通”よりライン越えをした事を、僕はしてたのかもしれないと

 

心に受け止める事にした

 

僕は端末を叩いて、パラディンさんが言ってた事に対し質問した

 

〈では僕は、これからその素養と技能を活かす方向でいいのでしょうか?〉

 

パラディンさんは一瞬で嫌そうな表情を作る

 

今度こそ僕は何か失言してしまったのだろうか

 

難しい…(´ω`)

 

「かしこ過ぎるのも問題だし、端末から聞こえるお前の言葉はクソほど丁寧すぎて気味が悪いな…」

 

シンプルな悪口に聞こえる(´・ω・`)

 

「誤解すんなよ、悪口のつもりで言ってねぇからな」

 

心読まれてるのかな?(・᷄д・᷅ ;)

 

ちょっと不安になったけど、パラディンさんは僕の目の前に屈んで僕の顔をじっくり見ながらこう言ってきた

 

「お前はまず年相応の言葉遣いを学んだ方がいいかもな」

 

そう言いながらパラディンさんは僕の頭を軽くポンポンしてくれた

 

年相応の言葉遣いって…どう言うアレだろうか…

これまた難しい事を言うなぁパラディンさんは

 

「気にすんな、お前の言う通りだ。その技能はな“いつ”“どんな瞬間”でもお前にとって大きな助けになる。それを俺たちとお前自身で焦らずじっくり伸ばして行く。だからお前はただひたすら、めんどいだろうが特訓に付き合ってやってるんだってスタンスをキープしといて、その他は全部今を楽しめ」

 

パラディンさんはそう言って、笑いながら僕の頭を撫でてくれる

 

乱暴だけど、そこには間違いない優しさと思いやりがある

それが僕の知ってる

 

エンガイザー・パラディンさん

 

僕らの先生の1人だ

 

 

◇現在◇

⬜︎訓練所⬜︎

 

そして今僕は

 

自分の力量を遥かに超える相手を目の前にして

 

状況の分析をしながら、次にどう動くかを模索していた

 

「まぁ、なんだ」

 

鬼は口を開いた

 

「とりあえず3回、躱してみせー」

 

僕は前方へ跳んだ

それと同時に、とてつもない衝撃と破砕音が鳴り

何か強い力に押されたように僕は飛び込んだ先の3倍近い距離に受け身をとって、前転する様に転がる

 

嘘だろ?

 

さっきまで間違いなく目の前にいたはずだ

 

なのに

 

真後ろから

 

しかも耳元から声がした

 

それに…なんだあれは…

 

鬼を中心に、推定半径3mはある凹みが出来ている

まるでそこに隕石が落ちて、クレーターが出来たかの様になっている

 

「惚けてる暇あるんか?」

 

今度は右から!?

 

僕は咄嗟に左へ跳んだ

そしてなんとか見えた

 

僕がいた地面目掛けて、鬼が拳を打ちつけて

さっきと同じ衝撃音と破砕音が鳴る

 

そしてまた何かに押された、いや、正確には飛ばされた…

この感覚は…この衝撃波だったのか…

 

僕は姿勢を正して、思い切り両手を地につけて、飛ばされた勢いを削いだ

 

手のひらが若干ひりつく…擦れたみたいだ

 

僕は鬼を視界に入れて、可能な限り死角となる範囲に注意した

 

おそらく左右、もしくはそこから後ろに回ってまた現れるかも

目で追えるのかわからないけど

少しでも動きを見せた時がチャンス

 

次は僕から

 

「敵を前にして考え事?そがいなんじゃ生きていけんぞ」

 

!?

 

嘘だろ!あり得ない!

 

距離にして7mくらいはあったはず

 

それなのに…この鬼はどうやって僕に手が届く範囲まで距離を積めたんだ

 

それも目の前だぞ!!

 

あまりに驚いていたせいで

 

僕は鬼の攻撃に反応しきれず、振り下ろされる拳をただ見つめていた

 

直撃する瞬間

 

僕は左へ何かに引っ張られる

 

「翡翠!大丈夫!?」

 

瑠璃!!(°Д°)

 

僕を抱えて瑠璃がさっきの攻撃の中から救い出された

 

助かった…

 

10m以上は鬼との距離を離せた今、僕は端末を叩いた

 

〈誰かはわからないけど突然襲われた〉

 

「は!?それってどういう」

 

「お?なんじゃ、もう1匹おったんか」

 

嘘だろ!?鬼がまた距離を詰めて3mくらいの場所に立ってる!!

 

僕と瑠璃は鬼を見ながら後方へと下がり、訓練所の広場から離れた林道へと入り、さっきよりも長い距離を稼ぎ2人して低い体勢を維持した

 

さっきまでの広場とは違って木が遮っているけど、ある程度向かってくるルートは絞り込まれる

 

僕は端末の音声機能を消して文字を打ち込み瑠璃の目の前に出した

 

〈尋常じゃない相手だ、僕らの手に負える相手じゃない、一旦このまま牽制しながら距離を取るんだ〉

 

「そう…だね」

 

瑠璃は歯切れ悪く鬼の方をじっと見つめる

 

「そがい逃げんでもええじゃろ」

 

鬼はゆっくりと僕らに近づいてくる

 

いつ距離を詰めらるかわかったもんじゃないけど、良い機会だ

 

しっかりこの目で見定めてやる!(`・ω・´)

 

そう思った矢先だ

 

「そういやあだ」

 

また後ろから声!?

 

僕は一時も目を離してない!実際目の前に鬼はいる!

 

視界の端で瑠璃が狼狽えた顔をしてる

 

間違いなく僕らの背後にいるんだ、鬼が

 

「自己紹介せにゃあなぁ〜」

 

そう言った途端、僕の目に映っていた鬼の姿は、霧の様に消え

僕は恐る恐る後ろに目を向ける

 

「俺は『獣鬼忍 炎狼鬼-じゅうきじん えんろうき- 』じゃ、広島からきた…」

 

鬼はゆっくりと腕組みの態勢になり言葉を続けた

 

「“怪人”じゃ」

 

この世界には【ヒーロー】と言う存在がいる。

 

僕らを拾ってくれた恩師であり

戸籍上の僕らの兄でもある

『鳥戦士ミントリガー』先生と

その相棒の『鳥戦士ヴィーク』兄さんはヒーローをしている

 

ヒーローは人々を護り

町を守り

平和を害する対敵

【ヴィラン】と戦う

 

ヴィランは色々といる

 

秘密結社やカルト集団などとして活動し、人々に害をなすほど危険な存在に分類される団体の

【悪の組織】

 

外界、主に異世界や宇宙から来て、そこに住む全ての日常を奪う【侵略者】もしくは【略奪者】

 

存在自体が不明瞭だけど、私利私欲で僕らとは違うステージの倫理観理を持ち、理に反する行動で害をなす存在

【悪神-あくしん-】

 

【怪人】はそれらのヴィランが産み出し、作り出し、属する存在

もしくは“自然発生”した存在もいたりと多様だらしい

 

中でも絶対覚えておく様に言われた【要注意存在】の1体

 

そんな“存在”が“今”目の前で大きな赤い目の光を、燃え盛る炎の様に揺らめさせながら

僕らを見下ろしている

 

「えん…ろうき……うそ…でしょ?」

 

瑠璃が言葉を詰まらせながら言った

今の状況の危険性と異様さに気付いたんだ

無理もない…

 

【獣鬼忍 炎狼鬼-じゅうきじん えんろうき-】

『暗黒神カオス』によって生み出された【獣魔忍-じゅうまじん-】という怪人だったらしいけど、そこから離反して

所謂“抜け忍”扱いとされているらしい

今でも刺客に追われながら、方々に出向き“果たし合い”と称して暴れ回る

 

そんな彼を表す象徴的な呼び名

 

“史上最強最悪の獣人”

“特級危険指定獣人”

“不死身の魔人”

“ヒーロー狩り”

“ヒーロー狩り狩り”

“魔人狩り”

 

他にもたくさんあげたらキリがない、まるで悪いジョークみたいな称号が連なる程

そんな、この世界じゃ誰しもが知る存在が

 

僕らをじっと見てこう言った

 

「早速じゃ坊主共、俺と“遊ぼう”や」

 




ご無沙汰しております。

おそらくもう読んでくださってる方はいらっしゃらない気がしなくもないですが、書き留めた物語を無駄にしたくないので、またこうやって綴って行きたいと思いました。

読んでくださる事を祈ってます。
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