気になる方は前作を見てみてね
(処女作なので色々と無茶してました。)
中央鎮守府
横須賀の内側、東京湾の中に構えられていることから、その名前が付けられた大本営の施設内にある、元帥が提督をする鎮守府。
大本営とは敷地が分けられており、大きくも小さくもない鎮守府だが、工廠は少し広く、艦隊支援、演習、輸送援護など、出撃ではなく裏方を目的として建てられている。
入渠施設の開放や、艤装の修繕も行っており、大規模作戦中においては、安全かつ迅速に傷を癒す、『艦娘の隠れ家』とも言われている。
そんな鎮守府だが、他の鎮守府では行っていないことが2つある。
1つは工作艦『明石』の研修。
全鎮守府に必ず配備される、アイテム屋娘と言われ、購買と工廠の仕事をする艦娘である明石だが、その知識と工作艦としての腕を上げるために研修が行われている。
しかし、昨今の大規模作戦において、改装により工作艦へと艦種が変化する『朝日』の出現報告が出ているため、明石だけでなく、朝日の研修も視野に入れている。
もう1つは艤装の完全改修である。
これは通常の艤装改修とは違い、艦娘の力を100%引き出すようにする改修で、これが行えるのは中央鎮守府だけ。
さらに、いくつもの審査を通して許可を得た者のみとなっている。
本来なら、此処で詳細を説明するのだが…。どうやら、その許可を得た者が中央鎮守府に赴いたようだ。
これからの話は物語を通して、彼女たちの目線で伝えることにしよう。
さぁ、一度閉じた物語の幕を開こう。
設定を少し弄り、新しく生まれ変わった宝者たちの物語をッ!
「だ~か~ら~!何度も言わなくたっていいだろッ!この改修が凄いってことも、危険だってことも、この2週間散々聞かせられたってッ!」
「何度も言わないと理解しない輩がいたから、こうやって耳に
鎮守府内に響く2人の大声。
片方は、紫短髪の眼帯に対してノースリーブの巨乳という、「カッコいい」と「我が儘ボディ」を併せ持つ艦娘『天龍』改二。
もう1人は、ピンク髪の腰回りを露出したスカートを履いている、通称「アイテム屋娘」の明石。
この2人が話しているのは、現在改修中の天龍の艤装についてだ。
「散々聞かされたけどよ、そんなに守らないやつがいたのか?力使い過ぎたら体が壊れるんだろ?俺なら絶対嫌だね。」
「貴方はまだ理解がある人だから良いんですよ。この説明も本来なら
「えぇ…。お前も苦労しているんだな。」
「工廠長に比べたらまだマシです。使う時は退くことが許されない命を懸ける時だって何度も説明したのに、200人以上が退役した責任を取らされかけたんですから。」
「200人以上も⁉なんでそんなになるんだよ。」
「色々あったんですよ。これ以上は言えない内容が多いので伏せますが、それを理解した上で…。」
明石が急に黙り、立ち止まった。
何故止まったのか気になった天龍は、明石の目線の先を見る。
工廠の目の前にある桟橋の入り口に、白いビーチチェアとパラソルがあった。
歩いていくと、白い髪の150㎝あるか分からない人が、アロハシャツに白の短パン、サングラスと麦わら帽子を装備し、手を頭の後ろで組みながら足を組み、くつろいでいた。
その横には机があり、ワイングラスに入った青のトロピカルジュースと皿に盛りつけられた果物が置かれていた。
「なあ、明石。ここって鎮守府だよな。」
「はい。間違いなく中央鎮守府の敷地内で、既に目的の工廠前ですが。」
「じゃあなんで子供が鎮守府いて、ビーチみたいに満喫してるんだよ。今、秋だぞ?」
「あの人は子供じゃないですよ。後、あの格好になっているのは、仕事のせいで潰れた夏を満喫するための一時的な娯楽です。天龍さんの艤装改修は夏休み明けにする予定でしたが、それ以前の仕事で潰れたので、ここ2か月ぐらいは休んでないかと。」
「休ませてやれよ。」
「天龍さんの艤装仕事が終わったので、今がその休みですよ。」
明石がそう言いながら、白髪の人物の元に近づいていく。
何かを話し、嫌そうにしながらもトボトボと天龍の近くまで歩いてやってくる。
少女のような見た目の白い肌の人物は、欠伸をしながら赤い目で天龍を睨み、早く眠りたいと訴えるように、口が緩んでいた。
「工廠長、お客様ですよ。いつも通りにちゃんとしてください。」
「いいじゃんか~。チェックは終わったし、後は明石が渡すだけだったのに~。現実に戻さないでよ…ZZZ」
「起きてください!ちゃんと渡すところまでが仕事です!この改修する人みんなが悪い人じゃないって、何度も言っているじゃないですか!」
「それで何度も休暇中に凸って来たじゃん!僕はやりたいようにやることやって休むんだ〜!」
「我儘を言わないでください!仮にもここの代表でしょー!」
「…なんだこれ?」
目の前で見せられるアニメのような一部始終に、天龍は戸惑うばかりである。
この後、天龍は数十分もの間、ここの艦娘である鳳翔がやってくるまで、この2人のやり取りを見せられ続けた。
「美味〜(´ω`)」
「も~。子供じゃないんですから、綺麗に食べてください。」
あのグダグダの後、天龍の艤装を確認し、天龍自身は内なる何かを感じることが出来たため、自分の鎮守府に帰ろうとしたところ、昼食に誘われた。
食堂はショッピングモールのように広く、100人以上は簡単に座れるように見える。
その中で、キッチンの目の前にあるカウンターに誘導され、3人で横並びに座り、食事をすることになった。
「少しぐらい甘えてもいいのに。いつも無理ばかりするのは、あの人譲りですね。天龍さん、お味はどうですか?」
「最高ですよ、鳳翔さん!うちの鳳翔さんとは違った味なのに、安心する味で落ち着きます。でも、俺も頂いちゃって良かったんですか?今日はこれだけの予定だったから、お金持ってきてないのに。」
「良いんですよ、中央鎮守府は来る者拒まず。食堂だけは一般の方にも開放していますし、艦娘には無料提供です。艦娘の食費は案を出した元帥のポケットマネーですから、気にしないでたくさん食べてくださいね。」
「それを聞いたら、遠慮しちゃいますよ。」
食堂で料理をしているのは、軽空母であり、空母の母と呼ばれる『鳳翔』。基本は給料艦である『間宮』や『伊良湖』が料理をしているが、鎮守府によっては提督が作ることや、鳳翔の様に出撃する艦娘が料理をしたりする。
天龍の鎮守府でも鳳翔が料理をしているが、艦娘でも個人差があるようで、味が違う事に驚きながらも、安心する味に満足していた。
「ところで、工廠長って何者なんですか?子供っぽいけど、俺の艤装を改修したのは間違いないし。」
「この世には、知らない方が良いこともありますよ。」
「え、それってどういう…。」
どういうことか、と聞こうとした天龍だったが、食堂の扉が良くない音をたてながら開いた。
両開きの大きな扉だが、右側の扉は外れて倒れ、左は少し凹んでいる。
そこに居たのはサングラスとマスクで顔を隠し、特徴のある髪色をした黒いセーラー服の少女たちだった。
その手には艦娘が扱う艤装とは違い、グローブやバールのようなものを持っていた。
「おらッ!全員手を上げろ!金目のものと食料を寄越しなッ!」
「なんだ、こいつら⁈」
「最近、色々な場所で悪さをしている白露型の子たちですね。強盗、侵入、恐喝、嫌がらせなど、数多くの鎮守府の任務に障害を出しています。元々は白露型10人でしたが、更正して離れたことで数が減り、4人になりました。しかし、それでも活動を続けていたようですね。」
「そんな奴らが、なんでこんなところにいるんだ?」
「さっきも言いましたが、此処は来る者拒まず、ですよ。あんな子悪党でも、入ることを拒むことはありません。ここに用があると言えば、基本的に通されます。」
そう言って、鳳翔は白露型の艦娘たちの近くに歩いていく。
「『白露』、『時雨』、『夕立』、『涼風』ですか。白露型の中でも特に戦闘において癖の強い子が残りましたね。食事でしたらお出ししますが、武器を向けている以上、そんなつもりもなさそうですね。」
「言っただろう。金目のものと食料があれば十分だ。殺されたくなければ、大人しく手を上げろッ!」
「僕たちも、できれば手荒な真似はしたくないんだ。大人しくして欲しいな。」
「はぁ、私も年ですかね?どうしても、最近の若い子たちの考えが分かりません。
「はぁ?何言ってやが「ポイッ!」ッ!どうした夕立!」
白露が振り返ると、涙を浮かべながら床に座り込み、何かに怯えるように体を小刻みに震わせている夕立の姿があった。
いつも耳のように跳ね上がっている髪は、怒られた犬の耳のように垂れ、持っている武器を落としてしまうほど恐怖している。
「お前ッ!夕立に何をした⁉」
「あら、躾のなってないワンちゃんをお座りさせただけですよ。いい子にしないなら、貴方もお座りしますか?」
「ッ!この野郎!」
鳳翔へ殴りにかかる白露と、それに続くように走り出す時雨と涼風。
だが、その前に工廠長と明石の2人が立ち塞がる。
「鳳翔さん、後は私たちがやりますので、お下がりください。…手加減はしてくださいよ。」
「大丈夫、久々だけど加減は覚えているさ。でも、僕のリラックスタイムを邪魔した罪は重いよ。明石は時雨を頼むよ。残り2人は僕がやる。」
「2人とも、食堂を壊さないようにお願いしますね。天龍さん、少し下がりますよ。」
「お、おう…。」
「2人でどうにかできると思っているのかい?ずいぶん舐められたものだね!」
「舐めているのは君達の方だ。後、残念ながら2人じゃないよ。2人と1匹さ!来い、『ルクル』!」
工廠長は右手を前に出して指で何かの形を作ると、足元の影が大きく動いて涼風に向かうと、中から蛇のような何かが現れ、涼風の体に噛みついた。
「なにすんだ!うわぁ!」
涼風は噛まれたまま影の中に飲み込まれてしまった。
「涼風!」
「妹の事を思うのは良い事だけど、まずは自分の事を心配しなさい!」
「しまったッ!」
「吹き飛びなさい!飛燕連脚ッ!」
「うわぁ!」
「え?ポイィィッ!」
明石は時雨の前で飛んで左足による蹴りをいれると、その勢いで体を回転させて右足の踵で追撃する。
涼風の身を心配して隙を作ってしまい、強烈な蹴りを入れられた時雨は勢いに負けて後方に吹き飛ばされ、夕立を巻き込んで外まで飛んでいった。
「クソッ!この野郎ぉぉぉぉッ!」
「吠えるな、犬!豚箱で反省してこいッ!ハァッ!」
「グハッ!」
工廠長は殴り掛かる白露の攻撃を、体を低くすることで躱し、白露の体に両手による張り手を撃ち込んだ。
その勢いは凄まじく、時雨と夕立が倒れている場所より遠くまで飛び、そのまま海の上まで飛んで落ちた。
すぐさま水揚げされた白露と共に、時雨、夕立、影から解放された涼風は縄で縛られ、憲兵に突き出されて連行された。
それを見送った後、天龍は工廠長に先ほどの戦闘で気になった事を聞いた。
「なあ、工廠長。さっきあんたが呼んだ蛇みたいなやつの事について、聞きたいことがある。」
「…言いたいことは分かる。君は、既に戦ったことがあるんだね。だから、この子の事を知っていてもおかしくはない。」
工廠長が手で形を作ると、先ほど「ルクル」と呼ばれた蛇のような生物が、再び工廠長の影から姿を現した。
ルクルは工廠長に甘えるように、体を摺り寄せている。
「そいつとは1度だけ戦ったことがある。圧倒的な火力に航空戦も雷撃も対潜能力も備わった、姫級以上に厄介な深海棲艦。そいつの名前は…。」
「『戦艦レ級』。こうした方が分かり易いかな?」
そう言って指を鳴らすと、さっきまでの南国衣装から黒いフード付きのコートにマフラー、黒いビキニという衣装に、ルクルが尻尾のようについている。
「本当にレ級なんだな。鳳翔さんが言った知らない方が良いことって、こういうことだったのか。」
「まあ、そう言うことさ。この姿を表立って見せることはできないからね。それで、どうするんだい?此処で僕を沈めるかい?」
「…いや、できないだろうし、するつもりもない。明石が言えない内容っていうのも、話を聞かない連中がいることの理由もよく分かったからな。俺は今日見たあんたを信じるさ。」
「じゃあ、僕の事は秘密にしておいてくれるかい?勿論君のところの提督にも。」
「ああ、もちろんだ。」
工廠長が再び指を鳴らして元の服装に戻ると、2人は握手を交わした。
お互いがお互いを信頼した証として、挨拶でするような握手ではなく、数十秒にわたる握手をした。
「そう言えば、君に自己紹介をしていなかったね。いつまでも工廠長じゃ、呼びづらいだろう?」
「確かにそうだけど、名前があるのか?俺はてっきりレ級呼びかと思っていたんだが。」
「僕にもちゃんと名前があるのさ。何もなかった僕に与えられた最初の贈り物がね。」
何か意味ありげな言葉を言いながら、工廠長は自己紹介をした。
「僕の名前は『ユキ』。中央鎮守府の工廠長をしているレ級さ。これからよろしくお願いするよ。」
天龍に向けるのは満面の笑み。
その子供のような明るい笑顔に、天龍の顔も緩くなり笑顔になった。
中央鎮守府の工廠長、復活です。
書きたかったから書いたので、次回をいつ書くのかは未定。
前作で書いたかは忘れたけど、オカンは普通の艦娘より強いです。
天龍は多分どこかでまた出るさ。
日常系も書けたら書こうと思ってる。
多分うーちゃんが悪さするから。