中央鎮守府の工廠長 Re. Tales   作:猫神瀬笈

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書きたいときに書くのが一番


第2話 とある1日

 

ピピピッ、ピピピッ

カチッ。

 

 朝を告げるアラームがなり、そのアラームを止める。

 少し肌寒くなってきたこの頃、少し厚めの布団に変えたことにより、温もりという魔力に体が縛られる。

 その縛りを無くすためにイヤホンをつけ、布団の中で体を動かす。

 音楽をテンポの速い曲にすることで脳を目覚めさせ、ストレッチをすることで体を目覚めさせる。

 次第に体が熱を帯び、布団の魔力をはじき飛ばして完全に目覚めると、起き上がって窓のカーテンを思いっきり開く。

 

 

「んー!今日の天気も良好か。今日は明石だけで済む内容しかないから、スペアの確認と弁当作りだけしてゆっくりするか。ああ、朝の弁当も作らないとね。」

 

 

 今日の予定をざっくりと決め、弁当作りの準備とお腹を満たすため、ユキは寝巻きのまま食堂へと向かった。

 黒猫の着ぐるみパジャマ(尻尾付き)で。

 

 

「完成した料理からどんどん運んでください!お客様はまだまだ沢山いらっしゃいますよ!」

「急いで!キッチンも席も詰まってるから!」

「完成したから、これ持っていってー!」

「〇番テーブルの方、お待たせしました!」

 

 

 中央鎮守府の食堂は朝から忙しい。

 中央鎮守府所属の艦娘だけではなく、大本営の職員や朝から仕事に行く一般人で100以上ある席はすぐに埋まってしまう。

 キッチンも通常の2、3倍の広さと機材の量があり、鳳翔と数人の料理人が忙しく動き、手の空いている艦娘が配膳を行っているが、それでも追いつかないぐらいだ。

 

 そんなキッチンの奥の方では、いくつもの料理が同時進行で進められていた。

 それを行っているのはユキであり、出来上がった物から箱に詰めて食堂の端に重ねると料理に戻る。

 料理→箱詰め→配置→料理というループがそこに出来上がっており、全てにおいて無駄がなく、円滑に回していた。

 重ねられた箱は、食堂の入り口の横にある窓の近くに置かれ、そこにいる艦娘から窓の前にいる行列へと渡されていく。

 

 

「お待たせしました!日替わり弁当、販売開始です!」

 

 

 そこには『中央鎮守府 日替わり弁当』と書かれた看板が置かれており、『数量限定30個・1人1つ・700円』と少し高めの値段で売られていた。

 だが、それを求めている人も多く、ユキが30個分の弁当を全て作り終えてからたった数分で売り切れた。

 弁当の販売が終わると弁当を渡していた艦娘は配膳へ向かい、ユキは料理の手伝いに向かった。

 すると、鳳翔が料理をしながらユキの方を見ずに声を掛ける。

 

 

「ユキちゃん!今から20人分作れる?」

 

「作れるよ、誰の料理?」

 

「赤城と加賀がいつもより早く来ているの。他のお客様に迷惑が掛からないように、急いで10人前ずつ大盛りで!」

 

「了解!」

 

 

 手の空いたユキが料理に取り掛かる。

 相手は鎮守府における主力であり、この食堂における1番の問題児。一航戦の『赤城』『加賀』

 艦娘の中でも戦艦を凌ぐほどの食事量の2人で、数日で一般家庭における1か月分の食事量を上回る。

 特に酷かったのは最初の頃、料理に時間が掛かった事で他の客の料理を見て涎を垂らし、仕舞には客が水を取りに席を立った時に料理を食い尽くしたという事件も起こしている。

 一度、鳳翔によって叩きのめされたことで、前よりは自重するようにはなった。

 しかし、また同じようなことを起こされる可能性もあるため、なるべく早く提供するようにしている。

 特にユキがいる時には、赤城達を優先して作ってもらうようにしているのだ。

 そうこうしているうちに赤城と加賀の料理が完成したため料理を運ぶ、

 

 

「お待たせしました、お二人専用の料理です。」

「待ってました!加賀さん、早く食べて向かいましょう!」

「ええ。私も気分を高揚させたまま行きたいので、急ぎましょう。」

 

 

 急ぎながら、楽しみながら食事をする2人によって、机に乗った10人前の大盛りは10分、いや5分と掛からず胃袋へと消えていった。

 2人の顔は何故かツヤツヤしたように見え、今晩の料理を豪勢にという依頼をしてから食堂を飛び出していった。

 

 

 

 数時間戦場と化していた食堂は、かなり落ち着いた。

 ほとんどの人、艦娘が仕事へと向かい、今食堂にいるのは遅めの朝食や夜の仕事終わりに食事をする人たちのみ。

 さっきの半分以下の人数になったため、鳳翔と料理人たちだけで回せるようになり、ユキは自分の朝食を作ってゆっくりと食べていた。

 黄身がトロッと垂れる半熟の目玉焼きと、良い感じに焦げ目の付いた硬すぎないベーコンを、バターを塗ったトーストの上に乗せて食べる。

 

 

「ん~、食パンのサイズが少し大きすぎたかな?食べ応えがあるから4でもいいけど、やっぱり6か8ぐらいが丁度いいかな。」

 

 

 トーストの厚みについて振り返りながら朝食を食べ続け、食後には定期的に家から送られてくる粉を電気サイフォンで淹れたブラックコーヒーを飲みながら、鎮守府で無料配布されている青葉新聞を読む。

 

 

「最近になって強盗とかの犯罪が増えてきたな。鎮守府だと大きな問題は起きてないっぽいから、まだ大丈夫だろうけど、あいつの行動に気をつけないとな。それに…」

 

 

 ユキが読んでいる青葉新聞。

 これは艦娘の『青葉』が作成した、鎮守府の一日やお出かけする艦娘用の広告が載っていたりする。

 その中にある一つの記事を気にしながら新聞を読んでいると…

 

 

「ぽいっ?」

 

「ん?どうした夕立、此処に居るのは珍しいな。」

 

「今日は出撃が無いから退屈っぽい~。五月雨は秘書艦のお仕事だし、時雨は出撃したし、江風は補習、村雨は海風と山風を連れてお出かけしたっぽい。だから遊んで~。」

 

「白露はどうした?あいつも今日は休みだろ?」

 

「過保護すぎて楽しく遊べないッぽい……。」

 

 

 ユキの膝の上に顔を擦って上目遣いで甘えている夕立は、ここを襲ってきた夕立ではなく中央鎮守府に所属している夕立だ。

 甘える時は素直に甘えるため、夕立の頭や顔を撫でたり、髪を梳いたりするのがユキにとっての日常になっている。

 こうやって甘えに来る艦娘は夕立の他にも多く、中央鎮守府にいる艦娘はユキがレ級であることを知っているため、艦種関係なく1度は甘えに来るのだが、これがユキにとっては朝のコミュニケーションの場になり、新聞だけでは分からない鎮守府の状況をこうやって聞くことができるため、Win-Winの関係が成り立っているのだ。

 そんな甘える夕立に、ユキはある提案をする。

 

 

「退屈なら艤装を見に来るかい?今日はスペアの確認しかやることが無いから、普段見られない艤装が色々見られるよ。」

 

「ん~。退屈だから行くっぽい!」

 

「それじゃあ少し待ってね、片付けがあるから。」

 

 

 コーヒーを飲み終わったユキはキッチンの奥へと戻り、使った食器や器具を丁寧に洗い片付けてから夕立と共に食堂を後にした。

 

 

 

 工廠の中では明石が艤装の点検をし、その周りで多くの妖精さんたちが手伝いをしたり、遊んだり、眠ったりしていた。

 集中している明石の邪魔にならないように、静かに後ろを通って工廠の奥へと向かう。

 

 

「わぁ~、初めて見たっぽい。これ全部が艤装?」

 

「そうだよ。夕立が改二になった記念に渡した艤装も、この中から良い物を選んだんだよ。」

 

 

 そこには多くの艤装が、物流センターの倉庫のようにズラッと並んでいた。

 中には『☆5』『☆M』と掛かれた札が付けられた艤装もあった。

 

 

「ユキさん、あの星と数字の札は何?」

 

「あれは改修値だよ。数字は回収した回数で、Mはその艤装の最大改修を示しているんだ。5以上で大きく変わってくるから1~4は存在しないよ。」

 

「細かい数値は計らないっぽい?」

 

「純粋に場所が無いだけさ。艤装の数も増えたから、1艤装20スペアを置くスペースがなくってね。最新の艤装はスペア無しで最大改修を目指して、それ以外は10~20のスペアを用意する方針にしてる。時雨が改三になって持ってきた電探や機銃とかが前者だね。」

 

「へぇ~、そうなんだ。こんだけ多かったら、盗まれたときに気づけない気がするっぽい。」

 

「その辺は対策済みさ。それに僕と明石が確認し合っているからね。今日もそれが目的で来たんだよ。」

 

 

 そう言うとユキは近くに掛けられていたバインダーとペンを持って、艤装を数えて紙に記していく。

 ここにある艤装は改修されていることで、通常の他の艤装よりも威力が高い。

 しかし、改修には資材と対応する艤装が山ほど必要になるため、そう簡単に回収を行うことも入手することはできない。

 夕立が言うように此処から盗まれる可能性もあるが、ユキには対策があると言う。

 

 

「よし、個数に変動なし。まあ、盗めるものなら盗んでみろって話だけどね。」

 

「それで入られたら笑い事じゃないっぽい…。」

 

「ははは、大丈夫だよ。仮にそんな奴がいるなら、死んだ方がマシだと思うぐらいには思考が残るぐらいに残酷な事をしてやるから。」

 

「ポイッ!」

 

「な~んてね。冗談だから泣かないで、ほら。」

 

「ぽい~、ユキさんのバカ~」

 

 

 ユキの言葉とその時の表情に恐怖を感じ、蛇に睨まれた蛙のように体が動かなくなって涙を流した夕立を、申し訳なさそうに撫でる。

 工廠を後にしようとしたが、夕立に抱きしめられたユキは動くことができない。

 何故なら、夕立の身長はユキの身長よりも10センチ以上高く、ユキ自身も抱きしめることを許しているからだ。 

 少し大きなぬいぐるみを抱いている、ぐらいの感覚になるだろうか?

 そう言う理由もあり、ユキは大人しく抱かれていたが、夕立が泣き疲れて眠ってしまったため、お姫様抱っこをして部屋までお届けすることにした。

 ついでというわけではないが、ちょうど部屋で夕立がいなくて発狂していた白露がいたため、過保護だということを本人に伝えて(説教して)、工廠の方へと戻っていった。

 

 

 

 工廠の奥の、そのまた奥へ向かうユキ。

 そこにある頑丈な扉を開き、中に入って扉を閉めると地下深くに繋がる階段を下りていく。

 螺旋状の長い階段を下りた先にあるのは、研究室のような枝分かれした長廊下と大小様々な部屋。

 そのうちの一室に入ったユキは、そこにあるパソコンを起動させると、何かを打ち込み始めた。

 一般人が見れば何を打ち込んでいるのか分からない、数字と英語の羅列が画面いっぱいに広がっていく。

 

 

「試運転とはいえ、母さんたちを超えるのは難しいだろうな。でも、強さを母さんたちに合わせると明石じゃあ倒せるか分からないから、明日か明後日にテストプレイしてもらうか。」

 

 

 独り言を言いながら、何度か口元に手を置いて「んー」と唸りながらも、直ぐに手を動かして作業を続ける。

 すると妖精さんたちが扉を開けてやってきて、お茶やお菓子をユキの邪魔にならないところに置いた。

 

 

「ありがとう。今日は完成前までもっていきたいから、無理をしないように集中して頑張ろう。タイムストッパーもよろしくね。」

 

「(`・ω・´)ゞビシッ!」

 

 

 妖精さんたちは敬礼をすると、その内2人は何かを話し合いながらキーボードを触り、残りはパソコンの中へと入り、画面上でヘルメットをかぶって作業を始めた。

 ユキはその様子を見ながら、自分の作業を続ける。

 画面に映し出される文字の羅列は、映画のスタッフロールのように下から上へと直ぐに消えていく。

 集中して打ち込み続けたユキは、きりが良くなったため作業を止めた。

 

 

「ふーッ、これで8割完成か。後は明石にテストして…いや、僕もテストしておこう。試運転とは言え何が起きるか分からないからね。妖精さんたちもありがとう、そろそろ終わろう。」

 

「(∩´∀`)∩」

 

「そっちもいい感じだね。予定通りにいけば暇つぶしと実践訓練を併用できるし、いつもの訓練だけだと満足できない子たちにもいい刺激になりそうだ。」

 

 

 そう納得してパソコンの電源を落としたユキは、妖精たちと一緒に部屋を後にする。

 降りてきた階段とは反対の方向に向かい、長い廊下を歩いてたどり着いたのは、少し大きめのエレベーターの前だった。

 このエレベーターは中央鎮守府に繋がっており、今いる施設からは上り方向のみで使うことができる。

 普通に利用する人が間違えて下りないように、誰も入っていない時は優先的に乗ることができ、ボタンも1~3と地下へと下りられない設定になっているのだ。

 乗って少しするとエレベーターは1階へと到着し、ユキは目の前にある食堂へと入って行った。

 

 

 

 波の音が聞こえる静かな夜の時間。

 鉄と油のにおいが充満する暗闇の中、赤色の光が辺りを見渡しながら何かを物色する音が響く。

 

 

「これで良し。」

 

「何が、これで良しなんだ?」

 

「ッ!」

 

 

 不意に辺りが光に照らされ、この空間の全てが露わとなった。

 艤装だらけの空間の中で対峙するのは、入り口で立っているレ級の姿のユキと()()()()()()()()だった。

 

 

「この工廠から艤装を盗むなんて、馬鹿な奴もいたもんだね。」

 

「ユキさん、なんでここに…。」

 

「ここは僕にとっての家でもあるんだ。セキュリティを張り巡らせたこの鎮守府で馬鹿な奴の行動に気づかないはずがないだろう?それと、夕立のフリをするのはもう止めたら?」

 

「な、何を言ってるッポイ!夕立はただ、この艤装で試し打ちを…」

 

「この鎮守府だと特別な許可が無い限り、夜戦演習は不可能なのは艦娘全員が知っていることだ。それと君は誤魔化してるつもりだろうけど、夕立の語尾は『ポイ』じゃなくて『ぽい』だし、普段は恥ずかしくて言わないけど、プライベートで僕といる時は『ユキお姉ちゃん』って呼ぶんだよ。」

 

 

 ユキがそう言った瞬間、夕立の姿が揺らいで全身黒タイツの男へと姿を変え、ユキに拳銃を向ける。

 

 

「チッ!お前らそう言う仲か!」

 

「嘘だよ!」

 

「グワッ!離せッ!」

 

 

 銃の引き金に指が掛かる前に、どこからか現れた赤い布によって男の体は拘束され、芋虫のような状態になった。

 藻掻いても赤い布を剥がすことができない男を、ユキは見下しながら話始める。

 

 

「まあ、100嘘ではないね。白露に悪戯をする時はそう呼ぶのさ。変装するならもう少し勉強しようね、裏社会のお兄さん。」

 

「…ッ⁈どこで俺の事を知った⁉」

 

「君のことは知っているよ。うちの奴が色々と情報を仕入れちゃうからね。姿を変えることができるスーツの存在と裏社会の君たちの事は、特にチェックして警戒しているんだよ。」

 

 

 ユキが夕立にかまう前に新聞を見て気にしていた記事というのが、目の前にいる男の情報だった。

 鎮守府の外で発生していた連続強盗事件で犯人が防犯カメラに写っていたのだが、そこに映っていた顔の人物が学校で勉強中の生徒や仕事中の社会人といった、完璧なアリバイがある人物ばかり映っていたのだ。

 また、それと同じ時期に裏社会で人に化けるスーツの情報も出回っていた。

 その情報が鎮守府に仕入れられて新聞に載っていたため、いつ鎮守府が狙われても大丈夫なようにチェックしていたのだ。

 

 

「平和ボケしているせいか、最近になって悪党が増え始めてね。みんな同じタイミングでやろうとするから、この鎮守府にとってはありがたいんだよ。セキュリティの効力や実践を積むには、君たちのような奴を相手にするのが色々と都合がいいからね。」

 

「クソッ!まさかあのレ級が鎮守府にいるとはな。だがいいのか?俺は今この瞬間も裏社会の奴に情報を流している。大本営の傍にある鎮守府に深海棲艦がいると世間に知れ渡れば、どうなるか分かるだろう?」

 

「ああ、昔の事を知らない馬鹿が騒ぐだけさ。それと、此処のセキュリティは僕の自作でね。君が得た情報は、この工廠の外に出ることはないよ。」

 

「…どういうことだ。」

 

「君の通信は、工廠のセキュリティが中継して相手に送っているんだ。だから、ジャミングも情報の改ざんもハッキングも簡単でね。特別に繋げてあげるよ、向こうの通信をね。」

 

 

 ユキが指を鳴らすと、男の耳にある通信機が壊れそうな音を上げて通信を繋げた。

 

 

『ぎゃあああ!』

 

『ボス!早くにg…』

 

『クソッ!どこから狙って…うわあああ!腕が!う…』

 

『どうしてこうなッ…』

 

『嫌だ!死にたくな…』

 

 

 聞こえるのは阿鼻叫喚と何かが壊れていく音。

 泣き叫び、死を恐れ、絶命していく声が耳元で鳴り響くことで、男に払うことのできない恐怖を刻んでいく。

 男は次第に涙を流し、壊れたように言葉を繰り返しだした。

 

 

「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない…」

 

 

そんな男に対して、ユキは氷のように冷たい声を発する。

 

 

「この鎮守府は全てを受け入れるが、敵対する者に容赦はしない。特に艦娘に手を出す奴と家族を傷つける奴はな。」

 

「ひぃぃぃッ!」

 

「絶望と後悔の念を抱きながら死んで行け。」

 

「ひぎゃああああ!」

 

 

 男は悲鳴を上げる。目の前に見える存在から溢れ出す、謎のオーラが作る化け物を目の当たりにしたことで、恐怖で水たまりを作って意識を手放した。

 その姿を見たユキはスマホを取り出し、誰かに連絡をする。

 

 

『予定通り上手くいったかい?』

 

「ああ、完璧だったよ。いい悲鳴がこっちまで聞こえてきた。そっちはどうだった?」

 

『鍛錬不足、予定より2発無駄にした。』

 

「珍しいな。まあ、いつもみたいに組手の鍛錬しかしてないんだろう?」

 

『それもある。今回は弾の性質の理解に遅れたのもあったけどな。幻覚弾とかヤバすぎだろ。』

 

「殺さないのはそれぐらいが丁度いいのさ。こっちの奴は恐怖で漏らしたけどね。」

 

『絶対喰らいたくないな。とりあえずあたいの仕事は終わったから、今から舞鶴方面にでも行くよ。気が向いたら帰るって、さみ姉に伝えといてくれ。』

 

「分かった。ああ、夕立にも連絡してあげてくれ。今日は寂しくて甘えてきたからさ。」

 

『了解。じゃあまたな。座標は後で送っとくよ。』

 

 

 電話が終わるとユキがどこかに行き、猫車を持って帰ってくると、目の前にいる男を乗せて外へと向かった。

 そのまま大本営の敷地内にある施設の中で、最も中央鎮守府に近い位置に設置されている憲兵寮へと運び、事情を説明して身柄を引き渡した。

 憲兵もユキの事を知っているため、事情を伝えるだけで話は終わった。

 後に、メールで送られた座標に憲兵と警察が向かうと、顔を涙でぐちゃぐちゃにした男たちと、強盗された品が山積みされていた。

 これが証拠となり、鎮守府で捕まった男と共に彼らは警察に捕まった。

 そこからの繋がりも追われているらしく、中央鎮守府近辺から少しずつ鎮圧されていくだろう。

 ユキは赤い布を洗いながら、これからの事を考えていた。

 

 

「鎮圧は完璧にはいかない。必ずどこかに綻びができる。そろそろセキュリティも見直すべきか。明日は…艤装のメンテナンスだから明後日にセキュリティを見直そう。」

 

 

 そう独り言を零しながら、眠る時間になるまで布を洗っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……こちら吹雪ッ!川内さんと神通さんが大破!夕立ちゃんが中破で航行不能!敵艦、敵艦載機多数!至急応援をッ!』

 

 

 




鎮守府内では誰も触れなかったけど、
夕食までユキちゃんは着ぐるみ猫パジャマです。

赤い布は「男絶対縛る」布さんで
幻覚弾は適当に考えたやばいやつ。


最期は不穏な空気が、が、が……。
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