あれから数日後、ユキは駆逐達と遊んでいた。
作業は気持ちよく行うことが出来たため、前日に仕事が早く終わり、半日休みが一日休みへと変わったのだ。
本当はゆっくりしたり、調整の続きをしたいと思っていたのだが、このチャンスを逃すまいと、駆逐達に遊ぼうと誘われたのだ。
それにより午前中は駆逐達に引っ張りだこ。
いろんな遊びに連れまわされたり、一緒におやつのケーキを作ったりしていたことで、昼食の時間までは解放されなかった。
昼食の時間を過ぎると、駆逐達はおやつを楽しみにしながら、自分たちの任務へと向かっていった。
残っていた駆逐達も鎮守府の手伝いに向かったため、残っているのはピンク髪の兎の髪留めをした少女、『卯月』だけだった、
「ユキさぁ~ん。うーちゃん退屈ぴょ~ん。」
「退屈と言われてもね…。あ、なら少し遊びを兼ねた実験に付き合ってくれないか?」
「遊びを兼ねた実験?」
ユキにそう言われ、疑問に思う卯月。
何をするか分からないまま、いつも運動をしている広場で待っていると、ユキが何かを持ってきた。
「お待たせ、卯月。これの実験に付き合ってほしいんだ。」
「これって、『
ユキが持ってきたのは決闘盤。
カードゲームアニメ『
アニメの様に召喚やセットができ、キャラクターの声を聴くことが出来るが、このデュエルディスクはユキが作ったほぼ本物である。
つまり、ソリッドビジョンシステムが採用されており、決闘者にとって喉から手が出るほど欲しいものが出来上がったのだ。
「そうだよ。原作の様に使えるか試してほしいんだ。カードもいくつか原作の物を作ったから、それもお願いしたい。丁度、卯月の使う昆虫族デッキだからね。」
「それなら、うーちゃんでもできそう。協力するぴょん。買ったらご褒美貰うぴょん!」
「仕方ないな。なら、買ったら僕が作ったケーキを食べさせてあげるよ。負けたらどうする?」
「う、うーちゃんのケーキ……、睦月型全員のケーキを上げるぴょん!」
「ちなみに許可は?」
「もらってないぴょん!」
「だろうね。その辺は後で考えようか。」
ユキはデュエルディスクとデッキを渡し、装着具合とデッキの確認をしてもらう。
ちなみに、ユキの決闘盤は『初期型』だが、卯月に渡した決闘盤は『子供用』に調整された小型。
決闘盤は全てのデザインを作っているが、基本同じ大きさのため、子供用のサイズも確かめるために渡している。
デッキの方はユキが全てのカードを知っているため、ユキが使うデッキを卯月に見せてから、お互いにシャッフルして距離を取る。
構えると、デュエルディスクが展開、デッキをセットし、お互いにカードを5枚引く。
「行くよ、卯月。」
「いつでも行けるぴょん!」
「「決闘!」」
卯月:LP4000
ユキ:LP4000
Turn1
こうしてユキと卯月の決闘が始まった。
あくまで実験のため、使われるカードは初代のカードプール*1にしている。
つまり、先行の卯月が出すカードも当然初期のカードとなる。
「うーちゃんのターン、ドロー!『
ATK:500
現れたのは触手の生えた蛆虫で、アニメでは後半に現れる強力な効果を備えているモンスター。
その能力は…。
「アニメみたいに現れたぴょん!これは楽しくなるのは間違いなし。『速攻の吸血蛆』でユキさんにダイレクトアタック!
このゲームにおいて、先行1ターン目の攻撃は許されていない。*2
しかしこのカードは、そのルールを無視し、先行1ターンでも攻撃ができる能力を持っている。
その攻撃で、身体全身を使った体当たりを食らい、ユキは後ろへと倒れる。
「いてぇ」ユキ:LP3500
「おお、早く他のモンスターも出したいぴょん!『吸血蛆』のさらなる効果で、手札を2枚捨てることで守備表示に変更し、カードを2枚伏せて、ターンエンドぴょん。」
DEF:1200
カードの裏面が地面の上に現れる。
アニメの様に現れるモンスターやカードに興奮する卯月。
その姿に微笑みながら、今度はユキがカードをドローする。
卯月:4000 hand1 伏せ2
ユキ:3500 hand5
Turn2
「僕のターン、ドロー。僕は『
『翻弄するエルフの剣士』で『速攻の吸血蛆』を攻撃!」
ATK:1400
現れた鎧を身につけたエルフが、手に持った剣で攻撃を仕掛ける。
しかし、卯月は悪い顔をする。
「そう簡単にやらせないぴょん!罠カード発動『
この効果で出すのは『パラサイト・キャタピラー』!」
ATK:700
「げッ!めんどくさ!」
現れた芋虫のようなモンスターは、エルフの攻撃によって破壊されるが、光となってエルフの体に入り込む。
すると、エルフの体から、虫の体のような物が出てきた。
「このカードは戦闘ダメージを0にするぴょん。そして破壊されたことにより、さらなる効果が発動。エルフの剣士は、
「くそ~。アニメみたいに準ハイランダー構築*3にしてるのに、全く同じコンボをしてくるなんてね。僕はカードを2枚伏せてターンエンド。」
卯月LP:4000 hand1 伏せ1
ユキLP:3500 hand3 伏せ2
Turn3
「うーちゃんのターン!『フェロモンワスプ』を攻撃表示で召喚して、ユキさんにダイレクトアタックぴょん!」
ATK:800
尻尾が芋虫のような変な虫が出現し、ユキのお腹に突進をする。
「グッ!」ユキ:LP2700
「ダイレクトアタックが決まったことで、『フェロモンワスプ』の効果が発動!デッキからレベル4以下の昆虫族を特殊召喚するぴょん!呼び出すのは『ゴキボール』。」
ATK:1200
銀色の真ん丸としたダンゴムシのようなモンスターが現れる。
こんな見た目だが、やつはGである。
「ダイレクトアタックぴょん!」
そのGが、ユキに向かって体当たりをする。
しかし、ユキもやられっぱなしではない。
「甘いぞ、卯月!リバースカードオープン!罠カード『攻撃誘導アーマー』!」
「ぴょん⁉そのカードはまさか!」
「そう、呪いのアーマーを装備されたモンスターに攻撃が誘導される。そして、その対象となるのは、『フェロモンワスプ』だ!」
ユキの宣言と同時に、『フェロモンワスプ』にアーマーが装着される。
すると、ユキに向かっている『ゴキボール』が空中で止まり、進路を変更して『フェロモンワスプ』へと向かい、体当たりで粉砕する。
「ぴょッ!」卯月LP:3600
「焦るなよ、決闘はまだ始まったばかりだぜ。」
「でも、うーちゃんの優勢に変わりはないぴょん。ターンを終了するぴょん。」
卯月LP:3600 hand0 伏せ1
ユキLP:2700 hand3 伏せ1
Turn4
「僕のターン!一気に攻めるよ。」
「ッ!」
「僕は『鉄の騎士 ギアフリード』を召喚し、魔法カード『高速解除』を発動。
拘束具の鎧を脱ぎ捨て、その真の姿を表せ!デッキより現れろ!
『剣聖ーネイキッドギアフリード』!」
ATK:2600
真っ黒な騎士の鎧が分解し、中から髪の長い手に包帯を巻いた筋肉質の男が現れた。
登場するだけで凄まじい圧を感じ、卯月はちょっと震えた。
「さらに装備魔法『伝説の剣』を装備させる。これにより『ネイキッドギアフリード』の特殊効果が発動!『ゴキボール』を破壊!」
ギアフリードが伝説の剣を一振りすると、Gは細切れになり消滅した。
「うぎゃー!うーちゃんのモンスターが!」
「ネイキッドギアフリードでダイレクトアタック!」
ATK:2900
「ぴょん゛!」卯月LP:700
(リバースカードを発動しない?攻撃反応系ではないのか?)
ユキは卯月の伏せカードが、何であれ攻める予定だったが、発動しなかったことに困惑した。
最初から伏せられている謎のカード。
デッキの内容は、卯月の性格に合わせて嫌がらせをするデッキにしているため、罠もたくさんある。
しかし、いくら内容を把握していても、そのうちの1枚を断定するのはできないため、これ以上考えるのを止めた。
「僕はこれでターンエンド。」
卯月LP:700 hand1 伏せ1
ユキLP:2700 hand1 伏せ1
Turn5
「うーちゃんのターン。このカード⁉逆転の兆しが見えたぴょん!」
「⁉」
「手札から魔法カード『天使の施し』を発動するぴょん!デッキからカードを3枚引いて2枚捨てるぴょん。」
「この土壇場で『天使の施し』を引いたのか⁉」
『天使の施し』は、このゲームにおける禁止カードであり、公式の大会では1枚も使うことができないカード。
名前を聞くだけで「ダメだろ!」と言われるほどの超強力カードだが、この決闘ではアニメ1期のカードが使用できるため、条件に当てはまっている。
「さらに罠カード『堕天使の施し』を発動し、このターン捨てたカードを手札に加えるぴょん!」
「くっ、施しコンボか!」
卯月の手札が2枚から4枚になる。
「さらに手札から『強欲な壺』を発動。デッキからカードを2枚ドローするぴょん!」
『強欲な壺』は『天使の施し』と同じく、禁止カードに指定されている超強力カードであり、コスト無しでカードを2枚引けるのだ。
これにより、卯月の手札は5枚になった。
「なんて引きの良さ…。まずいな、完全に流れが卯月に向かっている!」
「その通りぴょん!さらにモンスターをセット、さらに、永続魔法『虫除けバリアー』を発動、カードを3枚伏せてターンを終了するぴょん。」
卯月LP:700 hand0 伏せ3
ユキLP:2700 hand1 伏せ1
Turn5
「僕のターン、ドロー!」
(あの伏せモンスターは間違いなく『速攻の吸血蛆』だ。だから無視して良い。警戒するべきは3枚のリバースカード。)
ライフが有利とは言え、昆虫族はトリッキーな動きをするデッキ、油断はできない。
すでに自分の場には、寄生されている『翻弄するエルフの剣士』もいるうえに、あのデッキに眠っている、
簡単にこの状況をひっくり返す力があるが、1つだけ疑問に思う事があった。
(卯月のリバースカードは、本当に全て罠なのか?でも、ずる賢いあいつの事だ。あの3枚ブラフという可能性もある。)
悩んでいるが、ユキの手札にはこの状況を変えるカードは無い。
迷うだけ無駄だと考え、ユキは攻撃を仕掛ける。
「『ネイキッドギアフリード』で伏せモンスターを攻撃!」
「伏せカードを警戒しなかったのは悪手だぴょん!永続罠カード『DNA改造手術』を発動して、フィールドのモンスターを全て昆虫族に変えるぴょん!」
「くっ…。」
『ギアフリード』は『エルフの剣士』までひどくはないが、同じように身体が寄生され、虫の一部が外に飛び出した。
しかし、ここまではユキの予想通り。
このまま何も無ければ…。
「僕はこれでターンを終了する。」
卯月LP:700 hand0 伏せ2
ユキLP:2700 hand2 伏せ1
Turn6
「うーちゃんのターン!リバースカードを発動するぴょん!」
「来るか⁈あのカードが!」
「速攻魔法『スケープゴート』!羊トークンを4体、フィールドに出すぴょん!」
DEF:0
「何のつもりだ?」
『スケープゴート』は攻守0の羊を4体だし、プレーヤーを守る盾にするカード。
大型モンスターを出すための生贄にはできない。また、強力カードを使うためにはフィールドを開けなければならない。このタイミングで発動する理由が分からないのだ。
「焦る必要は無いぴょん。これはうーちゃんが勝つための準備だぴょん!」
「勝つための準備だと?」
「手札から魔法カード発動!『天よりの宝札』!互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにカードを引くぴょん!」
「何ぃ!インチキ効果も大概にしろ!」←作ってデッキに入れた人
このゲームにおける原作チートカード『天よりの宝札』。
こんなものが世に出たら、ゲームが崩壊するレベルだ。
空が急に明るくなり、2人のデッキに雫のような物が落ち、2人は6枚になるように引いた。
「今日のうーちゃんは運がいいぴょん!手札から速攻魔法『サイクロン』を発動!その伏せカードを破壊するぴょん!」
急に風が吹き、小さな竜巻となってユキの伏せカードを空へと運び、破壊する。
「しまった⁉『ミラーフォース』が破壊されたか!でも、卯月のフィールドには羊トークンが…。」
「ユキさんの引きが悪いお陰で、ブラフで伏せていたこのカードを発動するぴょん!魔法カード『トークン収穫祭』!フィールドの全トークンを破壊して、その数×800のLPを回復するぴょん!」
「ッ!破壊されるのは、卯月の場に出ている羊トークン4体、つまり!」
「LPを3200回復するぴょん!」
卯月LP:3900
「ほとんど元通り、か。」
羊トークンの上から大きな網が現れ、羊たちを捕まえると羊たちが消えた。それと同時に卯月のLPも大きく回復する。
卯月の引きの良さで、ほとんど最初の状態に戻ってしまった。
これでユキは再び劣勢となる。
「今度はこっちが攻める番!まずは『速攻の吸血蛆』を攻撃表示に変更して、
儀式魔法『ジャベリンビードルの契約』を発動。」
「儀式魔法⁈嫌な予感がするッ!」
「その予感は当たりぴょん!フィールドの『速攻の吸血蛆』と手札の『インセクト女王』を
儀式の生贄として発動!現れるぴょん!『ジャベリンビートル』!」
クワガタのような天秤が地面から現れ、『速攻の吸血蛆』と巨大なアリか蜂か分からない虫の姿をした『インセクト女王』がその上に現れると、2体が光に包まれる。
その光の中から巨大な藍色の装甲のクワガタが、袖がらみ*4のような黄色の武器を持っていた。
ATK:2450
「来やがったな、昆虫族唯一の儀式クワガタ野郎!でも、『ギアフリード』には届かないぞ!」
「届かせる必要は無いぴょん。『ギアフリード』は新たな女王様の苗床になるんだぴょん。」
「まさか、引いたのか⁈あのカードを‼」
ユキがそう言うと、卯月は1枚のカードを掲げる。すると、『ギアフリード』は
中で『ギアフリード』が藻掻いているのか、繭が何度も伸びたり凹んだりと暴れまわる。
しばらくすると、その勢いが収まった。
「動きが止まった。現れるのか…。」
「さあ、現れるぴょん!このデッキ最強の切り札!進化を遂げた女王様!『究極変異体・インセクト女王』を特殊召喚!」
卯月の言葉に反応するように、繭はどんどん膨れ上がり、中から先ほど生贄に捧げられたインセクト女王より大きな虫が現れた。
ATK:2800
「ユキさんのフィールドには寄生された『エルフの剣士』がいるのみ。女王様の攻撃で終わりぴょん。」
「くっ」
「行け!『究極変異体・インセクト女王』のダイレクトアタック!
『アルティメット・クイーンズ・ヘル・ブレス』!」
女王から放たれる巨大なブレスが、ユキのLPを削り取ろうと襲いかかる。
それに対してユキは、手札を1枚墓地に送った。
『クリクリー!』
「なっ!『クリボー』⁈という事は。」
「そうさ。クリボーを手札から墓地に送ることで、僕への戦闘ダメージを0にする。」
「なら、『ジャベリンビートル』でダイレクトアタック!」
「ぐわぁぁぁ!」ユキLP:250
「うーちゃんは、カードを1枚伏せてターンを終了するぴょん。そして、このエンドフェイズに『インセクト女王』の効果で『インセクトモンスタートークン』を特殊召喚するぴょん。」
DEF:100
卯月LP:3900 hand0 伏せ1
ユキLP:250 hand5 伏せ0
ユキに大きなダメージを与えたことで、卯月が圧倒的に有利となった。
吹き飛ばされたユキは、何とか体制を崩すことなく立つ。
「流石、この鎮守府で上位になるほどの実力者だ。でも、最後まで諦めないよ。僕の…」
「ユキさーん!大変にゃしー!」
「お姉ちゃんたちが来たぴょん。」
「どうかしたの?睦月、弥生。」
ユキたちのいる広場に走ってやってきたのは、卯月の姉である睦月と弥生。
滅多にない慌てようだが、2人は決闘盤を構えたまま話を聞く。
「今日の午前中に、ユキさんと一緒に作ったケーキが!」
「1ホール分、食べられていました。」
「何ッ!ちゃんと名前を書いた箱に入れて、共用の冷蔵庫に入れていたのに。」
「被害は睦月たちのところのケーキだけにゃ。ただ、ユキさんに聞きたいことがあって」
「何か気になった事が?」
「うん、睦月たちの横にユキさんの箱があったんだけど…。」
「ああ、あれは僕の買った奴だね。仕事が終わったら勉強のために味わう予定だったんだ。」
「…
「仕事が半分終わったら食べる予定だからね。それまで開けないようにしているんだ。」
ユキの言葉を聞いて2人は顔を見合わせる。
その顔は、驚きと焦りの表情へと変わっていた。
「どうしたんだ2人とも?まさか、間違えて食べたのか?」
「食べてないよ!ユキさんの物は勝手に触らないから。でも、気になって中を見ちゃって…。」
「中から、今日作ったのと同じものが出てきました。」
「ん?それはおかしいよ。今日作ったのはミルクレープだけど、僕が買ったのはイチゴのショートケーキだから。」
「「「………」」」
3人は沈黙する。
睦月たちとユキの情報が合わない。
しかし、すぐに気づいた。
「…僕のケーキを食べて、睦月たちのケーキと入れ替えた?」
ユキがそう言った瞬間、ユキの体から気が放たれる。
その姿は、まるで舞鶴の足柄が『第一 開門』を開いた時の様に。
「死にたいのは、どこのバカだ?」
「「ぴぃッ!」」
「ぴょぴょぴょぴょぴょッ!」
ユキの殺気に当てられた睦月たちはお互いを抱き合って震えており、さっきまで反応が無かった卯月は、バグったような反応を見せる。
ソリッドビジョンに砂嵐が出始める位、殺気を放つユキの決闘盤から通知音のような物が鳴り始める。
『マスター!殺気を収めください!大本営にいる者にまで影響が出ています。』
決闘盤から聞こえるのは『ガードナー』の声だ。ユキに殺気に気づき、止めに来たようだ。
「………ふぅーッ。すまない、少しイラついた。」
『それは少しとは言いません。大本営及び鎮守府の皆様には、私の方から説明をしております。あと少しで艦娘たちが出撃するところでした。』
「また鳳翔さんに怒られるな。」
『…元帥からも話があると連絡が来ました。』
「覚悟するか…。そうだ、ガードナー。ケーキの盗み食いをした馬鹿について調べられるか?」
『少しお待ちください。………鎮守府、食堂の防犯カメラの映像を確認中………判明。映像、転送します。』
ユキと卯月の間の空に映像が流れる。
そこには、食堂で働く鳳翔の姿があった。
『あら?調理用のお酒がありませんね。また隼鷹ちゃんが持っていったのかしら?今日はお部屋にいるわよね。どうしてくれようかしら?』
「鳳翔さん、怖い…。」
「睦月の寿命は、かなり縮んだにゃし~。ん?あれはうーちゃん?」
『天龍さんは駆逐艦使いが荒いぴょん!さっさと何か食べるぴょん…。おお、こんなところにケーキの箱が沢山あるぴょん。』
映像の中にいる卯月は目を光らせながらケーキの箱を取り、手が止まらないのか、
それに対し、今この場にいる卯月は、顔を真っ青にして絶望していた。すると、映像の中の卯月も、何かを発見して同じように絶望する。
それは箱に書かれていた『ユキ』という文字だった。
『マズイ…これ、ユキさんのやつ。バレたら殺されるぴょんッ!そ、そうだ!』
「あっ!うーちゃんがケーキを…。」
「入れ替えてる…。」
卯月が睦月型の箱のケーキをユキのケーキの箱の中に移し、周りを確認すると大急ぎで食堂を去っていく。その数十秒後に、アニメみたいなタンコブをした隼鷹を連れて、食堂へと戻ってきた。
映像はここで止まり、全員の目線が卯月へと向く。
ユキに関しては、獲物を狩る目をしており、卯月は命の危機を感じている。
「卯月、何か言い残すことはあるか?」
「は、反省してま~す、ぴょん。」
ユキの殺気が増す。
塵の一つも残さないと言わんばかりに。
「覚悟しろよ、この兎野郎!」
「ぴょんッ⁉」
「僕に勝てば、今回の件は不問にしてやる。ただし、負ければ罰ゲームを受けてもらう!」
「痛いのはごめんだぴょん‼脱兎の如くにげr」
「システム権限!code『闇のゲーム』起動!」
「うびゃーッ⁉足を固定されたぴょん‼完全に〇すつもりぴょんッ!」
「安心しろ、死にはしない。死ぬほど痛い目にあってもらうがな!」
ユキが決闘盤を構え、カードを引く。
Turn7
「僕のターン………ドロー。」
「で、でもこの瞬間、寄生していた『パラサイト・キャタピラー』の効果が発動。苗床を破って現れろ、『毒蝶―ポイズン・バタフライ』!」
ATK:2700
『エルフの剣士』の体から現れたのは、毒々しい巨大な蝶。
羽ばたくたびに毒の鱗粉を撒いている。
「『ポイズン・バタフライ』はコントロールプレイヤーのエンドフェイズに500のダメージを与えるぴょん。つまり、このターン中にうーちゃんを倒すか、回復をしないとユキさんの負けが確定するぴょん。」
卯月は焦っているが、内心安心している。場には2体の大型モンスター、しかも『究極変異体・インセクト女王』には、自身を含めた自軍の昆虫族を相手の効果の対象から外し、効果で破壊されない強力な効果を持つ。
いかに、このデッキを作ったユキと言えど、そう簡単に突破されることはない。さらに、このデュエル中は運があまり良くない様子。
卯月のデッキの様にユキのデッキにも入っている、一発逆転の強力な2枚のカードを引けるとは思っていない。
(うーちゃんの伏せカードは『魔法の筒』。いくら強力なモンスターでもこれで返り討ちぴょん。)
卯月は勝利を確信していた。
しかし、ユキの言葉に驚きを隠せなくなる。
「それがどうした?既にお前の負けは確定したんだよ。手札から速攻魔法を発動。『交差する魂』!」
「それは、2枚のうちの1枚!」
「この効果で女王以外の虫けらの魂を生贄に『神』を降臨させる。」
フィールドの虫たちの周りに風が吹き始め、悲鳴を上げながら光となって消えていく。そして、ユキの後ろの地面に亀裂が走る。
「すべてを粉砕する破壊神の姿、その目に焼き付けるがいい!降臨せよ『オベリスクの巨神兵』!」
ATK:4000
「オ、オベリスク…。」
「すごいのが出てきたにゃしーッ!」
「怖い…。」
地面を割って現れたのは、水色の体をした巨人
アニメでは主人公たちの味方として、時には敵として対峙した神のカード。
一部のカードの効果しか受け付けない、神の名に相応しい力を持つ。
その威圧感はソリッドビジョンだとしても、卯月の体全身を震わせるほど。
インセクト女王においては、完全に怯えている。
「『交差する魂』を使ったターン、神以外の効果は1度しか発動できない。だが、この1枚が、お前を絶望の
「まさか、もう1枚のカードを⁈」
「さあ、『オベリスク』よ。お前の真の姿を愚かな兎に見せてやれ!発動!『神の進化』!」
カードの発動と共に、『オベリスク』の体が光る。そして、雄たけびと共にその光は飛び散り、『オベリスク』の姿が変わる。
頭部の形が変わり、体全身は藍色へと変わり、巨大な体はさらなる巨大化を果たす。
さらに、威圧感は通常の『オベリスク』の比ではない。
その圧に、睦月と弥生は抱き合いながら気を失った。
「神祖となったオベリスクには、最上級のランクが与えられる。攻守を1000アップさせ、効果は無効化されない。そして、同ランクの神でなければ破壊されることはない。さあ、このデュエルの幕を引いてやろう。
行けッ!『オベリスク』‼この瞬間、『神の進化』の効果により、女王には消えてもらう!」
「女王様がーッ!で、でも、うーちゃんの勝ちに変わりはないぴょん!罠カードを発d『ブブーッ』どうしてリバースカードが発動しないぴょん⁈」
「忘れたか!神にトラップが通用しない!『オベリスク』の攻撃‼『ゴッド・ハンド・インパクト』ッ‼」
ATK:5000
「ぴょぉぉぉぉぉんッ!」
Game End
卯月LP:0
ユキLP:250
『オベリスク』の剛腕から放たれる攻撃は卯月に直撃、する寸前で止められた。
とどめとは言え、本気の『オベリスク』の攻撃を食らおうものなら、卯月の体が残っているかも分からない。
ユキが完全に怒りに飲まれていないのが幸いだった。
「さて、罰ゲームと行きたいところだけど…この状況が罰ゲームだね。」
「………」
卯月は立ったまま気絶していた。
白目をむき、足元には
この状態で放置され、どこかのカメラ持ちに写真を取られれば、いいネタになるだろう。
そう思ったユキは卯月の決闘盤だけを回収し、気絶している2人を抱いて鎮守府へと戻っていった。
「………というのが原因です。」
「はぁ、なるほどね。それで殺気と『オベリスク』になったと。でも、なんでそこまで怒ったの?
いつものユキちゃんなら、説教だけで終わるのに。」
元帥、咲がユキを呼び出し、事情を聴いているところだった。
殺気が駄々洩れで、鎮守府・大本営がパニックになったため、仕方がないだろう。
ユキは、正直に理由を話す。
「……あのケーキが来るのに2年待ったんだ。
ユキが怒っていたのは、ケーキの入手手段によるものだった。
鎮守府の近くに数年前にできた店で販売されている、有名なパティシエが作った予約限定の『ショートケーキ』
ユキは店ができて少ししてから予約したため、情報通の人たちから一歩遅れたタイミングでの予約となった。
約2年という時間を楽しみに待っていたユキ。
今予約しても手に入らない物だった。
そんな事を言われたら、咲も絶句してしまい、絞り出して出した言葉が…
「………ごめん。」
咲は強く言えなかった。
自分が同じ立場なら、いくら自分の艦娘とはいえ間違いなく拳を振るう己の姿が思い浮かんだからだ。
鳳翔にも事情を説明したが、咲と同じような反応をした。
鳳翔も、同じような姿が思い浮かんだようだった。
どう声をかけていいか分からず、ユキ自身は、食堂のカウンターで項垂れていた。
酒に酔っているわけでもなく、体調が悪い訳でもなく、ただただ項垂れていた。
まるでこの世の終わりと言わんばかりの絶望の顔。
食堂に人がいないぐらい遅くまで項垂れていた。
今此処に居るのは、ユキと鳳翔と提督と間宮、酒で酔いつぶれている呑み助たちだ。
動く気力すら失ったユキだったが、目の前にある物が置かれた。
「ッ⁈こ、これは!」
ユキの目の前に置かれたのは、卯月に食べられて無くなったはずの『ショートケーキ』。
見ただけで、映像で見た物と同じだと気づいた。
一体だれが置いたのかと体を起こすと、目の前には間宮が立っていた。
「間宮さん、これってもしかして。」
「私も勉強のために予約していたんですよ。偶々、ユキちゃんと同じ時期に予約していたようで、今日取りに行ったんですよ。ユキちゃんも一緒に食べましょう。」
ユキの目の前に現れたのは女神だった。
ユキの心はこの一瞬で癒され、満たされた。
魂が燃え尽きたように絶望していた顔が、まるで元気百倍になったパンのヒーローの様に、血色のいい顔に変わった。(元から白だが元気に見える。)
「あ、鳳翔さんと提督もどうです?」
「あら、良いんですか?なら、お言葉に甘えさせていただきますね。」
「私も頂くわ。」
大人だからこそ許される、普通の日にケーキを夜食に食べるという贅沢。
4人で仲良くケーキを食べて咲は満足したが、料理を作る3人(特にお菓子を作る間宮とユキ)は味について、お互いの感想や使われている材料の吟味などを話し合った。
この話は酔いつぶれていた呑み助たちが深夜に目が覚めたときにも続けられていたという。
「くしゅんッ!う~、寒いぴょん、お風呂に入りたいぴょん…。」
冷たい風が吹く中、卯月は布団に包まれ、紐で縛られて木に吊るされていた。
ユキからの罰ゲームは放置されることで収まったが、少しだけ巻き込まれた姉妹たちが納得していなかった。
そのため、全員からの罰ゲームとして寒い夜に外に吊るされていた。
首には『私はユキさんのおやつを食べて迷惑をかけた兎です』というプレートを掛けられていた。
後日、気絶して水たまりを作った所をいろんな角度からとられ、『青葉新聞』に少しだけ載せられたのは言うまでもない。
と言うわけで遊戯王パートでした。
本当はラーでやりたかった。
前作を見てくれた人は、うーちゃんがブラックリストに入る理由がよく分かったと思います。
これも原因の一つです。
次回はリメイク部分を書こうと思います。
前作では登場しなかった(ちょっと出たかな?)ある艦娘も一緒に。
では次回をお楽しみに。