理想の世界を叶える程度の能力   作:鳩胸な鴨

11 / 20
危機Ⅲ:まだ、博麗の巫女

「……」

「き、気にすんなよ、霊夢…。

あれは、その…。相手が悪かったんだよ」

「幻想郷を掌握された言い訳にしては面白いわね」

「……わ、悪い」

 

地獄のような空気である。

Xギーツの一撃を受け、傷だらけとなったウィンは、居た堪れなさを感じつつ、霊夢たちの治療にあたる。

幻想郷の医療は進んでいるが、それは永遠亭と呼ばれる施設あっての話。

傷を負った霊夢に、ウィンは消毒液を染み込ませた脱脂綿を押し当てた。

 

「だっ…!?」

「まだ声が出るくらいには元気だな」

「……っ、ほっときなさい…」

 

霊夢は不貞腐れた子供のように言い捨て、そっぽを向く。

が。魔理沙がそれを阻止するように、霊夢の頬を掴んだ。

 

「だだだっ!?そこ患部だっての!!」

「おっ、いつもの霊夢だ」

「あんたねぇ!!」

「くよくよするよか、そーやってキャンキャン怒鳴ってた方がらしいぜ」

「人がどんな気分かも知らないで!!」

 

霊夢は魔理沙の押し飛ばし、その場に縮こまる。

まるで、初めてゲームで負けた子供を見ているかのようだ。

魔理沙とウィンが眉を顰め、肩をすくめる。

どう慰めたものか。

それとも、焚き付けた方がいいのか。

英寿がいれば、口先八丁で霊夢を再起させたのだろうが、ウィンと魔理沙にそんな話術はない。

消沈した霊夢を前に、2人が手をこまねいていると。

 

「や。大変なことになったね」

 

若々しい青年の声が響いた。

ウィンと魔理沙がそちらを見ると、黒のコートを羽織った青年…ジーンが神妙な面持ちで立っているのが見えた。

 

「すまない。黒いナーゴに妨害されてね。

…取り返しのつかないタイミングで来てしまったか」

 

ジーンは塞ぎ込んだ霊夢を見やり、申し訳なさそうに眉を顰める。

そんな彼の肩に、ウィンが軽くもたれかかった。

 

「紹介するぜ。英寿公認のファン1号だ」

「ジーンだ。よろしく」

 

ジーンは言うと、魔理沙に向け、手を差し出す。

魔理沙はいつでもミニ八卦炉を取り出せるよう警戒しながらも、彼の手を握った。

生気を感じない温度が、魔理沙の手を包み込む。

キョンシーの手を握ったのか、と思いつつ、魔理沙はジーンの顔を見やった。

 

「ああ、君みたいなのはわかっちゃうか。

僕の肉体は少し特殊でね。

肉体よりも先にデータが…、ああいや、妖怪と似たような状態にあると思ってくれればいいかな」

「お、おう」

「…っと、今は自己紹介に割いてる時間はないね。

そっちの子、『博麗の巫女』だろう?」

 

ジーンは魔理沙の手を離すと、霊夢へと視線を戻す。

それに対し、霊夢は顔を膝に埋めた。

 

「……そんな称号、今さっき奪われちゃったわよ」

「拗ね方面倒臭いな、お前。…だっ!?」

 

デリカシーが欠落した発言をかました魔理沙の脳天に、ウィンが手刀を落とす。

ジーンはそれを無視し、彼女に目線を合わせるよう、その場にしゃがんだ。

 

「そうやって塞ぎ込んでいても、事態は何も変わらない。

君は『博麗の巫女』という称号が大事だったのかい?」

「…そういうわけじゃないわよ。

……私を支えていた全部が根こそぎなくなって、どうすればいいのかわかんないの」

 

弱々しく呟き、更に縮こまる霊夢。

そのまま豆粒にでもなってしまうのではないか。

魔理沙がそんなことを思っていると。

ジーンがその肩に手を置いた。

 

「そう思い悩むってことは、まだ諦めてないってことだ」

「……諦めないからって、何になるのよ」

「いつか勝てる」

「『いつか』っていつよ!!」

 

霊夢が怒鳴るのに怯まず、ジーンは真っ直ぐにその顔を見つめる。

彼は懐から一枚のカードを取り出すと、霊夢に差し出した。

 

「それは、君次第だよ」

「私次第って…。何の力もない私が…」

「力を失って、根っこから心を折られても、全てを捨ててはいないんだろう?

だったら、君はまだ『博麗の巫女』だ」

「…………」

 

ジーンの言葉に、霊夢の瞳が揺らぐ。

と。そんな彼らを邪魔するように、ざっ、ざっ、と足音が響いた。

 

「ジャー」

「ジャッ」

「ピロズエインビア!」

「イズキョピピファアガ!」

 

そこに居たのは、ジャマト軍。

おそらくは、力を失った霊夢をいたぶるためにメラが送り込んだのだろう。

ちらほらと強化個体が見えるそれを前に、ウィンが霊夢に『保険』と称していた銃を渡す。

 

「正直、コレを使って強くはならない。

寧ろ、前よか遥かに弱くなってるだろう。

それでも勝ちたいってんなら、コイツにそのカードを入れろ」

 

ウィンは銃を分割し、霊夢に渡す。

霊夢は持ち前の直感でカードを銃口側のスロットに挿し入れ、それを腰に当てた。

 

『LASER RAISE RISER』

 

ジーンが持つそれとは違う音声が、ジャマトを震撼させるように鳴り響く。

霊夢は腰にベルトが巻かれたことを確認すると、ウィンから受け取った引き金部分に、カードを入れた銃口部分を差し込んだ。

 

『SPELL SET』

 

「……勝ちたいに決まってんじゃないの。

もうすぐ、次の宴会やるんだから」

 

『LASER ON』

 

引き金を引くと共に放たれた弾丸…否。陰陽玉が、霊夢の周囲を漂う。

それがボロボロと崩れるとともに霊夢の体にまとわりつき、その表皮を黒のアンダースーツが覆った。

 

『REIMU RETRY』

『READY FIGHT』

 

外見的には、あまり変化はない。

せいぜい、霊夢の肌の露出が、黒のアンダースーツにより隠されている程度だろう。

霊夢は眼前まで迫っていたジャマトの攻撃をいなし、横目で自身の姿を見やった。

 

「……あんまり変わらないのね。

なんか、ピチピチした黒いのが増えただけっていうか…」

「君がデザインした『博麗の巫女』だからね。

『博麗大結界へのアクセス権限』と、最低限の戦闘能力だけは再現してあるよ」

「ふぅん」

 

霊夢はジャマトのこめかみ目掛け、目にも止まらぬ早撃ちを決める。

博麗の巫女としての力は奪われたものの、戦闘の才覚は残っていたらしい。

崩れ落ちる同胞を前に、ジャマトたちは臆することなく霊夢に迫る。

と。それを阻むように、魔理沙が星型の弾幕でジャマトを薙ぎ払った。

 

「霊夢だけずるいぞ!私にもなんかくれ!」

「魔理沙に渡す物なんて、風邪で十分よ」

「病気は貰いたかねーよ!!」

 

まさに、「つうと言えばかあ」。

2人は言葉がなくとも、互いの隙を縫うように弾幕を展開し、ジャマトを打ち倒していく。

それを尻目に、ウィンと背中合わせにジャマトの獲物を受け止めたジーンは笑みを浮かべた。

 

「こういうの、本当は英寿とやりたかったんだけどね」

「無理だろ。アイツがぼっきり折れるとこ、想像できるか?」

「無理だね」

 

『SET』

『ZIIN SET』

 

ウィンがモンスターレイズバックルをデザイアドライバーに、ジーンがレイズライザーカードをレーザーレイズライザーに装填する。

己を鼓舞する音が鳴り響く中、2人はルーティンをこなし、吠えた。

 

「「変身!!」」

 

『MONSTER』

『LASER ON』

『ZIIN LOADING』

 

『『READY FIGHT』』

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「さぁてと…。このままギーツ打倒に動いてもいいんだが、『奇跡起こしました』なんて展開はたまんないなぁ」

 

その頃、メラのアジトにて。

黒のタイクーン…仮面ライダージエンドタイクーンと激戦を繰り広げるギーツが映る画面を前に、メラが手を擦り合わせる。

既に対抗し得る力は手に入れた。

が。そのまますぐに戦いを挑んでも、負ける可能性が少なからずある。

そのピンチを楽しむのも一興ではあるが、今回目指しているのは完全無欠の大勝利。

特大の不安要素であるギーツを放っておく訳にもいくまい。

メラはそう結論付けると、画面に向け、指を向けた。

 

「てなわけで、俺が全ての能力を手に入れるまで、スキマの中で大人しくしてな」

『!?』

 

ジエンドタイクーンにトドメの一撃を放ちかけたギーツの足元に、音もなくスキマが広がる。

完全に意識をジエンドタイクーンに向けていたギーツが、咄嗟に対応出来るはずもなく。

ギーツは闇の中へと落ちていった。




デザイアグランプリルール

仮面ライダーの視界は、メラに共有されている。


博麗 霊夢(レーザーレイズライザー使用時)
パンチ力…1.1t
キック力…2.2t
必殺技…レーザービクトリー
概要…「博麗の巫女」のデータを搭載したレーザーレイズライザーを使用し、変身した姿。
霊夢の思う「博麗の巫女」がそのままデザインされているため、外見の変化は黒のアンダースーツが増えた一点のみ。
失われた霊夢の力を補ってはいるものの、霊夢の高すぎる素養が災いし、10分の1しか補完できなかった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。