「…やられましたね。心が読めません。
どうやったかはわかりませんが、能力まで奪われてしまったようです」
「あたいのゾンビも…」
「あれれー?能力切れちゃった」
地底にて。
ジャマトと交戦していたナーゴの横で、お燐とさとりが違和感に顔を顰める。
そのそばでは、確かに先ほどまで居なかったはずの少女も首を傾げており、ナーゴは目を見開いた。
「えっ!?誰!?」
「妹のこいしです」
「お姉ちゃんの妹のこいしでーす」
「ど、どうも…って、そんな場合じゃにゃーーーいっ!!」
『TACTICAL THUNDER』
盛大に噛みつつ、ナーゴが電撃を放つ。
電撃を受けたジャマトたちが燃え尽きる中で、戦いっぱなしのナーゴは、ビートアックスを地面に置いた。
「は、はぁ…。疲れてきた…」
「戦い続けてますからね。
仕方ありません。ここは撤退…」
さとりが促した、まさにその時。
すっ、と、空間に線が走った。
ナーゴたちがそれに警戒を露わにしていると、奥からデザイアドライバーを巻いたメラが姿を現す。
普段、緊張感などかけらも見せないこいしですら、その表情を強張らせ、メラを睨め付けた。
「よぉ。さっきぶり」
「メラ…!何しにきたの!?」
「何って、さっきも言ったろ?
『ライダーを最初に倒せばゲームクリア』ってな」
言って、メラは懐から禍々しい威圧感を放つ物体…ロストギーツレイズバックルを取り出す。
ナーゴはそれに目を見開きながら、メラに問いかけた。
「まさか、アンタもゲームのプレイヤーって言いたいわけ!?」
「そ。シード扱いって言えばわかるか?」
「不公平の極みですね…」
まともにゲームを運営する気がない。
世界滅亡ゲームと銘打ってはいるが、実のところ、メラは自分の欲求を満たしているだけ。
「幻想郷の中で最も嫌われている」と称されるさとりでさえも、あまりの不条理に嫌悪感を剥き出し、吐き捨てる。
メラはそんな苦言を聞き流し、ロストギーツレイズバックルを分割した。
『LOST GEATS』
『MODE LUNATIC』
「ロスト、ギーツ…?」
おかしい。以前は『Xギーツ』だったはず。
バックルが装填されたデザイアドライバーから響く音声に、ナーゴが訝しげに呟く。
展開される鎧。駆け回る狐。そのどれもが、前とは少し違う。
ナーゴの困惑を吹き飛ばすように、メラは指を鳴らした。
「変身」
『REVOLVE ON』
メラは狐を展開すると共に、軽くハンドルを押す。
狐の尾から赤混じりの青炎が吹き出し、駆け回っていた狐と鎧が変貌を遂げた。
『FORGOTTEN BOOST!』
『LOST GEATS』
メラの体を、展開された二つの鎧と、地面から吹き出た炎が包み込む。
その炎が晴れると、そこには。
以前よりも遥かに禍々しい黒狐が佇んでいた。
『READY FIGHT』
仮面ライダーロストギーツ。
ギーツの力、元ある神殺しの力に加え、幻想郷に存在する全ての能力を併せ持つ、最凶最悪の仮面ライダー。
ロストギーツは手元に二つの剣を顕現させ、つま先で軽く地面を叩く。
と。一瞬にして、ナーゴとロストギーツの距離が縮まった。
「距離を操る程度の能力」
「なっ…ぐぅっ!?」
斬撃がナーゴの体を易々と吹き飛ばし、壁に叩きつける。
壁に埋まったナーゴは苦悶の声を上げながらも、なんとか這い出て、別のバックルを取り出した。
『SET』
ビートレイズバックルを抜き、取り出したファンタジーレイズバックルを装填する。
ナーゴはファンタジーレイズバックルに刻まれた魔法陣を回すとともに、ロストギーツの元へと駆け出した。
『FANTASY』
『READY FIGHT』
新たな鎧を纏い、背に幾つもの剣を顕現させるナーゴ。
ロストギーツはそれに対して銃撃を放つも、ナーゴはそれを透過させ、爪のように変化させた剣を腕に纏わせた。
「はぁあああっ!!」
「永遠と須臾を操る程度の能力」
「ぁがっ!?」
透過できるはずの斬撃が、ナーゴを地霊殿の外へと弾き飛ばす。
ロストギーツは吹き飛ぶナーゴに先回りすると、バックルのハンドルを軽く押した。
『LOST GEATS STRIKE』
「おーら、よっ!!」
「ぁあ゛ぁぁああああっ!?!?」
モロに蹴りを受けたナーゴが、思いっきり地面に叩きつけられる。
と。石畳で構築されていた庭が、大きく崩れ、その地形を変えた。
出来たクレーターに、半身が埋まったナーゴの変身が解ける。
あまりに一方的な戦いにさとりたちが唖然とする中、お燐が慌てて袮音の元へと飛び降りた。
「おい!あんた、大丈夫かい!?」
「ゔ、ぅぅゔ…」
「はっはぁー!こりゃあいい!!
この力があれば、ギーツの野郎にも問題なく勝てるな!!」
「ぎー、つ…?」
ギーツ。どこかで聞いたことのある名前だが、思い出せそうで思い出せない。
だが、今はそんなことに悩んでいる暇はない。
早く起き上がって、ロストギーツを止めなければ。
袮音は力を入れて立ちあがろうとするも、ロストギーツの一撃が相当響いているのか、すぐに体勢を崩してしまう。
しかし、袮音は再び起き上がるべく、ロストギーツを睨め付け、腕に力を入れた。
「まち、なさい…!まだ、まだ負けて…」
「やめとけって!あんた、立てないくらいボロボロじゃないか!!」
「おいおい。まだ俺がまともにゲームやってるって思ってんのか?」
「…………は?」
お燐がロストギーツに向け、威圧を込めた疑念をこぼす。
それに対し、ロストギーツは嘲笑いながら答えた。
「このゲームはな、俺が能力を奪って、自在に使えるかどうかの実験なんだよ。
要するに、結果が決まってる茶番なの。
俺が作った『ジエンドタイクーン』、『ジエンドナーゴ』、『ジエンドバッファ』以外が勝てるようになってないの。
さっき人間を残したのも、対策しようがないのに頑張ってるお前らの顔が面白いから残しただけ」
「なんだい、それ…!!
あんたがやったのはゲームじゃなくて、ただの虐殺じゃないか!!」
あまりにもふざけた言い分に、お燐が怒号を放つ。
死体を運ぶことが趣味のお燐でも、流石に許容できなかったのだろう。
お燐が弾幕を展開しようとするも、出てくるのは豆粒程度の弾が数個だけ。
お燐が悔しげに顔を歪めるのを前に、ロストギーツは言葉を続けた。
「あとは複製したナビゲーターの『創世の力』を覚醒させ、取り込むだけ。
こっぴどく痛めつけられるお前らを見て、そろそろ慈悲の心も芽生えてそうだしさ」
「ナビゲーター…って…」
「最後にスエルが使ってたやつだよ。
お前らも見たことあるだろ?」
脳裏に浮かぶのは、黒いツムリ。
そのことに気づいた途端、袮音は声を絞り出した。
「メラ…!『創世の力』を手に入れて、どうするつもり…!?」
「お前らもやったことあるだろ?
『狐狩り』だよ」
「狐狩り…?」
聞き覚えのあるゲームだ。
だが、何をしたのかは思い出せない。
袮音がその感覚に眉を顰めるのをよそに、ロストギーツは画面を展開する。
「さぁて、プレイヤー諸君!
残念ながら、第二幕は即終了!
仮面ライダーを倒したのは、この俺ロストギーツってことで、雑魚どもには搾りかす諸共爆発願うぜ!!」
「やめろぉおおおっ!!」
お燐が叫ぶも遅く、ロストギーツの指が鳴る。
瞬間。幻想郷のあちこちで爆炎が巻き起こった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「あ、ぁあ…」
幻想郷の崩壊。
そうとしか言えない惨状を前に、紫が声を漏らす。
何から何まで詰んでいた。
自身の能力が掌握された時点で、幻想郷の敗北は確定していたのだ。
月の都、畜生界といった異界ですらも、ロストギーツどころか、彼が作ったジエンドバッファ、ジエンドタイクーン、ジエンドナーゴを前に歯が立たなかった。
正真正銘、最凶最悪の仮面ライダー。
蹂躙され尽くした幻想郷を前に絶望する紫に向け、少女は申し訳なさそうに眉を顰めた。
「………私は、どうすれば…」
本当に、このまま傍観するだけでいいのだろうか。
そんな彼女に答えるように、微かな鐘の音が響いた。
デザイアグランプリルール
勝者は、メラ1人でなければならない。
仮面ライダーロストギーツ
パンチ力…128.0t
キック力…256.0t
概要…メラが変身する最凶最悪の仮面ライダー。ギーツⅨのほぼ二倍のスペックを誇ると共に、幻想郷どころかあらゆる異界の能力を自在に操ることができる。例を挙げれば、不変を意味する「永遠」を操ることで、透過による攻撃の無効化を防ぐことも可能。
また、妖怪、神のように信仰や畏怖を必要とすることなく存在を保っているため、彼を倒す方法は無いに等しい。