その頃、迷いの竹林にて。
そこらに枝やら草やらを引っ付けたキューンが、眼前に佇むジーンを睨め付ける。
一方のジーンは、腹が立つほどに憎たらしい笑みを浮かべ、こちらに手を振った。
「…やぁ。さっきぶり」
「もう騙されないぞ、ジーン。
いや、メラの傀儡…と言った方がいいか?」
「正解。間抜けにも騙されてくれてありがとう。君たちのおかげで、いい陽動が出来た。
…ところで、ズタボロのお姫様のところには行かなくていいのかい?」
「行くさ…!お前を倒してからな!!」
『KYUUN SET』
キューンは地の底から響くような声を出し、レーザーレイズライザーにレイズライザーカードを挿し込む。
自身を鼓舞する音が流れる中で、キューンは鉤爪のように手を構え、引き金を引いた。
「変身!!」
『LASER ON』
『KYUUN LOADING』
『READY FIGHT』
銃弾が構築するのは、翼を広げた獅子。
立髪にあたる部分に放ったカード型の弾丸が突き刺さるとともに、キューン…否。仮面ライダーキューンは咆哮を放った。
「僕を排除しても遅いよ。
既に、こちらは目的のほとんどを達成してるからね」
「だとしても、お前をこのまま放っておくわけにはいかない!」
「…やれやれ。どうして君ってのは、こう肝心な時に邪魔ばかりするんだか」
『ZIIN SET』
偽物のジーンは言うと、レーザーレイズライザーに、いつものものとは違う、黒いレイズライザーカードを挿し込む。
禍々しい音が響き渡る中、本物のジーンと同じルーティンをこなし、その引き金を引いた。
『LASER ON』
『PREMIUM ZIIIN』
『READY FIGHT』
狐の怪人。
そうとしか呼べない異形が、駆け出したキューンに銃口を向けた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「離せ、霊夢!
あの野郎、今すぐブチ殺してやる!!」
「魔理沙、落ち着きなさい!
アンタが出てってもやられるだけよ!!」
爆炎が起きた数秒後、飛び立とうとした魔理沙のスカートを握り、霊夢が叫ぶ。
あまりに圧倒的すぎた。
幻想郷そのものを掌握したメラに対抗する術は、もはや無いとすら思えるほどに。
だが、そんな恐怖に負けるような人間では無い魔理沙は、制止する霊夢を振り切ろうと、箒に魔力を込める。
それを見て、ウィンが疑問をこぼした。
「あれ?魔理ちゃん、能力使えてんのか?」
「あぁ!?そりゃ使え…。
………あれ?なんで使えるんだ…?」
浮き出た疑問に、魔理沙は首を傾げる。
幻想郷に存在する能力は、メラに奪われたはず。
であれば、魔理沙の「魔法を使う程度の能力」も封じられて然るべきなのだ。
だというのに、魔理沙はこうして箒で空を飛べている。
魔理沙とウィンが互いに首を捻っていると、霊夢がつぶやいた。
「アンタの『魔法』って、はっきり言って町娘の背伸びで、しかも他の魔法使いの劣化だからじゃない?」
「…つまるところ、代わりがあって、大した能力じゃないから省かれたってわけか?」
「たぶん?」
「………ざっけんなアイツ!!
魔理沙さんの強さ知らねーな!?!?」
「さっきより怒ってらぁ…」
怒髪天を突く。
先ほどよりも強く怒りに燃える魔理沙に、ウィンが呆れを見せる。
仮にも肉親が死んでしまったというのに、薄情なものである。
それとも、幻想郷という土地は、肉親の死が日常に組み込まれつつあるのだろうか。
そんなことを思っていると、ジーンが声を上げた。
「なんにせよ、まだ希望は残ってる。
メラが流してる映像を見る限り、妖怪の消滅は起きていない」
「……え?えっと、今さっきので人間は居なくなったんだから…」
訝しみながらも、魔理沙は映像を見やる。
倒れた袮音に、崩れ落ちるお燐。
魔理沙はそれを前に、今度は別の意味で眉を顰めた。
「……は?なんで、お燐が…?」
「なるほどね。まだいるじゃないの。
妖怪を信じ、神を信じる人間が、ここに」
いち早く結論に辿り着いた霊夢に、察しの悪い魔理沙。
魔理沙は数秒ほど唸ったのち、同じ結論に辿り着いた。
「…………ああ!私らか!!」
「咲夜や小鈴、阿求もまだ居るでしょうし、妖怪、神が存在を保てる最低限の信仰と畏怖はあるみたいね。
ジーンの言う通り、勝てる希望はあるわ」
言って、霊夢はジーンの手を掴み、軽く宙に浮く。
それに対し、魔理沙は首を傾げた。
「希望って、残ったのは全員、ほぼ出涸らしみたいな力しか出せねー奴ばっかだぜ?
そんなんでメラに勝てるなんて…」
「『ギーツワンネス』。
前と同じ奇跡を、この幻想郷で起こすのよ」
ギーツワンネス。
かつて、ほとんどの力を奪われた英寿が起こした、一度きりの奇跡。
他者の想いを力に変え、Xギーツを圧倒した仮面ライダー。
その単語を聞いた魔理沙は目を見開き、素っ頓狂な声をあげた。
「は、はぁ…!?それって、英寿が中心になって初めて意味があるんだろ…!?
幻想郷の全員と面識がない限り、英寿が同じ力を得るだなんて…」
「おかしなことを言うのね。
私がそう願うんだから、大丈夫に決まってるじゃない」
願う限り、必ず叶う。
霊夢が言うや否や、英寿が鳴らしたものとは違う鐘の音が、幻想郷に響く。
全員がそれに目を見開くと、霊夢の持っていたレーザーレイズライザーが解け、代わりにデザイアドライバーが顕現した。
「え…?な、なんで…?」
「わ、わわっ…!?私にも…!?」
否。霊夢だけではない。
魔理沙の腰にも、IDコアのないデザイアドライバーが顕現する。
最凶の仮面ライダーに挑む資格を得た。
そう考えてもいいのだろうか。
皆が疑問を浮かべていると、彼女らの眼前に、二つの箱が降りる。
「これって…、魔理沙が持ってきた…」
「あ、ああ…」
同じように、箱をスライドさせ、開く。
霊夢のものには、赤と白が逆転したギーツのIDコアだけが。
魔理沙のものには、八卦炉を模したレイズバックルとIDコアが鎮座していた。
「…英寿とは違う鐘の音…。
まさかとは思うけど、アイツが言ってた『創世の力』を持ったナビゲーターってやつの仕業かしら…?」
「いや、英寿じゃない、のか…?
仮にそいつがやったとして、なんで私らに塩を送るような真似を…?」
「それは、わかんないけど…。
『願えば叶う』。それだけは確かよ」
霊夢は言うと、はるか上空を見上げる。
そこには、かつて爆破されたはずのメラのアジトが浮かんでいた。
幻想郷ルール
博麗 霊夢と霧雨 魔理沙は主人公である。