理想の世界を叶える程度の能力   作:鳩胸な鴨

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奇跡Ⅱ:強く儚き負け犬たちの夢

「は、はは、はははっ!!

思ったより感受性豊かなんだな、お前!!

こんなに早く覚醒するとは!!」

「ぐ、ゔ、ぅう…」

 

その頃、メラのアジトにて。

幻想郷を蹂躙し、満足したメラが、更なる興奮に笑みを爆発させる。

その手には、黒い衣服を纏うツムリの細首が握られていた。

あまりにも胸糞の悪い光景である。

紫がメラに一撃入れようと立ち上がるも、放たれた光弾がそれを許さない。

倒れる紫に向け、黒いツムリが叫んだ。

 

「なんてことを…!!」

「一丁前に同情してんなよ?

お前もこっち側だろうが!!」

「わ、私は…、私は……っ」

 

違う。そう言おうとして、止まってしまう。

いくら実行に移していないとはいえ、何もかもを知っていて傍観していたのも事実。

生まれながらにして極大の罪を抱えた自分に、黒いツムリは激しい嫌悪を覚える。

そんな彼女に向け、倒れた紫が声を漏らした。

 

「……あなた、は、ほんの少し、幻想郷を見て、どう思った…?」

「ど、どう…とは…」

「好きか、嫌いか…。

その程度なら、言えるわよね…?」

「…………」

「おいおい、横から口挟んでんじゃねぇぞ、搾りかすがよ」

「ぅ…」

 

更なる光弾が、紫の体を吹き飛ばす。

それに対し、黒いツムリは叫ぼうとして、一瞬止まった。

強く儚き敗者たちの楽園。

外の世界で存在を保てなくなってしまった者たちの、最後の居場所。

最期を待つ花の美しさを、その力強さを、彼女は映像越しに知った。

黒いツムリは心配よりも先に、紫の問いに答えるべく、口を開いた。

 

「…いい場所だと、思いました。

だから…、加担してしまった私にも、なにかできることをしたいのです…!」

「何もねーよ。もう滅ぶし」

 

黒いツムリの叫びに、嘲りを放つメラ。

その手が、彼女の首に振り下ろされようとした、まさにその時だった。

 

「「滅ぶのはそっちだ」」

 

2人の少女の声が響いたのは。

メラがそちらを見ると、デザイアドライバーを腰に巻いた霊夢と魔理沙と目が合う。

かつて、あの場に立っていた「心の英寿」と瓜二つの、強い瞳。

これ以上なく癪に障る目を前に、メラは顔を歪め、2人を見上げる。

 

「…搾りかすと雑魚が、なに吠えてんだ?」

「お前、知らねーのか?

強く願う限り、いつか望みは叶うんだぜ?」

 

『SPELL SET』

 

魔理沙は言うと、八卦炉を模したレイズバックル…『マスタースパークレイズバックル』を分割する。

彼女はデザイアドライバーを覆うように、バックルを装填し、流れ出た音楽に合わせ、軽くステップを踏んだ。

 

「一番乗りにテメェをブン殴るのは、この魔理沙さんだぜ!」

 

『POWER IS JUSTICE!』

『MASTER SPARK』

 

バックルの両側を叩くとともに、幾つもの星々が魔理沙の周囲に展開する。

その星々が魔理沙の姿を覆い隠し、軈て解けていく。

そこに鎮座していたのは、衣服が絢爛かつ未来的に変化した魔理沙。

魔理沙は衣服の変化を前に、声を弾ませた。

 

『READY FIGHT!』

 

「お、おおっ…!なぁ、霊夢!

さっきのお前よりめっちゃかっこいい!!」

「はいはい。わかったから、作戦通りにね」

「おうともさ!!」

 

魔理沙が吠えると共に、スカートに付いていた八卦炉を模した装飾が外れ、陣形を展開する。

それを前に、メラは面白くなさそうにロストギーツへと変身を遂げた。

 

「雑魚がはしゃいでんなよ。変身」

 

『FORGOTTEN BOOST』

『LOST GEATS』

 

幾つもの八卦炉から放たれた極太のレーザー…マスタースパークを軽々と弾き飛ばし、ロストギーツが魔理沙に迫る。

魔理沙はそれに怯むことなく、拳を易々といなし、手のひらに八卦炉を顕現させた。

間髪入れず放たれたマスタースパークに、ロストギーツの体が吹き飛ぶ。

即座に受け身を取り、立ち上がったロストギーツを前に、魔理沙は勝ち誇ったように笑みを浮かべた。

 

「そこの姉ちゃんが願った分、私も強くなってるみたいだな!」

「この…っ、雑魚のくせに、アホみてぇな火力バカスカ撃ちやがって…!」

「弾幕に知恵なんか要らねぇ!

パワーが全てなんだよ!!」

 

魔理沙だけの暴論である。

とても魔法使いとは思えぬ発言を放つと共に、魔理沙がロストギーツに殴りかかる。

彼女の攻撃に合わせ、漂う八卦炉がマスタースパークを放ち、ロストギーツを追い詰めていく。

ロストギーツはそれに眉を顰めながら、能力を使った。

 

「ありとあらゆるものを破壊する程度の…」

 

ロストギーツが手のひらを握るより先に、飛び上がった魔理沙が足を乗せる。

魔理沙はそのままの勢いで飛び上がり、宙で一回転すると、ロストギーツに踵落としを浴びせた。

 

「バーーーーーーーカ!!

私が幻想郷に住んでるやつの能力を把握してないわけないだろ!!」

「ぐっ…、調子に乗るな!!」

「おわっ!?」

 

ロストギーツは魔理沙の足を掴み、勢いよく振り回し、壁に向けて投げる。

スペックの差が出たのか、魔理沙は受け身を取ることもできず、壁に叩きつけられた。

 

「ぐほっ…!?」

「何度も何度も水さしやがって…!

どんだけ諦め悪いんだ、お前らは!!」

 

メラは苛立ちを隠そうともせず、魔理沙の体に銃撃を浴びせる。

魔理沙はそれに抵抗できず、呻き声を上げた。

 

「ぅ、ゔ……」

「そんなに死に急ぎたいんなら、望み通り殺してやるよ!」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「魔理沙…っ!!」

 

その頃、紅魔館から少し離れた場所にて。

爆炎から彼女らを庇い、傷ついた道長を手当てしながら、空を見上げたレミリアが心配をこぼす。

その瞳には、ロストギーツに痛めつけられ、なじられている魔理沙が映る。

勝てるはずもないだろうに。今もなお、危機であるはずなのに。

魔理沙は挫けた表情を見せず、真っ直ぐにロストギーツを睨め付けているのがわかった。

 

「……お姉様…、その…、わ、私たちも、なにかできないかな…?」

「フラン…。気持ちは、わかるけど…。

私たちが行ったところで、解決には…」

 

力が失った自分たちが行ったところで、焼石に水にもならない。

レミリアたちが諦めを浮かべた、その時だった。

 

『ねぇ、アンタたち!

これ、見えてるんでしょ!?』

 

霊夢の声が、敗北した幻想郷に轟いたのは。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

あれからどれだけの時が過ぎただろうか。

蹂躙され尽くした魔理沙が、軽く血反吐を吐き捨てる。

そんな彼女を前に、ロストギーツは容赦なく手のひらを向けた。

 

「あばよ、雑魚!死を操る程度の…」

 

ロストギーツが更なる能力を使おうとした、まさにその時。

その体に、銃弾が炸裂し、火花が散った。

 

「……………あ?」

 

彼が訝しげにそちらを見ると、少しばかり様子の異なった霊夢が、彼を見下ろしていた。

 

「「よ。退屈だったから、化けて出てきてやったぜ」」

 

霊夢の声に、英寿の声が重なる。

よくよく見ると、彼女が纏う衣服も、英寿が愛用していたタキシードと似た意匠が走っているのがわかる。

霊夢は構えた銃…マグナムシューター40Xを遊ばせ、不適な笑みを浮かべた。

普段ならば霊夢が絶対に浮かべない、ミステリアスな魅力を感じさせる、妖狐のような笑み。

その正体が浮世 英寿であることに気づくと、ロストギーツは狼狽をあらわにした。

 

「な、なんで、ギーツが…!?」

「「わからないか?

お前が奪ったのは、『博麗の巫女の力』であって、『博麗 霊夢の力』じゃない。

つまり、博麗 霊夢が鍛えた『神降ろしの力』をはじめとした技術と才能は、奪われてなかったのさ」」

「……っ、今更出てきたところで、全ての能力を使える俺に…」

 

勝てる道理はない。

ロストギーツの言葉を遮るように、霊夢が両手を広げる。

瞬間。荘厳な鐘の音が鳴り響き、幾つもの光が空間に溢れ出した。

 

「やっぱ、バカだな、お前…!

さっきまでのやりとりも、私との戦いも、ぜーんぶ幻想郷中が、霊夢の説得付きで見てたんだよ…!」

「そういうことだ。

よくやったぜ、魔理ちゃん」

 

魔理沙が言うと共に、物陰に隠れていたウィンが姿を見せる。

手元には携帯型のデバイス…スパイダーフォンが握られており、カメラ機能が作動しているのが窺えた。

 

「……まさか」

「「そのまさかだ。幻想郷に住まう誰しもが、強く願ったんだよ。

お前をこの手で撃ち倒すことをな」」

 

霊夢は言うと、手元に白と赤の物体…ギーツⅨレイズバックルを顕現させ、掲げる。

漂っていた光が全て、掲げたレイズバックルへと吸収されていく。

ロストギーツは間髪入れず、霊夢の脳天に向け、銃剣の銃口を向けた。

 

「おっと。そうはさせないよ」

 

が。その銃口は、同じく隠れていたジーンが放った銃撃によって逸らされた。

ロストギーツが忌々しげにジーンを睨むや否や、あたりに赤の衝撃波が走る。

彼らがそちらに目を向けると、赤と白が逆転したレイズバックルが、霊夢の手元に佇んでいるのが見えた。

 

「「これは、幻想郷が起こした奇跡…。

強く儚き負け犬たちが見た、最後の夢…!

私が、俺が、叶えるべき願いの証!!」」

 

『GEATS KAGURA』

『LAST DREAM』

 

その奇跡…ギーツカグラレイズバックルを分割し、デザイアドライバーに装填する。

流れるのは、少女を鼓舞する綺想曲。

それに呼応し、機械仕掛けの光輪、白と赤が逆転した狐が顕現する。

霊夢はその手のひらに『GEATS KAGURA』の文字を展開し、引き寄せるように光輪に叩きつける。

そのまま顔の横に運んだ指を鳴らし、霊夢が、英寿が吠えた。

 

「「変身!!」」

 

『REVOLVE ON』

 

狐と文字を鎧に変え、回転させる。

展開された赤の九尾から伸びたハンドルを軽く押すと、その尾からは美しい色の炎が吹き出した。

 

『LAST WORD BOOST!!』

『GEATS KAGURA!!』

 

地面から吹き出した鮮やかな色の炎が、鎧ごと霊夢の体を包み込む。

その姿を見たある者は、失われた記憶を取り戻し。

ある者は、あまりの美しさに声を漏らす。

その炎が晴れるや否や、鎧を纏った彼女の手元に、赤の銃が顕現した。

 

『GEATS BUSTER 890』

 

銃を握り、閉じた瞳を開く彼女。

そのシルエットは、女性とも、男性とも捉えることができない。

彼女は九つの尾を模した帯を靡かせ、ロストギーツの元へと降り立った。

 

『READY FIIIIIIGHT!!!』

 

声帯が張り裂けんばかりの声援が、バックルから鳴り響く。

仮面ライダーギーツカグラ。

幻想郷に住まう全ての願いを背負い、顕現した奇跡。

仮面の下で冷や汗を流すロストギーツに対し、霊夢が、英寿が、銃口を向けた。

 

「「ここからが、ハイライトだ」」




幻想郷ルール

幻想郷は、メラだけを受け入れない。


霧雨 魔理沙(マスタースパークレイズバックル使用時)
パンチ力…46.5t
キック力…98.3t
概要…霧雨 魔理沙がデザイアドライバーとマスタースパークレイズバックルを使用して武装した姿。彼女の適性を火に変え、予備の魔力タンクをバックル内に8個搭載したことで、魔力の消費を気にせずマスタースパークを放つことが可能となった。
絢爛な衣服のあちこちに付着したミニ八卦炉は、ビットとして運用可能で、装着者の任意のタイミングでマスタースパークを放つことができる。
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