「はぁ!?英寿を降ろすぅ!?」
遡ること、少し前。
霊夢が出した作戦に、魔理沙が素っ頓狂な声を上げる。
ジーンとウィンも俄には信じ難いようで、懐疑の瞳を霊夢に向ける。
が。霊夢はそれを気にせず、話を続けた。
「こんだけピンチでも動かない奴じゃないってことは、よくわかってんでしょ。
何か、動けない理由…。
それも、私たちとの合流すら果たせない状況下に置かれてると見ていいわ」
「……以前もガンメタされてたって聞くし、おかしい話じゃないな」
「なんにせよ、本人に聞けばわかるでしょ。
少し退いてて」
切り札が手元にないなら、手繰り寄せればいいだけのことだ。
霊夢はそんなことを思いつつ、意識を宙に、世界に集中させる。
月の都での苦い思い出から、これまでやってこなかった神降ろしの術。
博麗の力が奪われた今、神が降ろせるかどうかもわからない。
だがしかし。不思議と、霊夢の中に不安はなかった。
「すまない。メラに隔離されていた。
状況を教えてくれ」
背後から声が響く。
霊夢がそちらを見ると、蝋燭の火がいくつも並んだ黒塗りの空間に、ひっそりと佇む英寿と目が合った。
普通ならば狼狽えるであろう状況に、霊夢は至って冷静に口を開く。
「メラのやつが私の力を得て、能力者以外の人間を、全員殺したわ」
「考え得る限りまずい状況ってわけか」
「ええ。あなたの力、神殺しの力、幻想郷の力の三つを手に入れたメラを倒す方法は、ただひとつだけ」
霊夢の並べた情報に、英寿は即座に答えを導き出す。
その表情は、いつものような不適な笑みはなく、とてつもなく神妙なものだった。
「『ギーツワンネス』と同じ奇跡を、幻想郷で起こすわけか」
「そうよ。…でも、奇跡の中心となるあなたに、幻想郷との繋がりは殆どない。
あるとすれば、ここに来ている仮面ライダーたちのものだけ」
「ああ。その問題を解決する時間は、俺たちには残されていない」
ギーツワンネスは、英寿が繋いできた絆が引き起こした奇跡。
面識もない相手に「自分を信じろ」と言っても、「はい信じます」と上手くいくわけがないのだ。
だからと言って、一人一人に英寿と関係を築くだけの時間も残されていない。
非情な現実に顔を歪める英寿に向け、霊夢は手を差し伸べた。
「だから、私がその奇跡を引き起こす。
あなたを降ろし、私が『ギーツワンネス』になるわ。文句ある?」
英寿に絆がないのならば、絆のある霊夢がそれを担えばいい。
霊夢の出した結論に、英寿はようやく、いつものような笑みを浮かべた。
「…一つだけ訂正点がある」
「なに?」
英寿は言うと、霊夢のデザイアドライバーに装填されたIDコアに手をかざす。
と。鐘の音とともに、描かれていた狐が、神々しいデザインへと変化した。
「『俺たち』でなるんだ。
『仮面ライダーギーツ』に」
「……こういうの、苦手だけどね」
「嫌いではないんだろ?」
「ええ。大好きよ、こういうの」
♦︎♦︎♦︎♦︎
『アンタたちねぇ!
あのぽっと出クソ狐に能力取られて、挙句こっぴどくやられたからって、何ウジウジしてんのよ!!
それでも私に喧嘩売ったバカどもか!?
肝っ玉どこ置いてきたのよ!?』
時は少し進み、魔理沙が武装した少し後。
空に幾つも浮かんだ映像ごしに、霊夢の罵声が響き渡る。
いつもなら、異変が起きれば即座にすっ飛んでくる享楽主義者が数人いるはず。
それすらも居ないとは、どういう了見だ。
ふつふつと湧き上がる怒りに身を任せ、霊夢は思いっきり幻想郷を煽り散らした。
『魔理沙を見なさいよ、魔理沙を!!
普通の魔法使いがちょっと背伸びしたくらいの力しかないのに、それでもあのクソ狐に臆さず殴り掛かってんのよ!?
アンタらも殴りなさいよ!!
アンタらも罵りなさいよ!!
幻想郷ナメてんじゃないわよって、全力で吠え散らしてみなさいよ!!』
妖怪、神に対する特大の不敬。
天上天下唯我独尊。博麗 霊夢は変わらず、傍若無人っぷりを全開にして叫んだ。
『このみっともない負け犬ども!!
外の世界でも負けて、こっちでも負けて!!
手元にあるチャンスすら、能力取られた、力削られたってだけでドブにブン投げた腰抜けども!!
アンタらみたいな負けに負けたみそっかすでも、ただ「アイツをぶっ倒したい」ってくらいは願えるでしょうが!!
わかったら、とっとと願え!!
私がこの手で叶えてやるから!!』
幻想郷に存在する妖怪、神が、この言葉を聞いて怒りを抱かないわけがない。
彼女らの反骨精神に訴えかけた霊夢は、「じゃ、行ってくるから!」と背を向ける。
映像に見えないように、不適な笑みを浮かべながら。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「……なんだよ?なんで、また、そんな奇跡が起きてんだよ…?」
「「俺が、私が、そう願った。
ただそれだけのことだ」」
時は戻り。赤いギーツが、黒のギーツを煽るように笑って見せる。
かつて、自分を打ち倒した奇跡。
見た目こそ違うが、誕生の経緯といい、纏う威圧感といい、ギーツワンネスと姿が被って見える。
ロストギーツは敗北の記憶に顔を歪ませ、能力を駆使した。
「何でもひっくり返す程度の能力!!」
「「世界はひっくり返った」」
が。それは至極あっさりと封殺されることとなる。
ギーツカグラは喉元に手をやると、くすくすと笑みをこぼした。
「「ははっ。月に住まう神ですら、俺に、私に願ったみたいだな」」
稀神サグメ。月に住まう、口にしたことを全て逆転する神。
無意識に彼女の能力を使っていたが、どうやら月の軍勢もあの映像を見ていたようだ。
感嘆の声を漏らしつつ、ギーツカグラは困惑するロストギーツに銃弾を数発放つ。
「ぐぉっ…」
「「借りるぞ。伊吹 萃香」」
「ぐあぁああっ!?」
ギーツカグラが名を呼ぶとともに、弾丸が巨大化し、ロストギーツを弾き飛ばす。
その場に転がるロストギーツに、一瞬にして距離を詰めたギーツカグラは、指先に様々な現象を宿した。
「「パチュリー・ノーレッジ」」
「っ、ぶねぇ!?」
指先から放たれた7色の弾幕が、ロストギーツに襲いかかる。
ロストギーツは転がることでそれを避けると、数発の斬撃を飛ばした。
「「弾幕にしてはおざなりだな」」
ギーツカグラはその場からほとんど動かず、斬撃を避ける。
少し掠ったが、問題ない。というより、いつものことである。
意識を入れ替えながら、ロストギーツが放つ弾幕と斬撃を次々と避けるギーツカグラ。
それを前に、ウィンと魔理沙が手を取り合いながら、興奮気味に飛び跳ねた。
「わ、おわっ、わわっ!!
霊夢も英寿もすげぇ!!あんな避けさせるつもりない弾幕、軽く避けてるぜ!?」
「うぉわーっ!あの2人、めちゃくちゃ相性良いじゃねぇか!!」
「外野!うるせぇんだよ!!
偶像を作り出す程度の能力!花を操る程度の能力!!」
魔理沙たちの茶々に腹を立てたロストギーツが吠え、地面から模造品のライダーとジャマトたちが這い出る。
それを前に、魔理沙は八卦炉を構え、ウィンはパンクジャックへと変身を遂げた。
「霊夢、こっちは気にすんな!
思いっきりな!!」
「ええ。ありがと。
アンタが居てくれて良かった」
「…お前が素直に褒めてくんの、ちょっと気持ち悪いぜ」
「んなっ!?アンタ、人が珍しく褒めてやってんのに…!」
魔理沙がデリカシー皆無な発言をした後、彼女らは模造品のライダーたちとの混戦に身を投じる。
ギーツカグラは弾幕を避けながら、その後ろ姿を見送ると、ジーンへと目を向けた。
「「ジーン、新しい運営なんだろ?
ラストゲーム、盛り上げてくれよ」」
「推しに期待されちゃ、仕方ないね」
ジーンは言うと、どこからかカメラを顕現させ、側にへたり込んでいた黒いツムリの肩に手を置く。
黒いツムリが目を合わせると、ジーンは優しく微笑み、語りかけた。
「ほら、ナビゲーターとしての初仕事だよ。
先輩に負けないように、声を出して」
「わ、私が、ですか…?」
「ああ。僕たちの知るツムリには、少し文句を言われるだろうけどね」
「………、私でよければ、やります」
黒いツムリは立ち上がり、ぎこちなく笑みを浮かべる。
ジーンはそれに頷くと、声を張り上げた。
「オーディエンスの諸君、待たせたね!
リニューアルデザイアグランプリ第一回、最終ゲームを始めようか!!」
「お題は、『黒狐ゲーム』!
幻想郷の崩落を阻止し、ロストギーツを倒した者が栄光あるデザ神となり!理想の世界を叶える権利を得ます!!」
2人の声が、幻想郷、未来の世界に響き渡る。
記憶にある、デザイアグランプリの開幕。
理想の世界を叶える権利を得るには、十分すぎる危機。
ギーツカグラは覚えのある緊迫感に、仮面の下で笑みを浮かべた。
「「ああ。俺が、私が、叶えてやるよ。
こんな世界を作り変えるために!!」」
「人のゲームを乗っ取りやがって…!
また、世界ごとぶっ壊してやるよ!!」
荘厳な鐘の音が鳴るとともに、拳と拳がぶつかり合った。
デザイアグランプリルール
誰しもが、願いを叶える権利を持っている。
仮面ライダーギーツカグラ
パンチ力…128.0t
キック力…256.0t
必殺技…ギーツカグラストライク
超必殺技…ギーツカグラビクトリー
概要…博麗 霊夢が浮世 英寿を降ろして変身する、幻想郷をはじめとした異界に存在する願いをかき集めて生まれた仮面ライダー。
創世の力を持つだけでなく、願いを捧げた者が持っていた能力、及びスペルカードを自在に操ることができる。
ギーツバスター890
概要…ギーツカグラ専用武装。ブレードモード、レールガンモードの切り替え機能の他、音声入力により、任意のスペルカード、および能力を再現する機能を持つ。