理想の世界を叶える程度の能力   作:鳩胸な鴨

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奇跡Ⅳ:願いは同じ

「そうだ、英寿…!英寿だ…!」

 

その頃、爆煙立ち込める命蓮寺にて。

真紅に染まるギーツが、ロストギーツと応酬を繰り広げる映像を前に、傷だらけの景和が声を漏らす。

圧倒的な技量で相手を翻弄し、手を一つずつ、的確に潰していく戦闘。

骨格はまるで違うが、所々に見える所作はまさしく英寿のそれだ。

それに景和が笑みを浮かべ、立ち上がるのを横に、懸命に治療を施していた少女…寅丸 星が声を上げる。

 

「ちょっと、まだ立たないでください!

あの爆発をまともに喰らってその程度ってだけで奇跡だったんですよ!?」

「そうです、景和さん!

その怪我で動けば…」

「そんなこと言ってる場合じゃない!

今、戦わないと…!」

 

景和は星と白蓮の制止を振り切り、デザイアドライバーを腰に巻き付ける。

それを前に、様子を見ていたぬえが疑問を口にした。

 

「…なんで、そんな風になってまで戦おうとするんだ?

アンタにとって、幻想郷は縁もゆかりもない土地だってのに…」

「誰かの幸せが、俺の幸せだから」

 

なんでもないように答え、景和は一部が吹き飛んだ命蓮寺の外へ出る。

荒廃を予感させる、絶望を象徴する空。

その空を覆い隠すように、ギーツカグラとロストギーツが戦いを繰り広げる様が映る画面が、そこらに展開している。

景和はその空を少しばかり見上げた後、浮かぶメラのアジトへと駆け出そうとした時だった。

 

「………」

「なっ…!?」

 

それを遮るように、ジエンドタイクーンが姿を見せたのは。

景和がそれに目を見開くや否や、黒いタイクーンが刀を振り上げる。

景和は振り下ろされた刀を転がることで避け、その先で走った激痛に膝をついた。

 

「ぐっ…」

「景和さん!!」

 

その隙を狙って、ジエンドタイクーンが刀を振り上げる。

変身しようにも、激痛が祟って、うまくバックルを取り出せない。

景和が走馬灯を垣間見たその時。

 

『『ああ。俺が、私が、叶えてやるよ。

こんな世界を作り変えるために!!』』

 

ギーツカグラが吠え、鐘の音が響いた。

景和の体に刻まれていた傷を包み込むように、蒼炎が走る。

その炎が一瞬で霧散すると、滲んでいたはずの血すら消え、いつもの肌が晒された。

 

「痛みが…。よし、これなら…っ!」

 

『SET AVENGE』

 

ジエンドタイクーンの斬撃を避け、同じブジンソードレイズバックルを挿し込む。

かつて、復讐鬼となった自分に酷似した姿。

景和はその過去を折るように、ぺきっ、と指を鳴らした。

 

「変身!!」

 

刀を抜き、顔に覚悟と怒りを滲ませる。

彼の眼前には『BUJIN SWORD』の文字が浮かび、どこからか放たれた斬撃が、それを二つに引き裂く。

その二つが上下へとずれると、そこから鎧を形成し、景和の体を包み込んだ。

 

『BLACK GENERAL』

『BUJIN SWORD』

 

黒い将軍。

所々に走る緑に、敵だけを見据える赤の瞳。

目の前のジエンドタイクーンと似ているようで、決定的に違う。

仮面ライダータイクーンブジンソード。

変身を終えたタイクーンは携えた刀…武刃を鞘に収めたまま、ジエンドタイクーンの斬撃を受け止めた。

 

『READY FIGHT』

 

スペックは全く同じ。

あとは経験と気力がものを言う世界。

それを直感で悟ったタイクーンたちは、一旦距離を取り、互いに隙を伺う。

気味が悪いほどに動きが一致している。

いつもの戦闘が通用するかはわからないが、かと言って付け焼き刃を放っても、手痛い一撃を喰らうことだろう。

 

「自分同士はやりづらい…な!!」

 

タイクーンが叫び、剣戟が繰り広げられる。

互いに掠りもしていない。全くの互角だ。

手癖までコピーされているのだろうか。

数分の剣戟に少しばかり焦りを覚えるタイクーンに、心配を込めた視線が飛ぶ。

 

「景和さん…っ」

「ひ、聖!?なにを…」

 

状況を打破せねばならない。

なにより、ここは命蓮寺。人、妖怪、全てを平等に救う場所。

救うはずの立場である自分が守られてばかりで、なにが住職なのか。

そんな義務感に駆られ、白蓮が立ち上がる。

と。その覚悟に呼応するように、手元に光が集まった。

 

「なっ…!?」

「これは…?」

 

光が剥がれ、そこにレーザーレイズライザーが鎮座する。

白蓮は直感的にその使い方を悟ると、自身を象徴するかのような紋様が走るカードを装填した。

 

「聖さん…!?それは…」

「私も参加します。

この『デザイアグランプリ』に。…南無!」

 

『SPELL SET』

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「らぁああっ!!」

 

その頃、紅魔館付近にて。

ゾンビブレイカーが唸り声を上げ、黒いバッファ…ジエンドバッファから火花が散る。

英寿の力により回復したバッファは、尚も動じぬジエンドバッファに、荒々しく連撃を繰り出した。

 

「………」

「ぐぁっ…!?こ、この…っ」

 

『全ての仮面ライダーをぶっ潰す力』。

かつてバッファが有していた力が両者に宿り、泥臭い斬り合いが続く。

スペックはどちらも同じ。

ただ、今のままでは、痛覚がないも同然なジエンドバッファに対し、痛覚が機能しているバッファが圧倒的に不利である。

そのことを理解していてなお、果敢に向かうバッファに向け、レミリアが歯痒さに顔を歪ませた。

 

「何が最強の生物よ…!こうして引っ込んで見ているだけだなんて…!」

「ですが、お嬢様…。

このまま出ても、彼の力には…」

「わかってるわよ…!

でも、負け犬でいられるほど、私のプライドは安くないの!」

 

レミリアが吠えるとともに、手に光が宿る。

吸血鬼の弱点たる太陽とは違う、暖かな光。

それに皆が目を剥く中、光が薄らと剥がれていく。

鎮座するのは、レーザーレイズライザーに、レミリアの象徴するかのような紋様が走る紅いレイズライザーカード。

レミリアはその使い方を悟ると、斬り合うバッファの元へと駆け出した。

 

「んなっ…!?来るんじゃ…ぐぁあっ!?」

 

それを見たバッファが叫び、ジエンドバッファの一撃に声を漏らす。

レミリアは不適な笑みを浮かべながら、レーザーレイズライザーにカードを装填した。

 

「あら。つれないこと言うのね。

私もエントリーするわ!

この『デザイアグランプリ』に!!」

 

『SPELL SET』

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「はぁあああっ!!」

 

ナーゴの展開した剣が、黒いナーゴ…ジエンドナーゴが展開した剣とぶつかり合う。

互いに幻となり、そこらじゅうを駆け回るナーゴたち。

全く同じ能力に、全く同じ技量。

あまりのやりづらさに、ナーゴは仮面の下で顔を歪め、息を吐き出した。

 

「は、はぁっ、はぁっ…。

ああもう、やりづらい…っ!!」

 

互いにダメージはない。

だが、傀儡であるジエンドナーゴとは違い、ナーゴには確実に疲労が溜まっている。

今でこそ動けてはいるが、あと数分もすれば均衡は崩れだすことだろう。

そんな危機を前に、燐は心配をナーゴに向けた。

 

「あいつ、あのままじゃ負けちまうよ…!」

「でしょうね。袮音さんは消耗が激しい。

あと数分もすれば、完全に向こう側に圧倒されるでしょう」

「むむむぅ!むかつく!」

 

腹を立てるこいしを横に、燐は何かできることはないか、出来がいいとはいえない脳みそをフル回転させる。

力はない。能力だって失った。

残っているのは、搾りかすの身が一つ。

霊夢の啖呵に腹を立てた。ロストギーツを殴ることを、本気で願った。

だからといって、自分に力が戻ったわけではない。

ただ願っただけの負け猫。それが今の自分。

燐は自己嫌悪に顔を歪めるも、即座に笑みを浮かべる。

 

「あたいを撫でるのが上手かったからね。

助ける理由なんて、それで十分さね」

「……お燐。よろしいのですか?

彼女の死体に興味があったのでは?」

「いじわるだねぇ、さとり様は。

あの温もりは、死体じゃ無理だよ」

 

燐が言うや否や、手元に光が集まる。

レミリア、白蓮と同じように、そこに顕現するレーザーレイズライザー。

燐はレイズライザーカードを装填すると、その場から駆け出した。

 

「お燐ちゃん!?」

「あたいも混ぜておくれよ!

この『デザイアグランプリ』にさ!」

 

『SPELL SET』




デザイアグランプリルール

願いを叶えるため、覚悟を決めた者にのみ、デザイアグランプリに参加する権利が与えられる。
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