「なにせ、俺が叶えるからな」
「は、はぁっ…!なんでだよ…!
能力は全部奪ったはずなのに…っ!!」
押されたロストギーツが、弾幕を纏いながら吠える。
が、悲しきかな。
ロストギーツが周囲に展開したそれは、ギーツカグラが顕現した弾幕によって、即座にかき消された。
「「お前が奪ったのは、能力だけ。
在り方が刻まれたみんなの『心』が、俺/私の力だ」」
実のところ、ギーツカグラが使っているのは、能力とはいえない。
妖怪、神たちが無意識に「自分はこうあるべき」と願う心から、似たような現象を引き起こしているのだ。
表面だけを掬い取った力と、能力の持ち主が強く願う在り方。
どちらが強いかなど、語るまでもない。
ロストギーツは仮面の下で顔を歪め、黒の尾を翼のように展開した。
「またそれか!!
心、心、心ってうるせぇんだよ!!
いい加減に壊れろよ!!」
死を操る程度の能力に、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力。
少し触れるだけで細胞、魂すら残さず消し飛ぶ弾幕が、空を埋め尽くす。
世界の滅亡を予見させる光景。
それを前に、ギーツカグラは鼻で笑った。
「「ふっ。お前、『弾幕ごっこ』のルールを知らないのか?」」
言って、ギーツカグラは一枚のカードを、その指先に顕現させる。
そこに写るのは、幾つものナイフがそこらじゅうを飛び交う風景画。
ギーツカグラはそれを、はらり、と宙に置き、手に持ったギーツバスター890で撃ち抜いた。
「「スペルカード、十六夜 咲夜。
幻世『ザ・ワールド』」」
「なぁ…っ!?」
一瞬にして、全ての弾幕が打ち消される。
それと変わって、夥しい数のナイフが顕現し、ロストギーツに殺到した。
「ぐぉおっ!?」
「「展開してる弾幕は、スペルカード発動時に打ち消せる。勉強不足だったな」」
「調子に乗ってんじゃねぇぞ!!
あらゆるものの背中に扉を作る程度の能力!!」
ロストギーツが言うや否や、その背に後戸と呼ばれる扉を展開する。
生命力、潜在能力、あらゆるものを自在に引き出すその扉を使い、在らん限りの力を引き出すロストギーツ。
膨れ上がるロストギーツの力を前に、ギーツカグラが構えを取る。
が。それも遅く、音より、光より速く距離を詰めたロストギーツの斬撃が、ギーツカグラを吹き飛ばした。
「「ぐっ…」」
「おらおらおらぁっ!!」
ギーツカグラが壁に激突するのも待たず、ロストギーツが弾幕を織り混ぜ、斬撃を放つ。
ギーツⅨでも、変身解除にまで追いやられかねない連撃。
雨霰と降り注ぐ攻撃に、ギーツカグラが防戦一方へと追い込まれる。
対するロストギーツは、優勢になったことで余裕が出来たのか、下品な笑い声をあげながら、バックルのレバーを倒した。
「はは、はははっ!!
ようやくお前をぶっ壊す時が来たな!!」
『LOST GEATS STRIKE』
ロストギーツの蹴りが、ギーツカグラの側頭部を穿つ。
どんな存在でも、首根っこごと吹き飛ぶであろう威力の蹴り。
吹き飛ぶギーツカグラに追い打ちすることなく、ロストギーツは背を向ける。
「ふ、ふははっ!どうだ!!
今度こそぶっ壊して…」
「あんた、どこ向いてるのよ?」
「は?」
霊夢の声が響くとともに、ロストギーツの体が大きく宙に吹き飛ばされる。
視界の隅には、陰陽玉を周囲に展開した霊夢の姿が見える。
理解が追いつかない。
たしかに、ギーツカグラはそこに居たはず。
なのに、どうして「生身の博麗 霊夢」が存在しているのか。
ロストギーツが思考を巡らせるのを待たず、その体に白の一閃が走った。
『BOOST Ⅸ STRIKE』
「はぁあああっ!!」
「ぐぉっ…!?」
その蹴りを放ったのは、ギーツⅨ。
ロストギーツが床に叩きつけられると共に、霊夢、ギーツⅨ、ギーツカグラが集う。
訳の分からない状況に目を白黒させながら、ロストギーツは声を漏らした。
「な、なぜ…、お前らが、へカーティア・ラピスラズリの力を…!?」
へカーティア・ラピスラズリ。
ロストギーツでさえ制御下に置けなかった、あらゆる異界において最強たる彼女が持つ、「三つの身体を持つ程度の能力」。
その力を今、ギーツカグラは易々と行使している。
困惑するロストギーツに、霊夢はくすくすと笑みを漏らした。
「へカーティアでさえも願ったのよ。
だから、私たちがこうして存在している」
「ああ。お前に勝てない無力な人間の心が、神の心さえも動かしたんだ」
「「お前が壊そうとするたび、俺たちは、私たちは、何度だって願う。
俺たちの、私たちの、理想の世界を!」」
タイクーンが。
白蓮が。
バッファが。
レミリアが。
ナーゴが。
燐が。
キューンが。
ジーンが。
パンクジャックが。
魔理沙が。
幻想郷に存在する、あらゆる者たちが、ロストギーツの放った尖兵を穿つ。
残るは、ロストギーツだけ。
それを悟ったロストギーツは、乱暴にバックルのレバーを二度叩いた。
『FORGOTTEN BOOST TIME!』
「願うから、なんだってんだよ!!」
ずもも、と、ロストギーツが巨大化する。
…否。巨大化したのではない。
幾人にも増えたロストギーツが集合し、巨体のように見えるのである。
霊夢、ギーツⅨ、ギーツカグラはそれを前に、同じようにバックルのレバーを二度倒した。
「「「「今、勝てる!」」」」
『BOOST TIME!』
『DYNAMITE BOOST TIME!』
『LAST WORD BOOST TIME!』
祝福の蒼炎が、3人を包むように走る。
それだけではない。幻想郷に存在する全ての願いが、弾幕として顕現し、3人の体へと集結していく。
儚く、強く、存在を刻みつけるような光。
それを前に、数多に増殖したロストギーツが足を向けた。
『LOST GEATS VICTORY』
「おらぁあっ!!」
世界を簡単に滅ぼす一撃が迫る。
3人はそれに対抗するように飛び上がり、足を突き出した。
「「「「はぁあああっ!!」」」」
『DREAM BOOST GRAND VICTORY!』
『BOOST Ⅸ VICTORY!』
『GEATS KAGURA VICTORY!』
幾人のロストギーツが放つ一撃と、たった3人が放った蹴りが拮抗する。
数で見れば、圧倒的に有利なのはロストギーツだろう。
『ぐ、ぐぅ、ぐぁぁあああああっ!?』
が、しかし。かき集めた幻想郷の願いが、幻想郷の上っ面だけを掬い取ったロストギーツの力に負けるわけがない。
力の拮抗を制し、3人の蹴りがロストギーツの軍勢を穿つ。
が。まだ数人残ったロストギーツが、世界を滅ぼす弾幕を再び展開しようと、揃って手をかざした。
「まだだ!まだ俺は…」
「「「「ラストワード!!」」」」
────願符『夢想天生』ッ!!
その悪あがきは、幻想郷の願いをかき集めて発動した、『この世で最も美しい弾幕』にかき消された。
「「「「はぁああああっ!!」」」」
迫る光を前にして、ロストギーツ…否。
メラは思考を巡らせる。
何が原因で負けたのだ。何が原因で、ギーツに勝てないのだ。
いや。ギーツならまだしも、何故、あんな能力と立場しか取り柄のなかった女に負けたのだ。
永遠に正解を導き出せぬ問答をしながら、メラはみっともなく口を開いた。
「ぁ、ぃ、いやだ、いやだっ!
俺が死ぬ訳、俺が滅びるわけがねぇんだ!!
なんで、なんで…、なんであいつに、あいつらに勝てねぇ、あぁあ、ぁ、ぐぁああああああっ!?!?」
メラが存在ごと破壊され、完全に消える。
と。そこから光が炸裂し、幻想郷中を駆け巡った。
決着。勝者、仮面ライダーギーツカグラ。
デザイアグランプリルール
願う限り、必ず叶う。それを「いつ」にするかは自分次第。
願符「夢想天生」…仮面ライダーギーツカグラが使うスペルカード。その弾幕は、集まった願いの数だけ美しさを増す。よって、「この世で最も美しい弾幕」。美しさを競う弾幕ごっこにおいて、これ以上は存在しない。博麗 霊夢がそう願い、浮世 英寿が叶えたのだから。