「どうも、ネオンTVです!ぴかり!
今日は、お友達が遊びに来てまーす!」
鞍馬家の近辺に位置する公園にて。
どう見てもコスプレとしか形容できない集団を前に、ぞろぞろと人が集まる。
そんな視線も気にせず、袮音に呼ばれた少女らは、とある1人を除き、カメラに満面の笑みを浮かべた。
「どーもー!お友達のお燐だよー!」
「お空でーす!」
「こいしだよー!ほら、お姉ちゃんも!」
「い、いや…。私、こういうの苦手で…、あもういいや。さとりです」
「今回はこの4人と一緒に新曲、踊っていきまーす!」
「「「ふぅ〜っ!!」」
「は、あ、いや、えと…。
わかりました踊ります…」
皆できゃいきゃいと騒ぎながら、企画を進行していく様を、キューンがカメラ越しに見守った。
♦︎♦︎♦︎♦︎
場所は移り、とあるキャンプ場にて。
日傘の下で優雅に佇む少女が、目の前で肉を焼く道長に声をかける。
その視線は真っ直ぐに、道長が焼いている、食べごろの牛タンに注がれていた。
「道長。あーん」
「自分で食え。いい歳だろ」
この「あーん」は、「食べさせてあげる」という奉仕的な意味ではなく、「食べさせろ」という命令的な意味である。
道長がそれをバッサリと切り捨てたにもかかわらず、少女はしつこく彼にねだった。
「あーん」
「だから…」
「あーーーーん」
「……わかった、わかったから。レモンと塩でいいか?」
「それでいいわ。早く。あーん」
「このガキ、可愛げがねぇ…」
言われた通りに、レモン汁に潜らせ、塩を振った牛タンを、少女の口に放り込む道長。
彼女はくにくにと牛タンを噛みながら、笑みを浮かべた。
「あら。なかなか美味しいのね、これ」
「…道長様。お疲れでしょうし、私が代わりましょうか?」
給仕服を纏う少女が、申し訳なさそうな表情を浮かべ、腰を上げる。
道長はそれを制するように、彼女に肉が乗せられた紙皿が渡された。
「客にンなことさせる社会人いるかよ」
「みっちー!私にも、私にも!」
「あ、私にもお願いしまーす。
ちょっと焦げがつくくらいで」
「私は野菜中心でお願い。あと、お肉は脂身の少ない部位以外は食べられないから」
「…ったく。ガキを持った気分だ…」
相手ははるか年上だが。
そんなことを思いつつ、道長はタレが染み込んだカルビを網に乗せた。
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「はい、特製たぬき蕎麦、お待ち!」
「いよっ、待ってました!」
とある蕎麦屋にて。
置かれた器を前に顔を綻ばせ、箸を手に取る景和。
その周囲では、なんとも奇怪な服装の少女らが、出汁香り立つたぬきそばを前に喉を鳴らした。
「では、いただきます」
「いただきまーす!」
少女らが合掌するとともに、景和もまた声を弾ませ、そばを啜る。
世界一美味いたぬき蕎麦は、世界一美味い。
そんな当たり前のことを思いながら、景和は息を吐いた。
「試験、来週かぁ」
「警察官になるための試験…でしたね。
不安なのですか?」
「不安といえば、不安かなぁ…?
勉強の方にはないんだけど、面接が…」
想起する、惨憺たる就活生時代。
面接官に目標が抽象的すぎることをこっぴどくなじられ、何度も祈りを捧げられた。
デザイアグランプリに参加してからは、そちらにばかりかまけていて、碌な就活など出来ていない。
不安要素ばかりである。
今の自分を恥じているわけではないが、それでも不安は拭いきれず。
そんな表情を浮かべていると、メガネをかけた少女が箸の先を彼に向けた。
「あんまり暗い顔をするでない!
せっかくのたぬきそばが不味くなってしまう!」
「そーだそーだ!そもそも、根っからのお人よしなお前が通らなかったら世界終わるわ!」
「こらっ!…ウチの2人がすみません」
「……いや、大丈夫。
ちょっとは自信持てた、かな」
「通らなかったら世界の終わり」とまで言ってのけた少女に、景和が笑みを向ける。
彼女はそれを大して気にした様子もなく、かき揚げを店主に頼んでいた。
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「お、魔理ちゃーん!初公演に来てくれてサンキューな!」
その頃、場末のライブハウスにて。
ちらほらと人だかりができる中、衣装に身を包んだウィンが魔法使いのような出立ちをした少女に歩み寄る。
少女は彼と「うぇーい!」と手を叩き、爛漫な笑みを浮かべた。
「こういう馬鹿騒ぎは大好物だからな!
しかもタダで来れるってんだから、こりゃもう行くしかねぇって!」
「タダってか、俺持ちだけどな」
「私にとっちゃタダだぜ!」
少女の満足げな笑みに、ウィンはその笑顔を挑戦的なものへと変えた。
「じゃ、思わず金を落としたくなるような、パンクなロックを聴かせてやるぜ!」
「おお、言うなぁ!
私の財布の紐は固いぞ〜?」
「そっちも言ったなー?
よーし!帰る頃には魔理ちゃんのサイフ、スカンピンにしてやる!」
言って、ウィンは楽屋へと戻っていく。
魔理沙はそれに手を振ると、そばに控えていた少女の手を取った。
「黒ツム、さっさと入るぞ!
最前列でヤジ飛ばしてやろーぜ!」
「…ヤジを飛ばすのはどうかと思いますが」
「知らねーのか?こういうのはなぁ、楽しんだもん勝ちなんだぜ!」
黒いドレスの少女が、魔法使いのような出立ちの少女に引きずられていく。
ライブ開幕まで、あと5分。
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「んー…っ!うまっ…!
外の世界って、これを気軽に食えるのねー。
初めて羨ましく思ったわ」
その頃、外の世界の博麗神社にて。
石段に座り、数種のピザを頬張る霊夢に、『DoNe』の判が押されたデザイアカードを指に挟んだ英寿が歩み寄る。
英寿はそこに書かれた願いに目をやり、霊夢に問いかけた。
「『幻想郷を救った仮面ライダーたちと、気軽に会える世界』…か。
本当にこの願いでよかったのか、霊夢?」
「妖怪とか、神とか、幻想郷とか、外の世界とか、そんなの関係なく、自由に友だちと会える世界。
そんな世界があってもいいじゃない。私の願いなんだから」
霊夢は言うと、指についたチーズを舐め取る。
己が理想の世界を満喫している彼女に、英寿は笑みを浮かべた。
「紫や隠岐奈あたりは、複雑な顔してそうだけどな」
「叶えたの、アンタじゃない。
お小言はアンタだけが聞いといてー」
「たっぷり聞かされたよ。
おかげで、寿司を奢る羽目になった」
言って、かつて他の仮面ライダーと寿司を食べたことを想起する英寿。
一方で霊夢は、ピザを食べている途中だと言うのに、「寿司」という魅惑を放つ単語に目を輝かせた。
「寿司!私、食べたことないのよね!
やっぱ美味しい?」
「お前は気にいるだろうな」
「へぇー?そんなに美味しいんだー?
いい店連れてってよ、元スターオブザスターオブザスターズ!」
「…ああ。約束するよ」
英寿は呆れながらも、霊夢と約束を交わす。
2人は小指を結ぶと、視線を摩天楼が立ち並ぶ、幻想郷とは違う世界へと向けた。
「…来週の宴会、期待しといて。
この景色が霞んで見えるほど、楽しい幻想郷を魅せてあげるわ」
「そっちこそ、期待しておけ。
いつか叶う、幻想郷も外の世界も関係ない、『誰もが幸せになれる世界』を」
デザイアグランプリ及び幻想郷ルール
願った分だけ、世界は幸せを受け入れる。
短期連載でしたが、ご愛読、ありがとうございました。
気が向いたら番外編を出します