理想の世界を叶える程度の能力   作:鳩胸な鴨

4 / 20
英寿出ないよ。


異変Ⅲ:仮面ライダーたちの来訪

「は、はぁ…。はぁっ…。

なんで、こんな、長いんだ…!」

 

1時間後、とある山奥にて。

就活時から使っていたリュックに荷物をまとめ、それを背負った景和は、ひいこらと軽い悲鳴を上げながら、石段を登る。

少なくとも、数十段はとうの昔に登った。

明らかに整備されていない石段に辟易しながら、景和は視線を上に向ける。

と。「博麗神社」と書かれた鳥居が目についた。

 

「こんなとこに神社なんてあったんだ。

ジーンもよく知ってたなぁ」

 

それなりにここいらの暮らしは長いが、こんな所に神社があるなんて、初めて知った。

景和はそんなことを思いつつ、鳥居をくぐり、境内を見渡す。

石段と違い、神社は手入れされているものの、人気がない。

まるで、ここだけが世界から切り取られたような「別世界感」。

そんな慣れない感覚に一種の興奮を覚えていると、背後から足音が聞こえた。

 

「ボーッと突っ立ってんな。邪魔だ」

 

景和がそちらを向くと、無愛想な青年が眉間に皺を寄せ、こちらを睨んでいた。

「ごめん」と軽く頭を下げ、景和は慌てて彼の前から退いた。

青年の名は吾妻道長。

景和と同じく、仮面ライダーとしてデザイアグランプリを戦い抜いた1人である。

 

「そっちもジーンに呼ばれたの?」

「ああ。おかげで有給がパァだ」

「…あ、そっか。働いてたんだっけ」

「大きな案件が終わったばっかで、ようやく取れた休みだったんだぞ。

…そういうお前こそ、試験勉強は大丈夫なのか?」

「まぁ、ぼちぼち、かな」

 

そんな他愛のない会話を交わしていると。

こっ、こっ、と2人分の足音が響いた。

 

「あぁ、もう!石段キっツい!!

どんだけ続いてんのこれぇ!!」

「デザグラを戦い抜いたとは思えない弱音だな」

「はぁ!?アンタも足震えてるじゃない!」

「……こっちの体に慣れてないだけだ」

「こっち見て言いなさいよ!!」

 

ぎゃーぎゃーと、2人の男女が言い合う声が、鳥居の下で響く。

景和と道長は顔を見合わせ、呆れを吐き出した。

 

「こっちまで聞こえてるし…」

「またスッパ抜かれても知らねぇぞ…」

「はーっ…。やっと着いたぁ。

…あれ?そっちも呼ばれてたの?」

 

姿を見せたのは、どことなく育ちの良さを感じさせる出立ちの女性。

その隣には、これまた無愛想な顔の青年が、呆れた顔を見せていた。

 

「ジーンがあれだけ焦ってたんだ。

呼ばれていても不思議はないだろう」

「はいはい、そーですねー」

 

女性の名は鞍馬 袮音。

彼女もまた、仮面ライダーとしてデザイアグランプリに臨んだ1人である。

その隣にたたずむ男の名はキューン。

袮音の元スポンサーであり、現在では彼女の配信業のサポートを勤めている。

彼らは景和たちの元へと歩み寄ると、近況報告という名の雑談に花を咲かせる。

と。話を初めて数分も経たないうちに、神社の影からジーンが姿を現した。

 

「あ、ジーン」

「来てくれてありがとう。

タイクーン、ナーゴ、バッファ」

 

タイクーン、ナーゴ、バッファ。

この三つは順に、景和、袮音、道長の仮面ライダーとしての名である。

ジーンに呼ばれた3人は、先ほどまでの和気藹々とした雰囲気から一転、張り詰めた空気を纏った。

 

「早速で悪いけど、説明している時間も惜しいんだ。

少し痛いけど、我慢してくれ」

 

ジーンは言うと、腰にさげていた銃を取り出し、その銃口を彼らに向ける。

理解し難い行動を取るジーンを前に目を剥く3人。

キューンはそれを庇うように前に出ると、同じく銃を構えた。

 

「…何をする気だ?」

「少し、君たちのデザインをいじる。

あとで戻すから、許してくれ。

一刻を争う事態なんだ」

「………わかった」

「ちょっと!?」

 

引き下がったキューンに、袮音が抗議の声を上げる。

と。間髪入れず、ジーンの銃から三本の線が走り、3人の体に触れた。

 

「うぉあっ…、あれ?…なんともない?」

「お前!俺たちに何をした!?」

 

道長が声を張り上げると、ジーンは申し訳なさそうに眉を顰める。

「どう説明したものかな」と暫し悩んだのち、ジーンは口を開いた。

 

「少しばかり、君たちの存在を『曖昧』にさせてもらった。

気絶することでも『入れる』けど、こっちの方が早いからね」

「入れる…?」

 

景和が疑問に思うのも束の間。

ぐにゃり、と境内の景色が歪む。

3人がそれに困惑する前で、ジーンは言葉を続けた。

 

「頼む。どうか、英寿と協力して『神殺しのメラ』を止めて…」

『おー。わざわざ正規の方法で入ってくるなんて、肝据わってるねぇ。

そこまでやってもらって生憎だけど、お前らみたいな不安要素はお呼びじゃないの』

「っ!?」

 

その声に、ジーンが弾かれたように歪んだ空を見上げる。

が。そこに声の主の姿は見えず、困惑に眉を顰める。

キューンや景和たちも同じようにあたりを見渡すも、声の主の姿は見えない。

どういうことか、と疑問に思っていると。

 

『ま、このまま勝ち確のヌルゲーやるってのもつまんねーって思うだろ?』

 

唐突に、5人の足元に「スキマ」が広がった。

 

「「「「「!?」」」」」

『だから、特別に招待してやるよ。「俺の世界」に』

 

5人は悲鳴をあげることもできず、スキマに飲み込まれる。

数秒もするも、スキマも空間の歪みも消えてなくなり、神社に静寂が訪れた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「だっ!?」

 

どんっ、と、道長に衝撃が走る。

この感覚、覚えがある。フローリングに思いっきり尻を叩きつけた痛みだ。

道長は衝撃と痛みが響く尻をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。

 

「ってぇ…。どこだ、ここ?」

 

目につくのは、紅。

どこを見ても目が痛くなりそうな紅で彩らられた空間を前に、道長は首を捻る。

誰がデザインしたのかはわからないが、悪趣味な色彩だ。

道長がそんなことを思っていると。

ごうっ、と音を立てて、光弾がこちらへと迫るのが見えた。

 

「っ…!?」

 

道長は一瞬だけ驚愕を露わにするも、咄嗟に身を翻して光弾を避ける。

が。光弾はこの一発で終わることなく、弾幕として道長へと襲いかかった。

どう考えても殺しに来ている。

そう判断した道長は、デザイアドライバーを腰に巻き、紫色の物体を取り出した。

 

『DESIRE DRIVER』

『ENTRY』

 

「誰だか知らねぇが…。

これ以上やるってんなら、ぶっ潰す」

 

『SET』

 

道長は叫ぶと共に、デザイアドライバーの右側に紫色の物体…「ゾンビレイズバックル」を装填する。

すると、彼の右側に、やたらとポップなフォントで『ZOMBIE』と言う文字が浮かび上がった。

道長はルーティンをこなし、左腕を前に構えると、覚悟を決めたように呟く。

 

「変身」

 

それは、自分を変える言葉。

ただの吾妻道長を捨て、仮面ライダーとなる覚悟の現れ。

道長がレイズバックルのレバーを倒すと、文字が鎧へと変貌し、黒の鎧を纏った彼の体へと装填された。

 

『ZOMBIE』

 

大きな鉤爪に覆われた左腕。

右手に鎮座する、獲物の肉を削ぎ落とし、叩き切ることに特化した剣。

闘牛を模した紫の仮面。

彼を構成する全てが、どことなく禍々しさを感じさせる。

変身した道長…いや。『仮面ライダーバッファ』は、その体に炸裂した光弾に怯むことなく駆け出した。

 

『READY FIGHT!』

 

「……やっと見つけたわよ、牛」

「あぁ?」

 

が。その足は、即座に止まることとなる。

廊下の奥から響いたのは、少女の声。

まだ10代前半くらいだろうか。あどけなさが残る声音だ。

しかし、そこに込められた威圧感は尋常ではない。

かつての桜井 景和を彷彿とさせる、ドス黒い感情が渦巻く声。

バッファは仮面の下で顔を歪めながら、声の主人を見上げた。

 

「………は?」

 

そこに居たのは、声の年齢に合致する風貌の少女だった。

だがしかし、ただの少女ではない。

ドレスの背から、コウモリのような翼が広がっているのだ。

彼女は真紅に染まった双眸を細め、弾幕を展開した。

 

「私の家族に手を出した報いよ。

骨も残さず、死になさい」

「ちっ…!やるしかねぇのか…!!」

 

バッファは襲いくる弾幕を引き裂きながら、少女…館の主人、レミリア・スカーレットの元へと駆け出した。




デザイアグランプリルール

ライダーの中には、基本のものよりスペックが高い、動物を模した仮面の「当たりライダー」が存在する。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。