少し時は戻り、英寿の隠れ家から少し離れた場所にて。
迂闊に空を飛べない状況下であるため、3人は徒歩で獣道を掻き分け、森の中を進む。
そんな中、魔理沙が疑問を口にした。
「仲間を呼ぶって、外の世界からか?」
「いや、そっちは『公認のファン』に任せてる。出入りの条件も、既に知っていたみたいだからな。
それよりも俺たちがやるべきは、『幻想郷の中で味方を増やすこと』だ」
「どういうこと?」
霊夢が眉を顰めて問うと、英寿は手のひらに視線を落とし、答えた。
「俺の力は、願いの数と強さによって、どこまでも可能性が広がっていく。
つまり、俺が…、『俺たちがメラに勝てると信じてくれる仲間』が居ないと、紫の力を奪ったメラには勝てないってことだ」
少なくとも、前回はそうだった。
搾りカスと揶揄された自分の中に残った、たった一つの強さである「心」。
心が紡いだ絆が奇跡を起こし、想いの数だけ力を増す仮面ライダー…「ギーツワンネス」へと至った。
そんな奇跡があって、ようやく倒せた敵だ。
今回もまた、同等の奇跡を手繰り寄せねば勝てないと思った方がいい。
英寿が気を引き締めていると、霊夢が面倒くさそうに呟いた。
「…私、そういうノリ、あんまり得意じゃないんだけど」
「幻想郷を守りたい。
そんな気持ちくらいはあるだろ?」
「…否定はしないでおくけど、それが勝敗に結びつくとは思わないわよ」
気恥ずかしいのか、そっぽを向く霊夢。
霊夢にとって、力とは「生まれ持った才能」である。
暴力的なまでの才能を誇る彼女にとって、力は他人から与えられ、託されるものではなく、当たり前にそこにあるものでしかない。
だからこそ、英寿の言う「想いが力になる」と言う点が、どうしても理解できなかった。
「今はそれでいい。
いつかわかるさ。1人の力だけで、全てが決まるわけじゃないってな」
「今はたった1人の力にいいようにやられてるじゃないの。説得力ないわよ」
吐き捨てた霊夢に顰蹙を見せることなく、英寿は歩みを進める。
暫くして、1人だけ気まずさを感じていた魔理沙が、英寿に声をかけた。
「ところで、どこ向かってんだ?」
「仲間との合流ポイントだ。
博麗神社が占拠された時のため、あらかじめ決めておいた」
「周到なのね、あんた」
「伊達に2000年も生きてきたわけじゃな…」
英寿は言い終えるよりも先に、足を止める。
霊夢も同じように足を止め、魔理沙も遅れて止まった。
「……来てるわね」
「また『ライダー』ってのか?」
「いや…」
『DESIRE DRIVER』
『ENTRY』
英寿は言うと、IDコアを装填したデザイアドライバーを腰に巻く。
物陰から出てきたのは、なんとも奇怪且つ禍々しい出立ちをした怪人。
それが群れを成し、揃って顔を右往左往させていた。
数多の妖怪を退治してきた2人でも、見たことのない存在である。
「なんだ、あれ?」
「ジャ?」
魔理沙の問いに反応するように、彼らはどこに瞳があるかもわからない顔を一斉にこちらに向ける。
軽く悍ましい光景である。
だが、この程度の恐怖は、幻想郷において日常茶飯事。
2人は動揺することなく、訝しげに眉を顰める。
と。その間に入るように前に出た英寿が、銃を模したバックル…マグナムレイズバックルを構えた。
「アレはジャマト。早い話、知性と害意を併せ持つ植物だ。
メラがけしかけてきた…、というより、ばら撒いたヤツらだろう。
狙いは言わずもがな、だな」
「要するに敵ってことよね。
遊ぶつもりもないし、さっさと片付けましょ。魔理沙、マスパは無しね。バレるし」
「えぇー…」
『SET』
英寿がバックルを装填するとともに、その右側に『MAGNUM』の文字が浮かぶ。
ちょうど文字が浮かんだ場所に立っていた魔理沙は、「うぉっ!?」と悲鳴をあげ、思わず一歩下がった。
英寿はそれを気にすることなく、ルーティンをこなし、狐のような形を作った手をジャマトに向け、指を鳴らす。
「変身」
己を変える言霊を放ち、英寿はバックルのシリンダーを回し、引き金を引く。
と。ベルトから弾丸が何発か放たれ、不規則な軌道で文字へと着弾する。
破壊された文字からは白の鎧が形成され、英寿の背後に現れた機械の腕がそれを掴む。
それと同時に狐を模した面が頭上に現れ、共に黒く染まった体へと覆い被さった。
『MAGNUM』
『READY FIGHT!』
仮面ライダーギーツ、マグナムフォーム。
名の通り、銃撃戦を得意とする形態である。
ギーツは腰に下げた拡張武装…「マグナムシューター40X」を手に取り、ジャマトに向けた。
「さあ、ここからがハイライトだ」
「なんだその決め台詞!?
はちゃめちゃカッケぇ!
なぁ、霊夢!私らも真似してみようぜ!」
「ヤ」
その会話を皮切りに、ジャマトがこちらへと迫ってくる。
幻想郷らしい、なんとも締まらない開戦であった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「だぁっ!?」
時を同じくして、人里より少し離れた場所に位置する寺院…命蓮寺にて。
スキマから落ちてきた景和が地面へと叩きつけられ、軽く悲鳴を上げる。
仮面ライダーとして戦っていた以上、この程度の落下は慣れっこだが、流石に石畳に尻を打ち付けるのは痛い。
景和は「いったぁ…」と、響く痛みと衝撃に顔を歪め、ゆっくりと立ち上がった。
「どこだ、ここ…?」
あたりを見渡すも、景色に覚えがあるわけもなく。
景和は首を傾げ、寺院の方へと目を向けた。
古めかしい装いである。それなりに歴史のある寺なのだろうか。
そんなことを思いつつ、景和は声を上げる。
「すみませーん!
どなたかいませんかー!?」
せめて、ここが何処なのか、情報が欲しい。
景和がそう望むのに反し、現実は非情であった。
暫く待って返ってきたのは、静寂のみ。
不安を掻き立てられた景和が「留守なのかな?」と首を捻っていると。
唐突に、景和の頬を光弾が掠めた。
「誰だ!!」
『DESIRE DRIVER』
『ENTRY』
仮面ライダーとして戦った経験から、敵意に敏感になった景和は、即座にIDコアが装填されたデザイアドライバーを腰に巻く。
相手の尖兵か、はたまた別の存在か。
少なくとも、ジャマトの攻撃ではない。
景和は考察を広げながら、視野を広げ、追撃を警戒する。
10秒、20秒と時が過ぎていく。
景和はいつ敵が現れてもいいよう、手に緑色のレイズバックルを握った。
「…あれ?」
おかしい。待っても、追撃が来ない。
どうしたのだろうか、と景和が疑問を抱くや否や。
「おい。お前もあの『タヌキ』の仲間か?」
「っ!?」
背後から、少女の声が響いた。
景和は思わず飛び退き、少女から距離を取る。
なんとも不思議な出立ちである。
背から伸びる、鎌のような赤い翼と、矢印のような青の翼。
到底、この世のものとは思えない。
が。なにより目につくのは、その形相。
かつての自分を彷彿とさせる、怒りに満ち満ちたその双眸が、自分を強く睨め付けているのがわかる。
景和は彼女の問いに、首を横に振った。
「いや…、今さっき来たばかりで、ここが何処かもわかってないんだけど…」
「どうだかな。タヌキは人どころか、妖怪や神だって化かす。
私が塀の入り口でずっと警戒していたのに、易々とこの中に侵入できたのはどう説明するんだ?」
「だから、俺だっていきなり落とされて…」
「じゃ、その腰当てはなんだ?
それは聖を…、この命蓮寺を襲った人間たちが巻いていたものと同じじゃないか」
まずい。言葉を交わすごとに、自分と彼女の間に溝が広がっていくのを感じる。
少女…封獣 ぬえは、軽く浮くと、自身の周囲にUFOを模した弾幕を展開した。
「嘘に塗れた弁明は聞いてやった。
正体不明の飛行物体に怯えて死ね」
「そう言われて、おとなしく死ぬわけないだろ!」
『SET』
緑のバックル…ニンジャレイズバックルを装填し、景和はルーティンをこなす。
それに呼応するように、彼の右隣には手裏剣に重なった『NINJA』の文字が浮かび上がる。
迫る弾幕に吠えるように、景和は叫び、バックルのレバーを引いた。
「変身!!」
ただの警察志望から、仮面ライダーへと変わるための言葉。
その言霊が形になった手裏剣が文字を穿ち、鎧を形成する。
弾幕が景和の身にあたる直前、タヌキを模した面とその鎧が、彼の体へと被さった。
『NINJA』
『READY FIGHT!』
仮面ライダータイクーン、ニンジャフォーム。
機動力で相手を撹乱し、鋭い一撃を叩き込む戦闘を得意とした形態である。
タイクーンは腰に下げた拡張武装…「ニンジャデュアラー」を構え、封獣 ぬえを睨んだ。
デザイアグランプリルール
色の付いた仮面のライダーは敵である。