「タヌキ…っ、いや、色が違う…?」
タイクーンの顔を前に、ぬえが少しばかり戸惑いを見せる。
だが、攻撃の手は緩まず、変幻自在の弾幕がタイクーンへと襲いかかった。
無論、スペルカードルールが適用されているはずもなく。
「避けることが困難」というレベルでは済まされない密度で、一撃必殺の弾幕が構築されている。
が。タイクーンはその隙間を縫い、ぬえへと駆けた。
『ROUND 1・2・3』
ニンジャデュアラーのディスク部分を軽く弾に掠らせ、数回転させる。
それに呼応し、ニンジャデュアラーの刃を覆うように、エネルギーが放出された。
「はぁあ!!」
『TACTICAL FINISH』
飛び上がった忍の二太刀が、ぬえの体へと迫る。
だが、ぬえもまた、わかりやすく危険な一撃を易々ともらうほど甘くはない。
一撃目は軽く身を逸らし、二撃目は顕現した槍でいなす。
あとは落下していくだけのタイクーンに向け、ぬえは空中では避け切れないであろう弾幕を展開した。
「狙いが一直線過ぎるわ。
タヌキにしては頭がないわね」
そんな罵倒を吐き捨てるや否や、タイクーンの体を弾幕が穿つ。
これで死なないわけがない。
勝利を確信したぬえは、イタズラっぽい笑みを浮かべ、落下していくタイクーンを見下ろした。
ぼふんっ、と、その体が煙をあげ、丸太へと変わるまでは。
「………っ!?」
「聞いてたろ。『忍者』って」
『TACTICAL SLASH』
ニンジャフォームの最大の特徴は、多彩な搦手にある。
つまるところ、最初から「変わり身」だったのだ。
ぬえに油断はなかった。
ただ、落ち度があるとすれば、「ニンジャフォームの特性を知らなかった。思い至ることができなかった」という点に限る。
ぬえの背後へと迫っていたタイクーンは煽りを返し、無防備な背中に斬撃を叩き込む。
「なっ、めんなぁ!!」
「ぐぁああっ!?」
ぬえはその激痛に耐え、至近距離で光弾を打ち込んだ。
化かされた。その事実は、ぬえにとって許容できるものではなかった。
ぬえはただでさえ怒りに染まっていた形相を歪め、怨嗟を込めて吠える。
「鵺の私をよくも化かしてくれたな!
タヌキ鍋にしてやるわ!!」
「……やっぱり、こっちの方がいいか」
『SET』
タイクーンはニンジャレイズバックルを外すと、懐からコマンドツインバックルの片割れを取り出し、左側に挿す。
チャージまで時間がかかるのが難点だが、そんな弱音を吐いていられないほどに、飛んでる相手への攻撃手段が乏しい。
バックルのボタンを押すと共に鎧が解除され、彼の眼前に『RASING』の文字が顕現する。
それと同時に、どこからか飛来した両刃の剣が周囲を飛び回り、タイクーンの手へとおさまった。
『GREAT』
『READY FIGHT!』
タイクーンは迫り来る弾幕を剣…拡張武装「レイジングソード」で裂く。
それに対し、ぬえは怒りに満ちた形相から一転、小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「あははっ、なにそれ!さっきより貧相なことになってんじゃない!
正体不明『義心のグリーンUFO襲来』!!」
「よしっ…。この弾を切るだけでも溜まってる…」
ぬえの嘲笑を無視し、タイクーンは刃の光が蓄積していることを確認する。
が。じっくりと確認する暇もなく、数機のUFOがレーザーと弾幕を放つ。
タイクーンは弾幕のみを迎撃し、レーザーは身を翻し、避けに徹した。
「くそっ…!」
「なんのつもりかはわかんないけど…、弾幕だけが攻撃だと思わないことね!!」
「ぐぁっ!?」
タイクーンが避けた先に移動したぬえが、刺突を繰り出す。
もろに受けたタイクーンは派手に転がり、何発かの弾幕を喰らった。
「ぅ、ゔぐっ…」
「やっぱり。その黒い姿、なんの能力もない雑魚なんでしょ?
さっきの方がタフだったみたいね」
「…、仕方ない、か」
このまま弾幕の迎撃に集中していても、敵に狙いを悟らせるだけだ。
そう判断したタイクーンは、自身の身に刃を突き立てた。
「…………は?な、なにやって…」
『FULL CHARGE』
ぬえが困惑している隙に、タイクーンがレイジングソードに付属したバックルのレバーを倒す。
と。ようやく取り外せたバックルを右側へと装填した。
『TWIN SET』
右側には『CANNON』の文字が、左側には『JET』の文字が浮かび上がる。
なにか、まずい。
そう悟ったぬえは、咄嗟に己の切り札を顕現させた。
「恨弓『源三位頼政の弓』ィ!!」
矢のような鋭い弾と、それが分裂した小さな弾幕がタイクーンへと迫る。
が。それよりも早く、タイクーンがレバーを引き、文字から形成された鎧を纏った。
『TAKE OFF COMPLETE』
『JET AND CANNON』
『READY FIGHT!』
弾幕に包まれ、その姿が隠れたタイクーン。
だが、ぬえは決して安堵することなく、さらに弾幕を激化させる。
流石に死ぬ。いや、死んでいてほしい。
そんな願いは、放たれた二条の光によって、弾幕諸共吹き飛ばされた。
『COMMAND TWIN VICTORY』
「はー…。間に合った…」
「んなっ…!?」
そこに立っていたのは、歩く砲台。
両肩に伸びた砲身に、その負荷に耐えうるべく腰から伸びた刃。
仮面ライダータイクーン、コマンドフォームキャノンモード。
鈍重な体と引き換えに、高い砲撃性能を誇る、現在のタイクーンが唯一有する遠距離対応装備である。
タイクーンはレイジングソードを構えつつ、バックルのレバーに付属したボタンを押す。
『ROCK ON』
タイクーンの目元を覆うバイザーが、ぬえの姿を捉える。
ぬえの敗因は一つ。「鵺として、化かし合いを仕掛けなかったこと」。
いくら激昂していたとはいえ、自身の本分を忘れた妖怪が勝てる道理はない。
今更ながらにそのことに気づいたぬえは、屈辱と怒りに顔を歪め、タイクーンを睨んだ。
「くそっ、くそっ…!!」
「まずは、大人しくしてもらう!!」
タイクーンがレバーを引こうとした、その時だった。
「おやめなさい…!!」
弱々しくも、凛とした声が響いたのは。
両者がそちらを見ると、包帯をそこらじゅうに巻いた少女が、柱に身を寄せながらこちらを睨んでいる。
それを見たぬえは、槍を投げ捨て、慌てて少女へと駆け寄った。
「聖!安静にしてないと…!」
「…い、いえ、大丈夫です…。
それよりも、ぬえ…!彼の話を聞かずに襲いかかるとは、どういう了見ですか…!!」
「あ、いやっ…。でもあいつ、聖を変な紫の剣で切ったたぬきで…」
聖と呼ばれた少女の叱咤に、思わず反論するぬえ。
それに対し、タイクーンは変身を解き、彼女に問いかけた。
「紫…。もしかしてそれって、刃が唸るし、『ポイズンチャージ』とか言ってなかった?」
「ほらっ!アイツ、武器のことも知ってるし!」
「いや、俺…っていうか、タヌキのライダーでその武装を持ってる人って、居ないと思うけど…。
あーっと、ほら。あと一つ俺が持ってるバックルだけど、違うだろ?」
言って、景和は懐から刀を模したバックルを取り出し、ぬえに見せる。
ぬえはそれと景和を見比べ、ぱちぱちと目を丸くした。
「……………あれぇ?」
「ぬ〜え〜…?」
「あ、いやっ。ぇえっと…。
こ、こいつ、嘘ついて聖を倒そうと…」
「してたらこの場でそうしてるよね?」
「……ご、ごめんなさぁあああいっ!!」
「こらっ!まちなさ…っ、痛ぅ…」
その場から逃げ出し、寺の中へと逃げ込んだぬえを追おうとする聖。
だが、傷が痛んだのか、彼女はその場でうずくまり、呻き声を上げる。
景和は慌ててそれに駆け寄り、「大丈夫ですか!?」と心配をあらわにした。
「申し訳ありません…。
この異変が起きて、私が倒れてからというものの、あの子もかなり気が立ってまして…。
どうか、お赦しください…」
「いえいえ、そんな!その、話し合いを早々に諦めた俺にも非がありますし…」
礼節がしっかりとした少女の言葉に、思わず畏まってしまう景和。
と。そんな2人の交流を邪魔するかの如く、閉じていた戸が破壊された。
「なっ…!?」
「まさか、あの黒い戦士たちが…!
……いや、あれは…?」
少女の予想に反し、残骸の奥から姿を見せたのは、数えるのもバカらしくなるジャマトの大群。
景和は少女…この命蓮寺の住職である聖 白蓮を庇うように前に出た。
「ジャマトまで…!?
一体、ここで何が起きてるんだ…!?」
『SET AVENGE』
景和は疑問を吐き捨てながら、手に持っていた刀のバックルをベルトに装填した。
デザイアグランプリルール
ジャマトは邪魔者を排除すべく動くサポートキャラでもある。