「はぁ、はっ…。息、切れてるわよ、牛…」
「そっちもだろうが、コウモリ女…」
「吸血鬼よ…」
紅魔館にて。
最後のジャマトが爆散するのを前にして、息も絶え絶えに2人が言い合う。
かれこれ数時間は戦い続けたかのような、凄まじい疲労が体を襲う。
2人は互いに大の字に倒れ、武装を解いた。
「…人間にしちゃ、悪くない動きだったわね。途中でくたばると思ってたわ」
「ゾンビだぞ。くたばるかよ」
「……牛のゾンビ、ねぇ。不味そうね」
少し休憩したことで、ある程度は体力が戻ったのだろう。
2人は体を起こし、ジャマトたちが爆散した跡を見やった。
「あなた、こいつらのこと何か知ってるっぽいわね。洗いざらい吐きなさい」
「モノを頼む態度じゃないな、コウモリ女」
「レミリアよ。レミリア・スカーレット。
牛、あなたの名前は?」
「吾妻道長。バッファでもいい」
「一文字も掠ってないじゃない」
「変身したら『仮面ライダーバッファ』って名前なんだよ」
傲慢に振る舞うレミリアに、道長はぶっきらぼうに答える。
どことなく、あのいけ好かない女を想起させる立ち振る舞いが多い気がする。
見た目の割に歳を食ってる女は、揃って人を食ったような態度になるのか、と思いつつ、道長は口を開く。
「知りたいのはこっちだ。
ここは何処で、お前は何なのか。
何故、『神殺しのメラ』が使ってたジャマトがいるのか。
何故、俺たち以外の『仮面ライダー』がいるのか。
わからないことだらけなのは、お互い様ってわけだ」
「そう。じゃあ、情報交換も兼ねて、お茶にしましょうか。
…咲夜は怪我で寝込んでるし、無事なメイドはいたかしらね」
レミリアは言うと、崩落した館の残骸を避け、廊下を歩いていく。
道長は「気にしろよ…」と呆れつつ、後ろに続いた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
その頃、英寿たちはというと。
合流ポイントを離れ、ウィンが案内するままに、いまだに森の中を歩いていた。
足跡だけが4人の間に響く中、魔理沙がふと、疑念を口に出す。
「……ライダーに会わないな」
「そりゃ、避けてるからな」
「ちぇっ。まともに戦えてねーから、どのくらい厄介かは知っときたかったんだが」
言って、熱を帯びていない八角形の物体…ミニ八卦炉を遊ばせる魔理沙。
それに対し、ウィンは神妙な声音で釘を刺した。
「絶対に倒すなよ。
あのライダーは、一度でも負けたら死ぬ」
「…………は???」
少なくとも、「終幕のデザイアグランプリ」で潰し合っていたライダーはそうだった。
ただ一度の負けが、死に繋がる。
救いなのは、前回のように大量の監視者がいない事だろう。
呆然とする魔理沙を横に、同じく、険しい面持ちの英寿が続けた。
「ここじゃ、外から来た奴以外の人間が死ぬのは避けたいことなんだろ?」
「……そうね。幻想郷は人間の恐れ、敬う心があるからこそ保っている場所。
妖怪は人間に恐れをばら撒き、神は怯える人の信仰を集める。
人が力なき存在であるからこそ成り立っていたのに、妖怪、神に対抗できる力を人間全員が手に入れたともなれば…ね」
「あれ?その上に倒しちゃダメってことは…、もしかして、めちゃくちゃまずい?」
「アンタ、今更気づいたの?」
そう。メラはたった一手で、幻想郷のバランスをひっくり返したのである。
幻想郷の崩落は目の前。
忘れられた者の最後の砦は、今や砂上の楼閣に過ぎない。
そのことに気づいた魔理沙は、大量に冷や汗を流し、霊夢に詰め寄った。
「ど、どうすんだよ、霊夢!?
早くメラの野郎を倒さなきゃ…」
「だから、そのためにこうやって歩いてんでしょうが」
「幻想郷の危機に、ちまちま歩いてられっか!早く…」
魔理沙が箒に跨りかけた、その時だった。
『BUJIN SWORD STRIKE』
黒に煌めく斬撃が、木々を切り倒しながら、彼女の首へと迫ったのは。
それにいち早く反応したのは、魔理沙の近くに立っていたウィン。
ウィンは魔理沙を押し倒し、斬撃を躱す。
彼らが斬撃が飛んできた方を見ると、漆黒の鎧が刀を構え、佇んでいた。
「魔理沙っ!!」
「は、はへぇ…っ?」
「タイクーン…!?いや、少し違う…?」
仮面ライダータイクーンブジンソード。
タイクーンの専用強化形態だったはずだが、どうも様子がおかしい。
黒い鎧の中に所々残っていたはずの緑が、完全に黒く染まっているのだ。
その人形らしい所作も、景和…本来のタイクーンのものとは思えない。
ウィンがそんな疑念を抱く中、英寿は3人を庇うように前に出た。
「先にジーンたちと合流してくれ。
俺が足止めする」
「わかった。いくぜ、魔理ちゃん!」
「ま、魔理ちゃ…!?ちょっ、抱えんな!
自分で歩ける!歩けるからぁ!!」
「…ぷふっ」
ウィンに抱え上げられた魔理沙の悲鳴に、それに吹き出す霊夢。
その後ろ姿目掛け、黒のタイクーンが刀を振り下ろそうとする。
が。英寿はそれを手首を掴むことで受け止め、四角の物体にハンドルが伸びたバックルを取り出した。
「お前の相手は俺だ」
『SET』
♦︎♦︎♦︎♦︎
「お。『ジエンドタイクーン』が見つけたな」
その頃、幻想郷のはるか上空に佇むメラのアジトにて。
ギーツが激しく拳を打ち出す画面を前に、メラが口角を上げる。
メラは黒のIDコアが装填されたデザイアドライバーを腰に巻き、ソファから勢いよく立ち上がった。
「さぁてと。邪魔者が居ないうちに、さっさとゲットしないとな」
「待ちなさい…!!」
と。アジトから去ろうとしたメラに向け、怒気を孕んだ声が飛ぶ。
メラがそちらを見ると、傷だらけの紫が鬼にも勝る形相でこちらを睨め付けていた。
メラはそれに対し、黒の銃を突き出し、その引き金を引く。
どぅん、と重い音と共に、紫の腹部に穴が開き、そこから血液が吹き出した。
「あぐっ…!?」
「ギーツといい、お前といい、力のない搾り滓が吠えんなよなぁ。
キャンキャン煩いっての」
「ぐ、ぅ、ゔぅ…っ!」
激痛に崩れる紫に背を向け、メラがその場から消える。
残された紫は、屈辱と悔しさに嗚咽を漏らした。
「………」
黒のドレスを纏う少女が、どこか不思議そうな表情でそれを見つめていることに気付かず。
デザイアグランプリルール
敗者に先はない。