ソリテール様結婚しましょう…貴方が旦那様です。   作:ごすろじ

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▼第35話▶フリーレン釈放

 

 

 

――グラナト領。地下牢。

 

 

フェルンとシュタルクが面会を終え退室してから数十分後。

和睦の使者の一員である若い魔族は、フリーレンが幽閉されている屋敷へと足を運んでいた。

 

 

地下へと続く階段を降りれば、黴と湿気の匂いが鼻腔を刺す。壁に据えられた蝋燭が揺れるたび、染みついた古い汚れが濃淡を変えた。

石造りの空間は外界の陽光を拒み、肌を撫でる空気はじっとりと冷たい。

 

その薄暗い通路に、コツ、コツと靴音が反響する。

 

牢の見張りを務める衛兵は、油断なく得物を構えて音の主を待ち受けた。

だが、現れたのが魔族側の使者だと悟ると、槍の穂先を下げる。代わりに、嗜めるような声で静止の言葉をかけた。

 

 

「ドラート殿。このような所に来られては困ります。客室に――

 

最後まで言い終える前だった。

 

ピンッ、と甲高い音が石の空間に響き渡る。

 

極細の糸が弦のように撓み、弾けた。

目視すら許さぬ速度で衛兵の首筋へと迫る。

 

 

刹那。

 

 

瞬きにも満たぬ一瞬、若い魔族が魔法を行使する気配よりも早く――突風のような影が吹き抜けた。

 

衛兵の意識が追いつく前に、黒い陰がそこにいた。

 

傷だらけの無骨な掌が、衛兵を殺そうとしていた糸を素手で鷲掴みにしている。

極細のワイヤーが悲鳴を上げるように、ギリギリと軋む音を立てていた。

 

 

現れたのは執事服を纏った精悍な顔立ちの男。

しかし、皺一つない背広を着こなしていながら、その上から浮き出る隆々たる筋肉は、どこからどう見ても普通の従者のものではなかった。

 

魔族と衛兵の目が、同時に大きく見開かれる。

 

 

「お前、昨日俺の邪魔を――うがぁッ!?」

 

 

若い魔族がいち早く反応し、声を上げようとした。

だが、その口が言葉を紡ぎ終える前に、執事は既に拳を放っていた。

 

肉が潰れ、骨が軋む。

冷えた地下牢に、生々しい打撃音が木霊した。

 

魔族の身体が地面から浮き、吹き飛んでいく。

しかし執事の追撃は止まらない。握り締めた魔法の糸を強引に手繰り寄せ、引き戻される魔族の顔面に、再び拳を叩き込む。

 

カウンターを決めるように。地面に弾むボールを叩きつけるように。

無言のまま、幾度も強烈な拳撃を見舞った。

 

角は砕け、鼻は潰れ、頬は醜く変色している。

拳を振るうたびに、執事の指関節には骨を砕く鈍い感触が伝わっていた。

 

 

「ヘルト殿!? なにをしているのですか! 和睦の使者に手を上げるなど、如何に貴方でも許されませんよ」

 

衛兵が悲鳴じみた声を上げる。

 

「……中々頑丈だな。久しぶりの魔族との戦いで、力加減が訛ったか」

 

執事――ヘルトと呼ばれた男は、衛兵の言葉など耳に入らぬ様子で、己の拳を開閉しながら呟いた。

 

「ヘルト殿! 聞いておられますか? 如何に伯爵様の御子息を助けた恩があろうと……」

 

「危ないぞ」

 

 

短い警告と同時に、ヘルトは詰め寄ってきた衛兵の肩を掴み、引き寄せた。

 

再び、ピンッという音。空気が裂ける。

 

顔面を潰されながらも、若い魔族の指が微かに動いていた。

その指先から放たれた糸が、衛兵の首と肩の間にあった空間を通過していく。

 

ヘルトに引き寄せられていなければ、そこには衛兵の首があった。

 

ギチ……ギチ、と何かが軋む音がした。

次の瞬間、衛兵が手にしていた槍の柄が、鏡面のような断面を晒しながら斜めにずれ落ちる。

 

石畳に木と金属がぶつかる甲高い音が響き、ようやく衛兵は己の身に起きたことを理解した。

目の前の魔族は、白昼堂々魔法を行使し、衛兵殺しを働こうとしていたのだ。

 

ヘルトは更にそれを証明するように動いた。

石壁へ無造作に手刀を突き立て、レンガを一枚抉り出す。

そして掌中で軋む糸を衛兵の眼前に掲げ、その上にレンガを落とした。

 

刃物が豆腐を裂くように。

 

石が、二つに分かれて床に転がった。

 

衛兵は生唾を飲み込んだ。

あの糸が己の首を通過していたら――その想像が、背筋に冷たい汗を滲ませる。

 

 

「申し訳ありませんヘルト殿、命を助けていただいたのですね。ご助力に感謝致します」

 

「気にする必要はありません。この魔族には個人的な恨みがあるので……。いえ、それなら先程の過剰な防衛に目を瞑ってくれると嬉しいのですが」

 

「貴方が怒りを露わにするとは珍しい……一体なにを仕出かしたのですか?」

 

「妻に手を出した」

 

 

穏やかな口調が、一瞬にして底冷えする声に変わった。

 

衛兵は思わず身を竦めたが、内容を理解すると納得したように頷いた。

目の前の執事がどれほどの愛妻家であるか、伯爵に仕える者で知らぬ人間はいない。

魔族が反旗を翻した以上、多少の過剰防衛など気にする必要もないのだが、この自称・平凡な執事は余程目立ちたくないらしい。

 

もう十分すぎるほど目立っているというのに。

 

 

「それは……殴られても文句は言えませんな。後は私が対応します」

 

 

衛兵は牢の中へ入り、壁に掛けられた拘束用の手錠と縄を取り出すと、恨み言を呻いている魔族へと近づいた。

歯は砕け、舌も上手く回らないのか、ドラートはヘルトを睨みながら獣のような唸り声を上げている。

 

ヘルトはそんなものに意も介さず、魔族へ近づく衛兵をそっと手で制した。

 

 

「……まだ意識があります」

 

言うが早いか、靴先が魔族の顎を蹴り上げた。

 

「うぐはぁッ……!?」

 

鈍い音と共に、魔族の頭が跳ね、そのまま動かなくなる。

 

「これでいい。伯爵様への報告は頼めますか?」

 

「無論、それが私達の仕事ですので」

 

「意識が戻る前に、指を動かせないようきつく縛るか、念入りに切断……あるいは潰すか折ることをお勧めしておきます」

 

 

何気ない調子で告げられた言葉に、衛兵は内心で顔を引きつらせた。

助言のつもりなのかもしれないが、ただの門番にそんな拷問紛いの技術はない。

 

 

「怖いことをおっしゃる。私は拷問官ではありませんので、念入りに縛っておきましょう」

 

 

槍衛兵は再び牢から縄を持ち出し、昏倒した魔族の全身を芋虫のように縛り上げていく。

指も一本一本丁寧に縛ろうとして――ふと、手を止めた。

 

魔族の指が、紫色に腫れ上がっている。

糸を無理やり引っ張られた衝撃で、指は力なくぶら下がり、完全に脱臼しているようだった。既に、縛るまでもなく動かせまい。

 

衛兵は助けてもらった身であることは痛いほど理解している。

だが、思わずにはいられなかった。

 

……化け物すぎる、と。

 

 

「ヘルト殿はこれからどうされますか?」

 

「魔族が反旗を翻した以上、争いが起きるのは時間の問題。伯爵様にお仕えする身として、私も身命を賭して魔族との戦いに参加します。そのための準備を進めようかと」

 

「素晴らしき忠義。ヘルト殿がいてくだされば我々に敵なしですぞ」

 

「はは……私はしがない従者ですよ。そんなに期待されては困ります。精々魔族に殺されぬよう励む所存です」

 

 

ただの執事が魔族に勝てるものですか。

 

そう言わんばかりの、清らかな笑みだった。

 

 

「え、あ、あぁ……まぁ、普通はそうですなぁ」

 

 

衛兵は力ない声で同意した。まだ続けるのかその設定は――そんな疲弊が、返事の端々に滲んでいた。

魔族を担ぎ上げ、足早にその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

衛兵の足音が完全に遠ざかったのを確認し、ヘルト――南の勇者は小さく息をついた。

 

「……少しやりすぎたか。まぁ、妻に手を出されて黙っている男などいまい」

 

 

独り言を呟きながら、彼は戦いの準備ではなく、牢の奥へと足を向けた。

鉄格子の向こう、薄暗い空間で寝転がっている銀髪のエルフの前まで歩を進める。

 

 

「騒がしかったけど、なにかあったの? 魔族が襲撃してきたとか」

 

 

フリーレンは身を起こしもせず、見上げるようにこちらを見た。

木製の扉一枚隔てただけの距離だ。外で何があったかは、大凡把握しているのだろう。

 

 

「釈放だ。魔族が衛兵を殺そうとした。君の罪は近々取り下げられるだろう」

 

「殺したの?」

 

「いいや、伯爵の前で証言を引き出さねばならんからな。君と同じように、未遂としてその場で捕らえた」

 

「へー……魔族を殺さず生け捕りか。余程の実力差がないとそんなこと出来ないと思うけど、戦士なら尚更ね」

 

 

フリーレンの声には、探るような響きがあった。

 

魔法使いと戦士。不意打ちの近接戦であれば、身体能力に優れた戦士に圧倒的な分がある。

だが、魔法を行使された状況下で殺さずに制圧するなど、余程の実力差がなければ不可能だ。

魔族の魔法は軒並み殺傷力が高すぎる。並の戦士なら間合いを詰めることもできず、殺されるのが関の山。

 

南の勇者は肩を竦めた。

 

 

「運がよかっただけだ」

 

「ところでさ……前にどこかで会ったことある?」

 

「さてな……私のような男は世の中にいくらでもいるだろう」

 

 

いやいない、とフリーレンは内心で呟いた。

 

経験則から、目の前の執事が戦士であることは間違いない。

しかし体表には僅かに魔力が揺らいでいた。対魔族戦には十分通用する魔力制限の技術。

加えて、魔力による身体強化の気配と、無傷で魔族を制圧できる膂力。

 

こんな人間は早々いない。

 

……いや。

 

ふと、何かが引っかかった。

 

一体と、一人。

確かに昔、似たような存在に会った覚えがある。

 

一体は、アウラが従えていた理不尽な強さの騎士のアンデッド。

しかしもう一人が、どうしても思い出せない。フリーレンは腕を組み、記憶の底を浚うように頭を捻った。

 

 

「そうかな……確かに以前どこかで会った気が。うぅ~ん、思い出せない。百年以上前……だと生きてる訳ないし。名前は?」

 

「名はヘルト。……伯爵様にお仕えする、しがない使用人だ」

 

 

聞き覚えがなかった。

 

フリーレンは考えることを諦め、身を起こすと牢の扉の前まで歩いた。

 

 

「聞いたことない」

 

「なら気のせいだな。……そっちではない、こっちだ」

 

 

ヘルトはチョイチョイと手招きする。示された先は、扉から外れた鉄格子だけの壁面。

フリーレンが怪訝な顔で移動すると、ヘルトは両手で格子を掴み――粘土でも捏ねるかのように、それを左右に押し広げ始めた。

 

金属が軋む音。鉄の棒が、人ひとり通れるほどの隙間を作る。

 

 

「……アイゼン以外にこんなゴリラがいたんだ」

 

 

フリーレンは率直な感想を漏らしながら、広げられた隙間をすり抜けた。ヘルトは彼女が通過したのを確認すると、再び格子を押し戻し、元の形に整える。

 

何事もなかったかのように手についた鉄粉を払い、出口へ向けて歩き出した。フリーレンもその後に続く。

 

階段を上り、地上へ出る。

 

久方ぶりの陽光がフリーレンの白い肌を照らした。

地下の冷気と湿った空気から解放され、乾いた風が頬を撫でる。思わず背伸びをして、凝り固まった身体を解した。

 

 

「ねぇ……本当に人間?」

 

 

まさかアンデッドではないだろうな。

そんな風な言葉を問いかけようとして、口を噤んだ。

人間と関わり培ってきた感性が、寸前でその言葉を押し留める。

そもそも、どこからどう見ても血の気のない死人には見えなかった。

 

途中で言葉を切ったフリーレンを見て、男は静かに微笑んだ。

 

 

「人間だ。妻もいる。……君にも仲間がいるのだろう、早く行け。そして街を出るんだ。じきにここは戦場となる」

 

「言われなくてもそうするよ……じゃあね」

 

 

わからないことを延々と考えるフリーレンではない。

わからないなら、それでいい。男に背を向け、立ち去ろうとした。

 

 

「あぁ。それとフリーレン」

 

呼び止められ、足を止める。

 

「……勇者ヒンメルとの旅は、楽しかったか?」

 

唐突な問いだった。フリーレンは振り返らぬまま、少しだけ考え込むように間を置いた。

 

「なに突然……うん、まぁ……楽しかったよ」

 

「そうか。私の切り開いた道が意義あるものだと知れて、嬉しく思う」

 

声の調子が変わった。穏やかな執事の口調ではない。

 

「達者でなフリーレン……後はこの人類最強の執事に任せたまえ」

 

「――え……」

 

振り返った時には、もう誰もいなかった。

 

乾いた土埃だけが、虚しく舞っている。

百年以上前の記憶が、脳裏を駆け巡った。

 

『彼は君の人生を変えるぞ』

 

『その青年に出会ったら伝えてくれ。道は必ずこの私が切り開くと』

 

『――人類最強であるこの南の勇者が』

 

自信に満ちた、どこかナルシストじみた口調。

あの特徴的な言い回しを、フリーレンは確かに覚えていた。

脳裏に浮かぶのは、特徴的なチョビ髭を蓄えた男の顔。先程まで目の前にいた執事と、寸分違わぬ顔。

 

人類最強に相応しい功績を、この世界に刻んだ男。

 

南の勇者。

 

頭の中で、何かが繋がっていく。

 

未来を見通す力を持つ最強の勇者。

意味のわからない行動を取っていたアウラ。

そしてアウラに従えられていた、化け物のように強い騎士のアンデッド。

 

何故、生きている。

定められた死は、どうなった。

あの時の騎士は――お前だったのか。

 

疑問と結論が、とめどなく浮かんでは消える。

 

未だにわからないことだらけだ。

だが、確かに何かが繋がった。

少なくとも、「裏切り者」と呼ばれる『断頭台のアウラ』が『南の勇者』と繋がっていること――それだけは、理解できた。

 

 

「死んでなかったのか。……あぁ、なんだ、そう。魔族と組んで暗躍なんて、勇者のやることじゃないよ――南の勇者」

 

 

独り言のように呟いて、フリーレンは屋敷を出た。

 

足取りは、幾分か軽い。

 

人類最強の勇者と、一切目論見の見えてこない断頭台のアウラ。

噂の渦中にありながら身を潜め、機を窺うように動いている。

魔族同士の内輪揉めか、あるいは何かしらの理由で敵対しているのか。

 

南の勇者の強さを知るフリーレンは、彼がアウラの操り人形にされている可能性を端から除外していた。

アウラが本気でこの街を滅ぼすつもりなら、フリーレンを牢から出す理由がない。

南の勇者が見るからに正気だったことも判断材料の一つだが、魔族側にとってフリーレンの解放は全てにおいてリスクでしかないのだ。

 

アウラと南の勇者は協力関係にある。

 

共通の目的のために利害で繋がった、かつての敵同士。おそらく、そんなところだろう。

 

どちらにせよ、街を脅威から守る側の存在だ。

勝ち目のない相手と敵対する必要など、最初からない。

 

 

「そういうことなら……素直に街を出ようか。勇者がいるなら、私達の出番はないしね」

 

 

牢を出たものの、正式な釈放はまだだ。

フリーレンはローブの裾を深く被り、人気のない裏路地へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

狭い路地を縫うように進みながら、フリーレンは時折大通りに顔を出し、フェルンとシュタルクの姿を探した。

 

しかし、何度か繰り返すうちに、奇妙な違和感が首をもたげてくる。

 

裏路地から、徐々に人の気配が消えていた。

 

足音も、話し声も、物売りの呼び声も。

ついには物音一つしなくなり、自分の足音だけが石壁に反響している。

 

フリーレンの中で、危険を察知する感覚が急激に研ぎ澄まされていく。

五感が鋭敏になり、周囲の気配を探る。

 

そして、気づいた。

 

ほんの微かな違和感。

意識を集中させたほんの一瞬だが、確かに感じ取れた――街全体を覆うほどの、強大な精神魔法の痕跡。

 

その感覚には、覚えがあった。

 

 

「かなりマズイ。早くフェルンとシュタルクを探して街を出な――」

 

「残念ですがフリーレン……貴女には、まだ大事な仕事が残っています」

 

 

男の声が、背後から降ってきた。

 

瞬間、膝が地面についていた。

 

崩れ落ちたのではない。

まるで最初からそうしていたかのように、気づけば跪いていた。

身体を動かそうという意志と、実際の動作が、完全に断絶している。

 

顔を上げると、不気味な長身の魔族が佇んでいた。

 

すぐ目の前にいるにもかかわらず、存在感が希薄だった。

魔力の気配すら朧げで、探知が正常に作動していない。

 

 

「……グラオザーム」

 

名を呼ぶ声は、平静を装っていた。

 

「驚いた、まさか生きていたなんて。私を殺しにでもきたの?」

 

「勇者ヒンメル亡き後です。貴女に個人的な恨みは、もうありません」

 

「なら早く解放してくれると嬉しいんだけど……。今から街を出るところだからさ」

 

 

身を捩り、立ち上がろうとした。

だが、身体はぴくりとも動かない。手足から伝わるはずの感覚が途切れて失われている。

 

 

「……『呪い』か」

 

 

精神魔法への耐性は、長い年月をかけて積み上げてきた。

並の術者であれば、精神防御を突破することも不可能。

だが、この魔法――七崩賢の『呪い』は防壁をすり抜け、認識そのものを書き換えていた。

 

足を動かそうとすると、耳が微かに動く。

手を握ろうとすれば、足の指が反応する。

身体と意識の対応が、根本から狂わされている。

 

胸の奥で、冷たい焦りが凝っていく。

 

 

「解放?いえ、それは出来ません。貴女にはとある魔族を殺す手助けをしてもらいます」

 

 

グラオザームの声には、抑揚がなかった。

淡々と、事務的に、これから起こることを告げている。

 

この状況、この流れ。

フリーレンには、グラオザームが誰を殺したがっているのか、聞くまでもなく察しがついた。

 

 

「同族殺しなんて、自分達で勝手にやっててくれると嬉しいかな」

 

心底うんざりした顔で吐き捨てる。

 

「貴女には『葬送のフリーレン』として『断頭台のアウラ』を殺してもらいます。それが確実であり、運命なのです」

 

グラオザームが何やら語っているのを聞き流しながら、フリーレンは己を縛る魔法の解析を試みた。

術式の構造を探り、綻びを見つけ出そうとする。

 

結論は、すぐに出た。

 

解除は不可能。

圧倒的に時間が足りない。

 

周囲に淡い光が満ち始めていた。

グラオザームの魔法が、今まさにフリーレンの精神を蝕もうとしている。

光は柔らかく、温かく、まるで陽だまりのような心地よさを纏っていた。

 

それが罠であることは、わかっている。

わかっていても、抗えない。

 

 

「抜け出すのは無理か」

 

諦めに似た呟きが、唇から零れた。

視界が、眩い光に包まれていく。

 

「心ばかりの御礼として、貴女が楽しめる幻想を見せて差し上げます」

 

「悪趣味な奴」

 

それが、フリーレンの意識が保てた最後の言葉だった。

 

光が晴れた時、フリーレンは変わらずその場に跪いていた。

 

しかし、その瞳からは光が消えていた。

開いたまま、何も映さない。魂の抜け落ちた人形のように、虚ろな眼差しだけがそこにあった。

 

グラオザームは抜け殻となったエルフを宙に浮かせると、裏路地の奥へ向けて歩き始めた。

 

「アウラを殺せば、南の勇者は死んだも同然。……計画とは違いますが、後はアウラに当てる予定だった魔族を南の勇者の足止めに回すだけ」

 

独白のような声が、薄暗い路地に反響する。

 

「シュラハトの語る運命が本当なのであれば、アウラはここで死に、未来は正しい道筋を辿り、魔族にとっての最善へと帰結する」

 

一拍、間を置いた。

 

「しかし、もしそうでないのであれば……」

 

言葉は、最後まで紡がれなかった。

 

裏路地の暗がりが、二つの影を飲み込んでいく。

 

これから始まる争いの行く末を思い描きながら、グラオザームとフリーレンは、街の闇の中へと消えていった。




以下とんでもなく適当な現状纏め。


グラオザーム:南の勇者はヤバいけどアウラ殺せば一網打尽だからアウラ狙うわ。
天秤の格下殺し性能ヤバい…だから魔族を大量投入からの天秤範囲外からの芋スナで魔力削ってなぶり殺しにする必要があったんですね。
え?あいつの取り柄天秤だけでしょ、イケルイケル。
南の化け物はリヴァーレに足止めして貰おう。そもそも勝てると思ってないけど時間稼ぎ頼んだわ。
お、シュラハトの言ってた通りホンマにフリーレン来たやん、ほな使たろ。魔族も全部足止めに使お。


リヴァーレ「南の勇者ぁ…」フルフルニィ…


ドラート「」チーン


南の勇者「ドラートの尋問に参加しよ」
アウラ「おらぁ!天秤!情報吐け!!」


グラナト伯爵「和睦なんて糞くらえ!!」
衛兵「「「うぉ~魔族殲滅!!」」」


リュグナー「アウラあの野郎、裏切り者め、勇者なんて擦り付けて来やがって」逆恨み


フリーレン「あの鎧アンデット…南の勇者じゃん。あ、そう…じゃ放置でいいか。アイツラ結局何したいのか分かんねぇや――ぬぁぁ!!?妄想魔族に拘束されたうごぉ!助けてクレメンス!」


シュラハト(死亡済):アウラと南の勇者殺せば未来は修正出来ると思うから、もしものことがあったらアイツら殺してクレメンス。頼んだで奇跡の気ぶり魔族。
大丈夫、このゲームには必勝法がある…アウラにフリーレンを当てる、それこそがディスティニーでビクトリーへと続く必勝の道筋。


フルーフ「やぁ」
ソリテール「やぁ」
リーニエ「やぁ」

シュラハト(死亡済)「え、知らん…なんなんコイツら」
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