ガングニール大地に立つ
死の象徴たるノイズがツヴァイウィングのライブ会場を闊歩する悪夢の中を大勢の人が逃げていく中を一人の少女立花響が心奪われある一点を世界から切り取り見つめていた。
その世界では二人の歌姫が戦装束を身に纏い歌いながら剣で槍でノイズを次々と打ち倒している。
綺麗だ、ただその思いが彼女たちの胸から溢れる歌に響をどんどんと引き込んでいくそれはまるでクルジスの紛争のただ中に空を舞う0ガンダムを見た刹那・F ・セイエイの如く。
しかしその時間も長く続くことはなく槍の歌姫天羽奏に制限時間が迫ったことによりノイズの猛攻を防ぐことができずに観客席が崩落し響を瓦礫と共に下階層に叩きつける。
思わず悲鳴を上げた響に気づいた奏が目線だけをやり叫ぶ。
「出口に向かって駆けろ!!!」
「はい・・!」
痛みにより現実に戻された響が出口に向かって落下した際に痛めた足を引きずりながらも必死に向かっていると何かの破片が胸を貫くと同時に来た衝撃が彼女を瓦礫に叩きつける。
そして身体から命が流れ出ていくのを感じていると奏が響を抱き起こし叫ぶ。
「おい死ぬな!目を開けてくれ!生きるのを諦めるな!」
奏は響が目を開けたのを見るとふっと微笑むと響を瓦礫に寄りかからせると槍を手にノイズの軍勢に向かって歩いて行く。
「一度心を空っぽにして思いっきり歌ってみたかったんだよな。今日はこんなに聴いてくれる奴らがいるんだとっておきを聴かせてやるよ。」
それが聞こえていたのか剣の歌姫風鳴翼が悲痛な声で叫ぶ。
「奏!歌っては駄目!!!」
だがノイズの放つ雑音にかき消されその声は届かない。
「絶唱・・・。」
槍の穂先を天に掲げると奏は歌いだす。
「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl」
「歌?」
背後の響の呟きが耳に入ったのか奏は心の内で返答する。
(そうさ、歌だ。命を燃やす最後のな。)
「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl」
会場全体が奏を中心に激烈な光に包まれあれほど大量にいたノイズが全て炭となっていく。
光に包まれる奏に響は幼い頃から父により見せられてきたガンダムシリーズに登場するうちのとあるモビルスーツを幻視し自身でも気づかぬうちに手を伸ばす。
「
彼女の瞳にのみ舞い散る羽毛と緑色の粒子が写った。
◎
二年後、リディアン音楽院の教室の一つそこで教諭の声が響き渡る。
「立花さん!?」
「えっと、この子を助けてたら遅れちゃいまして・・・。」
じっと教諭を見つめる白猫を抱える響が続ける。
「きっとお腹すかせてるんじゃないのかなって。」
「外に逃がしてきなさい!」
「はっはいぃ!」
案の定怒られた響は猫を外に逃がしに教室の外に飛び出していった。
放課後リディアンの寮の自室に幼馴染みであり同室の小日向未来と共に帰ってきた響は荷物を放り出すと床に寝そべる。
「初日から滅茶苦茶だよぉ。私呪われてるかも・・・。」
「響のドジのでしょ?それに半分はいつものお節介でしょ。」
「人助けと言ってよ。人助けは私の趣味なんだから。」
未来はそれに教科書を整理しながら答える。
「響のそれは度が過ぎてるの。普通同じクラスの子に教科書を貸す?」
「私は未来に見せて貰うからいーの。」
「馬鹿・・・。」
後ろから抱きつきそう言ってくる響に未来は頬を赤く染めるとそう言う。
それに気づかず響は棚に飾れた赤く塗装され槍を持ちバックパックに翼が備えられたガンダムエクシアを見ると続ける。
「それに人助けは世界から争いを根絶するのに必要な事だと思うんだ。」
「またそれ?」
「翼さんの新曲いよいよ明日発売かぁ。」
恥ずかしくなったのか響は露骨に話題を逸らした。
そして翌日、件の風鳴翼の新曲発売日に響は学校が終るなり特典付きCDを求め街にあるCDショップへと駆け足で向かっていた。
「急がないと、売り切れちゃう!」
だんだんと人が少なくなりやがて自分一人だけになってしまった事に僅かな疑問を抱きながらも響が角を曲がりコンビニの前を通ろうとしたとき視界に黒い物が写る。
視線を向けると響はそれが人の形をした炭の山だと言うことに気づくと辺りを炭が待っていることにようやくきづく。
「ノイズだ!」
ノイズが出たことに気づき急いでシェルターに向かおうとした瞬間近くから絹を裂くような悲鳴が聞こえると響は考えるよりも前にそこに向かいノイズを前に怯えている女の子を確認すると走るスピードをあげる。
「介入開始!!」
女の子がノイズに触れられる前に手を取ると響は抱き上げると反転しノイズから逃走を開始する。
「もう安心して!私が絶対に助けるから!」
「お姉ちゃん。」
今だ恐怖に震える女の子をしっかりと抱えると響は細い道を使いノイズを撒くと用水路の前に出てしまい左右を見るとそこにはノイズがびっしりと張り付いている。
「嘘!回り込まれた!?」
急いで逆方向に逃げようとするも背後からもノイズが迫っているのが見える。
「怖いかもだけどちょっと我慢してね!!」
響はそう言うと返答も待たずに少し助走をつけ用水路を飛び越え向こう岸に着地した瞬間また駆け出すと細い道を抜け坂道を駆け上がり始めると沈み行く夕日の向こうに工場地帯が目に入る。
「真反対に来ちゃったっ!」
「お姉ちゃん・・・。」
「大丈夫!私がガンダムだ!」
「お姉ちゃん?」
別の意味で不安になりかける女の子を抱え響はノイズから逃げるうちにハシゴを登り工場地帯の中の建造物の屋上に来ると女の子を降ろし呼吸を整えると後ろの女の子を振り返るとそこには先ほどまでは居なかった筈の大量のノイズが待ち構えていた。
「私たち死んじゃうの!?」
そう言い抱きついてくる女の子を背に庇うと響は言う。
「大丈夫だから、お姉ちゃんが絶対に守るから!」
思い出されるのはあの日光の中に見たエクシア。
「だから生きるのを諦めないで!!!」
『その意気だ少女よ!さぁ歌え!眠り姫に目覚めを告げろ!』
居るはずのないグラハムの声に従うかのように響は胸から溢れる歌を歌う。
「Balwisyall nescell gungnir tron.」
その瞬間響の着ていた制服が弾け飛び身体から見たことのない機械が飛び出るとそれらが身を包んでいく。
「っ!ガァンダァァァァァム!!!!」
その叫びと共に放たれた光により迫ってきていたノイズが炭となり風に舞う中アームユニットから緑色の粒子を噴き出しながら響は自身の身に起こった変化に戸惑うも二年前に見た戦うツヴァイウィングを思い出す。
「お姉ちゃん凄ーい!!」
「言ったでしょ、私がガンダムだ!」
「とにかく凄ーい!」
響は残ったノイズが迫ってきているのを確認すると女の子を抱え上げると跳躍する。
予想以上に飛び上がった自分に少し驚くも直ぐに空中で態勢を整えると近くにあった給水塔に片手でしがみつく。
「使える武装は・・・
そして横合いから現われた大型ノイズを蹴りつけディスプレイのような部分を砕くと地面に着地すると迫るノイズを脚だけで倒していく。
「王者の風よ!」
バイクの音がしたと思うと背後から迫っていたもう一体の大型ノイズで爆発が起こり宙に青い影が舞う。
「Imyuteus amenohabakiri tron.」
その影は翼であった。
「翼さん!」
翼は妙な構えを取る響を見ると刀をノイズに向け構えると言う。
「ふざけないで死ぬわよ。」
「ふざけてなんかいません!」
翼が天から無数の剣を雨のように降らせノイズを殲滅する中響は後方に居る最後の大型ノイズをサマーソルトキックを喰らわせ撃破した。
「東方は赤く燃えている・・・。」
その後周囲が封鎖されノイズのせいで発生した炭の山が処理されていくのを複雑な表情で見ている響の目に女の子が母親と再会しスーツの女性から母親が難しい話しを受け始めている場面をみて表情を緩める。
「あの、暖かいものどうぞ。」
「ああ、暖かいものどうも。」
紙コップに入れられた暖かいものを受け取り少し冷ましてから一口飲み気が抜けたのか先ほどまで纏っていたものが光となり消えリディアンの制服姿へと戻る。
それに動揺してしまいバランスを崩した響は倒れそうになるも何とか踏みとどまる。
「危ない、零すところだった。」
響は紙コップの中身を一気に飲み干すと近くに居た男性に言う。
「それじゃあ私もそろそろ帰りますね。」
しかし翼に肩を掴まれ止められる。
「貴女をこのまま帰すわけにはいきません。」
「え?」
困惑する響に先ほど響が帰宅する旨を伝えた男性が手錠を嵌めながら言う。
「すいませんね貴女の身柄を拘束させて頂きます。」
「えぇ!?」
悪いことをした覚えのない響の戸惑いの声が響く。
「貴女にはこれから私たちと一緒に着いてきて貰います。」
一方的に翼がそう言うと響は車に乗せられ両サイドを黒服に挟まれ連行されていった。
「なぁんでぇえええええ!?」
タイトルについて
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